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心弱り
革命家としての失格。
勧誘を途絶したことだろうか。
それとも、祈りを捧げたことだろうか。
元・ロシア正教徒であったはずの、老人の吐露。
これで肯かないなら。
客観的に見て、僕は血も涙もないと言うことになるのか。
「……ご意見は、承りました」
それでも。
それでも僕は、もはや素直に聞くことが出来ない。
これが巧妙な説得術でないとの保証など、どこにもないからだ。
己の判断を、決して信じ切ることが出来ないがゆえの弱さ。
老人の言葉に心が揺れてしまったこと。
それはたぶん、弱さでしかないのだから。
――彼女なら、こういう時どうするのだろう。
あるいは、話に乗る素振りでも見せるのだろうか。
どうしようもない仮定を振り払い、僕は続ける。
「悪いようには動かない、と思います――もっとも、そう確信して動く人間は、世の中では圧倒的に少数でしょうけど」
「お気持ち恐れ入りますな。いや、老い先短い老人の、心弱りとでもお思い下されば幸いです」




