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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
233/350

ひと皿目・5

「以前、こう言うものもある、と聞いてはいたんだけど」


 これは教科書、社会科の中でのお話。

 聞いた知識であることに変わりはない。


「実際に目にするのは初めてだね」


 さすがに氷冷式の、それも木製の冷蔵庫を見るのは初めてだ。

 嘘ではない。決して、嘘では。

 自分からわざわざ、電気式冷蔵庫やヒートポンプの話をする気がないだけ。


「――だから、よく勝手が分からないんだ」


「分かるも何も、まあ見たままの道具だな」


 言いながら、男は上部の扉を開ける。

 仕切り網の上に二、三個見え隠れする、氷の塊。

 あの氷からの冷気が、下部の棚を満たすのだろう。

 扉は無論、すぐに閉められる。


「氷の洞窟を作る訳でないから、冷気は逃げやすい。まあさっとと開け閉めすればいいだけだが。――上の扉、開けたことは内密にな」


 確かに、必ずしも必要ではない行為ではあった。

 見たままではあるけれど、単なる説明で済む話でもある。

 若干の好奇心が見え隠れした瞬間なのだろう。


「そこまで頼んでないからね、さっきのと相殺にしておこう」


「はは、了解。作業に戻る」


 ほどなく、ステーキは焼き上がった。

 正確には、ひと皿目の1枚と、焼き間違えた(・・・・・・)2枚とが。


「揚がったぞ」


 辺りを漂う、肉とジャガイモの匂い。


「ありがと。こちらも焼けたよ」


 3皿にそれぞれを盛り付け、提出用の皿にはもう一手間を加える。

 薬味用の小皿2つを乗せ、一つはマスタード、一つは塩をそれぞれ入れる。

 ステーキにバターは考えて、迷った末にやめた。

 できたてなら自信を持って出せるけど、提出する時は熱々ではないからだ。


 ――何はともあれ。

 ひと皿目、ステーキ(ステック)フリットの完成だ。


「さて」


 次いでは問題の、ふた皿目を考える時間。

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