予想
「これは予言者などでなく、あくまで友人として聞きたいのだが――この艦隊は、どうかね」
友人として。
短くも、今の僕にはひどくむずかしい言い回しに思えた。
「……艦隊の状態のこと、ですか?」
「ああ」
「それを友人として見て、ですか」
静かな頷きに、僕は数瞬だけ考え込む。
果たして、どう言ったものだろう。
「――よくやっているとは思います」
絞り出せたのはどうにも、心苦しい答えだった。
「と言うと?」
「バルチック艦――いや、この艦隊の状態は酷いものです……艦船の型も揃わず燃料の補給もあやうい、船員の練度も微妙と来る。正直な所、帝国のものとは思えません。世界屈指の国力を誇る帝国とは」
「ふむ」
相応の思案顔。
と言うことは、そのまま続けていいと言うことだ。
「スエズ運河を通ればまた違ったのでしょうが、英国の支配下を通るのは同盟上無理。となると、このまま南アフリカ沖経由で全3万3000キロの道のり、馬鹿正直に行くしかない」
3万3000キロ。
口に出してみて、改めて気が遠くなる。
それはほとんど、地球を8割ほど一周する距離だ。
飛行機は飛び始めたばかり、石炭が主な燃料である、この地球を。




