試合1
「――意味がないなら、選んでみたら?」
明確に、これは挑発だった。
「今ここで、どちらかを」
どう流したものだろう。
そう誤魔化しそうになるのを、僕は思いとどめる。
いや、率直に言い直そう。
どうすれば、一番面白い?
「いや、意味はあるね」
まずは一拍。
これは単に、手癖のような言い回しだ。
問題は、その後の話。
「意味はある――君にとってはね。意味がないのはだから、僕にとっての方」
「具体的に聞いてみても?」
さて、どうしたものだろう。
直球を投げてもいいものかどうか。
「……君が正解する方を選べば、君の判断力を僕が認めることになる」
構うまい、そう僕は判断した。
「この状況でそれを再認識させるのは、ほとんど威圧に等しい。一方で僕が正解する方を選べば、間違えた判断を下すことになる。どちらにしても、あまり嬉しいことじゃない……僕にとってはね」
「――合格」
裏返したままに2枚のカードを手に取り、そのまま彼女はシャッフルしてみせる。
早い。
目に見えないほどではないが、何かしらの確認となると難しい。
そうして1枚のカードが置かれ、表返される。
カードは――2。
「ギリギリだけど。それに免じて、先攻は譲ってあげる」
この言い回しでは、真偽は分からない。
端的に、しっぽを掴ませない言い回しとも見える。
それを百も承知の上で、僕もまた応える。
「ありがとう。うれしいよ」
前哨戦が終わり。
ようやく、ゲームが始まるのだ。




