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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1897年、グルジア
55/350

言い訳

「――失礼、何でもございません」


 極力平静なつもりで、僕は述べる。

 我ながら、下手な言い訳(アトガヴォルカ)もあったものだと思う。

 両者からの視線がひどく痛い。

 片や“なぜそれを”、片や“何を余計なことを”だ。


「それは何か、根拠があることなのですか?」


 あくまで穏やかに、彼女。

 知識のない分野で話をすり合わせようにも、かえって墓穴を掘る可能性が高い。

 つまり、自分でどうにかしろと言うことだ。

 蒔いた種を刈り取れるのは、しょせん自分でしかない。


「はい――英国、ヴィクトリア女王のお話は伺っておりました」


 そう僕は切り出す。

 女王はもちろん、ロシア王家(ロマノフ)の祖先でもある。


「女王陛下のご血筋で、ご子息にだけ奇妙な病が流行っているとの話は。それと、メンデル氏の研究(イッスレドヴェニエ)がございます」


 聞き覚えがないのか、二人の表情が説明を求めるものに変わる。


 言いながら、僕は思い出していた。

 今このとき、メンデル氏の遺伝論文は再発見されていない。

 たぶん、遺伝子という命名もまだのはずだ。

 と言って、エンドウ豆の実験を人に当てはめるのは抵抗がありそうだ。


「血筋で受け継がれる性質もある、と言うのがその研究の結論です。今のところ(・・・・・)あまり知られてはいませんが」


 この“今のところ”には少しだけ力を込めた。

 エフゲニー氏にとっては“知る人ぞ知る”に、彼女にとっては“将来では有名になっている”となるように。

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