あとさき
そうして、二人きりの昼食は終わった。
ずいぶんとアンバランスではあったけど、昼食には違いない。
少なくとも、僕にとってはまずまずだった。
何しろ、空腹は最高の調味料なのだから。
これでもう、僕のやることはもうない。
本音を言えば、するつもりもなかった。
「じゃあ、帰るよ」
どこにとは言わない。
ただ、どこかへ帰りたい気分だった。
「合格かどうか、聞いて行かないのか?」
「ああ、それはもういいかな」
僕にとってはもう、興味のないことだ。
「受かるか受からないかはどうでもいいよ。ただ、準備不足はあったかな」
オケハザマの戦いは、何度もやる類の代物じゃない。
そう言いかけて、ここがどこかに気づく。
「――トラファルガーみたいな戦は、もうゴメンだね」
表情から察するに、この比喩は微妙なようだった。
「|誰にだって限度はある《額より高くに耳は生えず》、の方がいいかな?」
「ことわざ、何も無理に使う必要はないぞ……」
言われてみれば、そうかも知れない。
それで素直に頷くほど、いい気分でもないのだけれど。
「……今夜の宿は向かいの通りにとってる。名前は登録そのまま。もし気が向いたなら、来てくれてもいい」
「気前がいいな」
「心が広いからね――この辺りの庭先、フィンランド湾程度には、だけど」
そうしてひとまず、ここでの話は終わる。




