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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
272/350

衝突

「恐らくは――」


 言いかけたそのとき、大地が揺れる。

 左半身のバランスを崩されながらも、僕は地震を疑う。


 ――いや地震じゃない。


 ここは海、海の上だ。

 慌て左手をつこうとした直後、そちらの手の不能に気づく。

 その一瞬は、反応を遅らせるに十分だった。

 間に合わない、でもやらないよりはマシなはずだ。

 極端にゆるく流れる時のなか、僕は半身をひねり、無理矢理に右手をつこうとする。


「――大丈夫かね?」


 伸ばしかけた右手を掴んだのは、他ならぬ提督だった。

 机から身を乗り出し、転びかけたこちらの様子を伺っている。


 その目に浮かぶはまぎれもない心配の色。

 落ち着き、自身は何ともないとでも言う態度。

 助けられた今ではそれが、ほんの少しだけ腹立たしい。


「ふむ、無事なようだな」


 いや、私情はよそう。

 船が揺れたことなど微塵も感じさせない。

 素晴らしい反応速度、そしてバランス感覚だ。

 こちらが深窓の姫君なら、たちどころに惚れていたかも知れない。


「ええ。お陰で助かりました、恩に着ます」


 とっさに身をひねったお陰で、伸ばす途中の右手が届いたのだ。

 案外、悪あがきはしてみるものらしい。


「礼なら後だ」


 提督は手を放し壁に向き直り、備え付けの伝声管をとる。

 その素早さに、さすがに声をかけかねた。

 必然、僕もやり取りを聞くことになる。


「――何があった?」


 提督の問いは簡潔だった。

 普段であれば、相手を落ち着かせる声。

 でも今は怒鳴り声の返答が、僕にまで聞こえる。


『船です、船と!』


「船と、どうした?」


交戦(・・)です!』

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