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食卓
食卓に並ぶメニューは、ほとんどいつも通りだった。
外側を香ばしく焼いた、重く少し酸味の効いた黒パン。
軽い塩味で仕上げた、肉野菜煮込み。
淹れたての紅茶とコーヒー。
そしてパンに良し紅茶とあわせるもよし、イチゴの姿を残した浅煮ジャムだ。
違う点があるとすれば、今日の朝食は、静かさや落ち着きからほど遠かったことだ。
いや、決して気に食わない訳じゃない。
そう思う程度には、気に入ってはいる。
――苦手や敬意の有無こそあれど、二人とも。
たまには、こんな食事も悪くはない。
そう思い、不意に思い至る。
僕にとって賑やかな食事は、既にたまにはの出来事になっていたのだと。
しばしばは時折に代わり、今ではたまにはだ。
彼女は、今どうしているのだろう。
月に一度の手紙こそ交わしてはいる。
それでも、こうして面と向かって食事がとれないのは、いかにもさびしい。
この食卓にいたら彼女は、どんな話をしてみせるのだろう?




