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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
225/350

採点基準

「――で、何点かな?」


 僕は促す。


「100点満点だと、分かり易くてありがたいけど」


「100点だな」


 端的に、男。


「へえ?」


「ただし――200点満点だ。確かに、私が出した尻尾は掴んだと言っていい。ならば、それは残らずおさえておくべきだ。勝手な省略は感心しない」


「こいつは手厳しいね。よければ、採点基準を教えてくれないかな」


「点数だけだ」


 それはさすがに、公平とは言いがたい。

 不満顔の僕をよそに、男は続ける。


師匠(プリパダバーティエリ)が厳しかったからな。これでも大甘なつもりなんだが」


「なるほど、ずいぶんと大物らしい」


 目の前の男ではない。

 男の師匠が、だ。


「興味がおありかな? モスクワ出の医師(ヴラーチ)、とだけ聞いている。私にとってはね。名前は多すぎて覚えていないが」


「大した前口上だね」


 ジェームズ・ボンドみたいだ、とほとんど言いかける。

 1904年。日露戦争前夜。

 イアン・フレミングはたぶん、生まれてすらいまい。


「知らぬことは話せない。秘密を守りたいなら、そもそも知ろうとしないことだ。――27年ほどで得た、私なりの処世術だよ」


 年下だったのか。

 意外さを隠し、心の中でメモを取る。

 乏しくなりつつある相手の前髪には、ひとまず目をつむろう。


「ふむ」


 嘘かそれとも本当か。

 この場合、それは問題ではない。

 会ったばかり人間の発言。

 その真偽をすぐ見抜くなど、常人にはおよそ不可能なこと。

 ならば、その上での問題とは何か。

 ――少なくとも相手が、これ以上話すつもりはないらしいこと、だ。


 ここから何とか、相手を動かさないと始まらない。

 どうしたものだろう。

 少しだけ考え、いくつかの香辛料(スパイス)を、僕は放り込むことにする。

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