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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
242/350

ふた皿目・9

 じゃがいもの絞り汁を火にかけ、地道にこね続ける。

 もっとも、こねているのは僕でなく、助手(・・)なのだけど。

 言いたいことはあるだろうに、基本的に黙々と作業をしている。

 まずもって、なかなかの助手だ。


「あ、鍋底の方は焦げやすいから気をつけて」


「――そうは言っても、この水気じゃ焦げる訳が」


「まあまあ、もう2、3分したら分かるよ」


 ほどなく、白い濁りは透明に変わって行く。

 それに連れて、かき混ぜる手応えも増しているはずだ。


「――なるほど」


「ね?」


「なら、こんな風か?」


 こね方に、下からすくう手順が加わる。

 これなら、全体が透き通るまでこねることが出来るだろう。


「いいね。あとはこう、全体を回すようにしてもらえるかな」


「こうか?」


「そうそう、その調子。あと少しだよ」


 やがて全体が透明になり、糊状のものが姿を現す。

 じゃがいもでん粉の加工物が。


「うん、じゃあいったん火から下ろそうか」


「その後は?」


「水で冷ますよ。ただ、鍋の中に水は入れないでね」


「了解」


 僕はあまり人を使ったことはない。

 たいてい、自分でやる方が早いからだ。

 でも、と僕は思う。いい助手がいると、話が早い。

 これなら、使ってみるのもいいかも知れない。


「後は、うーん、ちぎるのはスプーンでいいとして、その後どう冷まそうかな」


「水じゃ不足なのか?」


「できれば、もっと一気に冷やしたいね」


「それなら」


 言って助手(・・)は、冷蔵庫の方を指し示す。

 なるほどとは思うけど。


「ちょっと遅くないかな?」


「いや、その上だ」


 上? 冷蔵庫の上には何も。

 そう言いかけて、僕は誤解に気づく。

 これは、助手の方が正しい。


()使って大丈夫かな?」


「何も全部って訳じゃないだろ」


「なるほど、確かにね」


 氷を水へと放り込み、冷却に使う。

 そうして、デザートは完成した。

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