戸惑い
「神ならぬ身、お役に立てぬこともあります。ですが、“誓い”を守ることはできましょう」
秘密は守る、と言うことだ。
僕らはこれまで、かたくなに秘密を守り通してきた。
もっともそれは、僕らが律儀だというだけではない。
危険な秘密を、無理に聞かなかったからでもある。
果たして今回はどうだろう。
「なれば、お話したく思います。よろしくお願いいたします」
「ええ」
促され、エフゲニー氏は後を続ける。
「身の上からお話します。ある家で、私は医師をしております」
「その家のお子さまのこと、でしょうか?」
「――左様です。ですが……」
当てずっぽうだ。でもさすがにここは、ほとんどの人は言いよどむだろう。
当人でない段階で、その問題は限定される。
「ある家で」となるとせいぜい三択、当たると印象が強いのはほぼ一択だ。
ここまで考え通せば、一応僕でも出来なくもない。
「魔術、では駄目ですか?」
時間の使い方もうまい。つくづく、僕は思う。
エフゲニー氏にも、答える気のなさは察せたようだった。
「いえ、構いません。力をお借りできるのでしたら、どなたでもいいのです」
「――たとえそれが魔女でも、ですか?」
わずかな逡巡の後、氏は答える。
「ええ」




