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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
248/350

寄港予定

 それにしても、と僕は思う。

 急ぎの航海が、こんなにも窮屈なものとは思わなかった。

 大航海時代の話じゃない、まがりなりにも今は20世紀だと言うのに。


 原因はいくつかある。

 まず、船の燃料が石炭なのが問題だ。

 さすがにと言うべきか、帆船や外輪船の性能よりは圧倒的らしい。

 この時代の「蒸気船」は、相対的に見れば立派にイージス艦相当なのだろう。

 それでも、石油のそれとは比べ物にならない。ましてや原子力とは。

 同じ重さの燃料なら、石炭は石油の50%ほどのはずだ。

 無補給での巡航はせいぜい一、二週間。

 年単位の単独航海など、夢のまた夢と言うことになる。

 なるほど、近場の日本海での迎撃(・・)は、想像以上に有利な条件なのだ。


 加えて、入港地との関係が安定している訳もない。

 なにしろ、こちらの所属は老いたる大国、帝政ロシアなのだから。

 補給はだから、主に船から船、石炭搭載船を通じて行うことになる。

 つまりこの航海で乗組員は、やれ補給だしばし陸での休憩だ……と言う風に羽根を伸ばせていない。

 兵士はもちろん、僕のような調理師補助や提督さえも。

 そしてこの兵士はと言うと、急造の艦隊にふさわしい練度でしかない。

 ゆえに欧州への寄港予定は、事前に思っていたよりもずっと重要だ。


 士気があるからと言って、奇跡が起こせる訳ではない。

 何しろ、相手にも士気は存在するのだから。

 けれども、それが皆無では、最低限のリングに上がることすら厳しい。

 それ単独で何が出来るでもない、けれど無くても困るもの。

 士気はだから、潤滑油のようなものだ。


 (ジェーニギ)と士気。

 今のロシアには、いずれも十分とは言いがたかった。

 僕が見る限り、人材(・・)は決して悪くないのだけれど。

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