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言い逃れ
つかの間、男の目に獰猛さが戻る。
「――そうさ。お前、それで呼ばれてるんだろう。え、ユーリ君?」
あの宮殿にも既に、男の手下か上司がいるのだろう。
現時点でもかなりの確信がある。
でもそれを問い質すことは、おそらくは最後の一歩を踏み出すに等しい。
「呼ばれたのは確かですね。何が“それで”なのかは分かりませんが」
男の子のみに表面化する、王家の呪い。
裏を返せば、女の子は保因者どまり、つまり無症状でしかない。
そしてアレクサンドラ皇后の子供は、二人とも女の子。
諸々が、まだハッタリの可能性も捨てきれない。
「皇后の娘さん二人はご存じでしょう。あの子たちを見てみても、“血の呪い”が迷信にしか思えませんが」
中途半端な知識であれば、これで弾くことができるはずだ。
「へ、へ! 舐められたもんだ。ヴィクトリアの血統を調べてりゃ、それが何を意味するか一発だろうが。娘がどれだけ頑丈だろうが、血の呪いが無い証明にはならねえ」
どうやら、呪いそのものへの言い逃れは利かないらしかった。




