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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1895年、グルジア
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呼称

 象には気付かなかった(木を見て森を見ず)

 彼女から教わったその(ことわざ)は、今の僕に限りなくお似合いであるように思われた。

 ロシア語が話せるという、ただそれだけで自惚れた大間抜け(ヅラツキ)


「……もう少し、教えてくれないかな」

「その後で、私の質問に答えてくれるならね」


 その条件は、望むべくもない譲歩と言ってよかった。

 肯定の意を示し、僕は続ける。


「その辺からどう推理……いや、推測したのかな?」

「と言うと?」

「つまり、僕の素性を、だけど……」


 少しの思案顔の後、彼女は答える。


「悪人のつもりのお人好しね」


 お人好し? 僕が?

 ……いや、それは素性じゃなくて人格じゃないのか。

 僕の表情を察したのか、続けて彼女。


「甘い、と言ってもいい。でも、その甘さが、ユーリ、あなたを救った面もあるの」


 微妙な評価かと思いきや、ずいぶんと複雑そうなお話だった。


「静かなこの村(ゴーリー)も、ほんの少し外を出ると分からない。気の遠くなる昔から、グルジア(サカルトヴェロ)はいろいろな人の行き来する場所であり続けてきた」


 サカルトヴェロ。グルジアの人々の自国呼称。

 その呼称が今は、ひどく遠いものに感じられた。

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