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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
269/350

取引

 ともあれ、だ。

 冷たい感触とは別に、まだ目の前のことは残っている。


「――申し訳ありません」


 心からの意を込めて、僕は言う。

 仮に僕が提督なら、先程の発言に傷ついただろうから。


「提督のこと、見誤っておりました」


 言いながら考える。この場ですぐにも、見せられる謝意は何だろう。

 無論、取り引きを考えている時点でもはや、元の関係にとは言いがたいのだけど。

 こうなった以上、関係は変化せざるを得ない。

 その変化のきっかけは僕、僕の方なのだ。


「ひとつ、言っておきましょう――艦隊は目的地(・・・)には、確かに到着する。少なくとも、そのはずです」


 断定はしなかった。

 想定外のことは、何であれあり得るからだ。

 補給の失敗、厭戦、あるいは到着以前の交戦。

 そのどれをとっても、未知の可能性を持つ。

 そうなったとき、友人(・・)の信をさらに失うのは耐えがたい。

 なので僕は、言葉を続ける。


「――僕のいた世界では、そうなっていました。それは確かです」


 言外に、それ以上は不確かだとの意味も込めて。

 正確ではないが、不誠実でもないはずの言い回しだ。


「ふむ」


 顎に手を当て、提督は頷く。

 考えを巡らせるその様子に、まずは少しだけ安堵する。

 ともあれ、手酷い断絶は何とか避けられたらしい。


「それはつまり、予言者ほどには将来が分からない――そう言うことかね」


 僕の答えに迷いはなかった。

 迷わず答えなければ、信用も無いだろうから。


「はい。おおむねは分かりますが、予想外もあり得ます」

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