採用試験
いわゆる、自由形式という奴だ。
任意の二皿をつくって提出。
それを食べた審査員が合否を決める。
合格すれば、戦艦内での調理人待遇が待っている。
突き詰めるなら、ただそれだけ。
「――いやこれ、本気なのでは?」
思わず、声が漏れる。
周囲に聞こえるかどうか考える前に。
『まず、4番、9番、12番、13番、それに22番の人はこの場に残って下さい』
部屋に響く試験官の指示。
僕の番号は22人中の22番、つまり最初の組ということになる。
場末の食堂を思わせる、陸の会場。
そこに集う、ひと癖ふた癖をにじませる男たち。
各々に腕を磨いてきた猛者、いわゆるベテランコックの集まりだ。
腕の方も、おそらく文句ないのだろう――僕一人を除いては。
「これの何がどうしたら、“ユーリ君なら簡単さ”になるのかな……」
はっきり言えば、騙されたのではないだろうか。
嘆いても呆然としても、目の前の課題は解決しない。
それでも、つぶやかずにはいられない。
ぼやいて悪化しないなら、それは別に――いや、確実に悪化してるか。
この堂々巡りでもう、確実に十数秒は無駄にしてる。
その間にも、呼ばれていない者は次々退出し始めていた。
「――まあ、いいや」
ようやく思考を切り上げた僕の小声に、試験官の声がかぶさる。
『そこの君、何番ですか?』
「あ、はい、すみません、22番です」
『揃いましたね。では、全員で奥へ』
気付けば僕以外、残る四人は準備万端、用意を済ませている風。
調理場へ移動しながら、未練がましく考える。
ひとまず、だ。
審査員からの印象面で、はやくもマイナスなのは否めない。
『――道具、及び素材は自由にお使い下さい。課題は二皿、制限時間は一時間です。では、始めてください』




