ふた皿目・9
じゃがいもの絞り汁を火にかけ、地道にこね続ける。
もっとも、こねているのは僕でなく、助手なのだけど。
言いたいことはあるだろうに、基本的に黙々と作業をしている。
まずもって、なかなかの助手だ。
「あ、鍋底の方は焦げやすいから気をつけて」
「――そうは言っても、この水気じゃ焦げる訳が」
「まあまあ、もう2、3分したら分かるよ」
ほどなく、白い濁りは透明に変わって行く。
それに連れて、かき混ぜる手応えも増しているはずだ。
「――なるほど」
「ね?」
「なら、こんな風か?」
こね方に、下からすくう手順が加わる。
これなら、全体が透き通るまでこねることが出来るだろう。
「いいね。あとはこう、全体を回すようにしてもらえるかな」
「こうか?」
「そうそう、その調子。あと少しだよ」
やがて全体が透明になり、糊状のものが姿を現す。
じゃがいもでん粉の加工物が。
「うん、じゃあいったん火から下ろそうか」
「その後は?」
「水で冷ますよ。ただ、鍋の中に水は入れないでね」
「了解」
僕はあまり人を使ったことはない。
たいてい、自分でやる方が早いからだ。
でも、と僕は思う。いい助手がいると、話が早い。
これなら、使ってみるのもいいかも知れない。
「後は、うーん、ちぎるのはスプーンでいいとして、その後どう冷まそうかな」
「水じゃ不足なのか?」
「できれば、もっと一気に冷やしたいね」
「それなら」
言って助手は、冷蔵庫の方を指し示す。
なるほどとは思うけど。
「ちょっと遅くないかな?」
「いや、その上だ」
上? 冷蔵庫の上には何も。
そう言いかけて、僕は誤解に気づく。
これは、助手の方が正しい。
「氷使って大丈夫かな?」
「何も全部って訳じゃないだろ」
「なるほど、確かにね」
氷を水へと放り込み、冷却に使う。
そうして、デザートは完成した。




