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門外秘
言いながら、僕は気づきかけていた。
僕より与し易い相手はいくらでもいる。
そのことを、目の前の男が察せていないとは考えづらい。
ならば、敢えて僕である理由とは何か。
「ニューヨーク・タイムズ」
唐突な言葉に、僕は面食らう。
宮廷の外での英語は、ずいぶんと珍しい。
「文字通りアメリカの新聞だがな、2年前に買収で経営が変わった」
それとこれと、どう関係あるのだろう。
「んで経営者の方針で、世界単位でやってくことになった訳だ。で――中にはもちろん、重いネタもある。まあ掲載が10年先か20年先か、はたまたクズ箱行きかは分からんがね」
「記者には見えませんが」
「話は最後まで聞きな、兄ちゃん。俺はそいつらの、まあ下っ端同志のつながり程度にだが、少しはコネがある訳だ」
宮廷。よそ人の僕。
外国の新聞が、公表を控えるほどのネタ。
僕の中で、疑惑がつながる。
「――王家の呪いについて話し合う程度には、ですか」




