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配分問題
「さあ、もういいだろ。そろそろ、そっちの番だぜ」
「……分かりました」
気が進まないのは確かだ。
でも、大袈裟に隠すほどのことでもない。
「あの予防接種の量じゃ、少し足りなかったんですよ」
「――手前が、そのしわ寄せを受けた、てのか」
「ええ。お陰で、僕以外の子供たちは無事でしたよ」
もっとも、その動機まで述べる気はない。
ジョゼファにとって、村の子供たちの方が大切と考えたまでだ。
その判断がかえって、彼女を悲しませてしまったのだけど。
「こいつは弱ったな……」
「物は受け取ってたんです、配分はこっちの問題ですよ。そちらが勝手に負い目を感じる筋合いじゃない」
これは僕の意地の問題だった。
手前勝手に寄せられる同情は、決して愉快なことじゃない。
「いや、そう言う訳にはいかねえな。――その腕、見せてみろや」
その反応は、同情よりはるかにマシだった。
「いいでしょう」
僕は右手の力をゆるめ、左腕から離す。
握りしめていたせいか、少しだけしびれが残る。




