表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
327/350

提起

「それにしても」


 そう僕は切り出す。


「よく僕を雇う気になりましたね……色々と知った上で」


 率直にこう聞ける機会は。

 今を置いて、他にない気がした。


「――最初は、実に単純な話だったのだよ」


 やや渋い口調で、老宰相。


「なにしろ、我が国にはが居ないのだからね。その辺りのことは、君なら分かるはずだ」


 確かに、その通りではあった。

 ロシア語と日本語。

 ふたつの言葉を行き来できる通訳。

 土壇場でのその調達は、確かに容易ではない。

 人材の払底。


「人が即席に育つ訳もない。と言って、仲介役のアメリカに頼り切る訳にも行くまい」


 より正確に言うならば。

 実のところ、それは払底ですらない。

 東の果ての小国・・

 その国の言葉を学んだところで、ふだん何かを見込めはしない。

 平時で学ぶのは必然、かなりの物好きに限られる。

 戦争の調停には、その物好きが必要とされた。

 いざという時の財である物好き。

 そんな者たちの存在を、平時に担保するものは何か。

 他でもない、大国としての地力だ。

 余裕、そう言い換えても良い。

 その地力はもはや、今のロシアに無い。

 そこまでは分かる。


「……そこじゃない、ですよ」


 そこまでは、僕にも分かってはいる。

 けれども今は、その話ではない。


「僕がしているのは、能力以外の話です」


 そしてその事は、老宰相も察しているはずだった。

 これはだから、意志表示だ。

 その先を聞きたいとの意志の。


「ふむ。どうやら、誤解があるらしい。私にしても、彼女からすべてを告げられたわけではないのだよ。その事は、強調しておいたほうが良さそうだ」

「すべてではない、とは?」

「君を候補とする推薦状に、何もかも書かれてはいなかった。単に、それだけの事だよ――一連の、君の出自までは書かれていなかったと言うね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ