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添え物
「ちなみに、残りの一人は訳有りみたいだね」
「それでも通すつもりなの?」
「いや、見れば分かるよ。礼を重んじる気はあるみたいだし、まともな方の人だと思う」
もちろん、最終的な選択権は彼女にある。
そこはさすがに、“従者”たる僕の出る幕ではない。
「一応、今からでも断ることはできるけど?」
「――ユーリは甘いからね」
からかい混じりの言葉。いつもの承諾の合図だ。
……いや、僕に言わせれば、彼女が辛すぎるのだ。
あるいは、見る目の確かさが、と言うべきだろうか。
あるときは深い悲しみを慰めたかと思えば、あるときは突かれたくない傷を抉り出す。
それでいてなお、誰かからの怨嗟を買うでもない。
僕にとってそれは、ほとんど魔術そのものに思えた。
このお芝居めいた一幕にとってはだから、僕の知識は本当に添え物に過ぎないのだ。
活かされることのない力は、無力と変わりはしない。
なればこそ、少しでも活かす方向があるならば。
このときの僕は、少なくともそう思っていた。




