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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1902年、シベリア、イルクーツク
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交通手段

 もう少し正確に言うなら、今の僕は収容所(グラーク)暮らしではない。

 流刑の身に変わりはないのだけど、きっと想像と実状はかけ離れているだろう。


 戸建ての庭付きに、生活費の支給。

 家には暖炉も書斎も備え付けられている。

 冬場の外はさすがに寒いけど、屋内ならそうでもない。

 生活費にしても、ここイルクーツクの物価の安さもあって十二分。

 思い切って気分を変えたいなら、70㎞ほど離れたバイカル湖まで遠出してもいい。

 バスでもあればもっと気軽だけど、あの交通手段が普及するのは、もう少し後の時代になってのことだ。

 本が乏しいこと以外、僕としては文句のつけどころはない。


 もっとも、いくら貴族扱いであっても、さすがにこの待遇が普通という訳ではないらしい。

 少し前までウラジミールなる大物が住んでいて、たまたま僕が来る直前に空いたのだとか。

 ちなみに刑期を終えたウラジミール氏はと言うと、今やスイスかそこらに亡命中だと言う。

 さすがに流刑の意味がないのでは……と、いくら何でも思わなくもない。

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