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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1898年、サンクト・ペテルブルク
73/350

うなずき

 殺気も剣呑も、嘘のように消えて。

 男の見る目は、不思議に穏やかでさえあった。

 いったい何が、目の前の男をそうさせたのだろう。


 あまりに一方的な展開。

 僕の方はと言うと、どうにもついて行けない。


「――いくつか、お訊ねしてもいいですか」


 少しでも間を取ろうと、僕。


「おいおい、質問に質問で返す気か? ――まあいいさ、俺の方に答えるつもりなら、ちったあ聞いてやるよ」


 どの道、腕力ではかないそうもない。

 今の僕にとって、悪くない取引に思える。


「いいですよ」


誓い(クリャトヴァ)だぜ?」


 ほんの少しだけ考える。

 いや本当は、意地で隠すほどのことでもないのだ。

 ここは素直に、応じてみせるのが得策だろう。


「ええ」


 嘘偽りなく、僕はうなずく。

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