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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第10章 アーステア大陸
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奴隷船

俺たちは衛兵が来る前にフォーリット教会を出ていった。


結局フォーリット教会と仲良くなるどころか、評価を下げさせる問題を起こしてしまった。


「あー・・・モヤる・・・」


モヤモヤしているのはフォーリット教会との問題より、あの男の子のことだ。


孤児がヤケになるなんてよくある話だ。

しばらくは犯罪奴隷として奉仕して、態度が良ければ貧困奴隷に入れられるだろう。


そのためにもちゃんと人の言うことをよく聞いて、自発的に働かないといけない。


だから・・・せめて骨くらい治してから行かせてやればよかった。


早くいつでも回復できる薬が欲しい。

あの薬屋のお姉さんは機嫌直っただろうか・・・。


「ねぇ、犯罪奴隷ってどんなことさせられるの?」


隣を歩くソフィアはシャベルをクルクル回している。

それ、危ないから止めなさい。


「色々あるけど、ドルドーラの奴隷商では奴隷船に乗せられてたな。海で漁をして暮らしたり、あとは奴隷の買い付けする時に護衛したりかな」


「ふーん。戦闘スキルなら楽勝だね」


「うん・・・罰にならないから、結構棲み分けを楽しんでるというか・・・社会に出ると暴れそうな連中が多かったよ」


粉薬の吸い方を教えてくれたのもそこの奴隷たちだ。

もちろん俺は吸ってない。

目の前で吸われて『絶対にやっちゃダメなんだぜ』と説教されたんだ。


そんな感じで、捕まっても平然と過ごす戦闘スキルは多い。


ドルドーラの奴隷商ですらそれなんだ。

他所の犯罪奴隷の品位なんて知れたものではない。


なりふり構わない連中だから、中にはリスクを恐れて捕まえようとしない衛兵もいるくらいだ。


でももし捕まっていない子がいて、償いもせずそのまま大人になっていたら・・・きっとろくな大人にならないだろう。


だからあの男の子も捕まって、これから更生を・・・でも腕折れてて・・・。


「あー・・・モヤる・・・」

「そればっかだねー」


俺は繊細なんだよ・・・。





「あーあ。結局自分たちで買わないといけなくなったねー」

「まぁ1日あるし、何とかなるだろ」


俺たちは港の市場に来た。

港には沢山の船がとまっていて、マッチョな船乗りたちが荷物の運搬をしている。


積荷を降ろしてすぐだから、ここで買う方が割引きしてくれたりお得なんだ。


ガチムチたちに紛れて、青い髪をなびかせる女性が見えた。


「あれ?!チェル姉!」

「ん?・・・え?あら!ディーじゃない!」


酒場に職をもらったレイチェルだ。

奴隷商にいた頃、何度か酒場に飲みに行ったことがある。


「久しぶりねー!なんでこんなに可愛くなってるのー?」


レイチェルに抱きつかれたが・・・硬い!!


「チェル姉!いったい!それ外して!」

「あ、ごめん!・・・よっと!」


バィンッ!


レイチェルが胸を締め付けていたバンドを外すと、巨大な水袋が・・・いや、I(アイ)カップのおっぱいが現れた。


「ふー・・・これないと走ると揺れて痛いんだよねー。はい!ハグハグー!」


巨乳は揺れると痛いらしい。

もふん!と柔らかい感触を顔面で受け止めるが、今は化粧が崩れるからやめて欲しい。


「もー変装してるんだよ。色々あったから・・・あ、そのうちいいブラ作ってあげるよ。エルフのブラって言うらしいんだけど」


「え?!あれ作れるの?!」


レイチェルもエルフのブラ知ってるのか。

女性には有名なのだろうか。


「まだ作れるかわからないけど、つけてる人がいたから。今度作り方聞こうと思って」


「凄いね!試供品できたら教えてよ。私とルミナの分もお願いね。あの子またサイズアップしたから」


ルミナ姉、まだでかくなるのか。

大変だな。


「チェル姉は酒の買い付け?」

「そうよ。アーステア大陸のウィスキーって人気あるの。シングルモルトもブレンデッドも良いのが揃っててさ」

「なんと」


この辺りにウィスキーの産地があるのか!!

全く知らなかった。


大麦麦芽だけで作られたウイスキーをモルトウイスキー。

大麦麦芽だけでなくライ麦や小麦、トウモロコシなどで作ったウイスキーをグレーンウイスキーという。


モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたものをブレンデッドウイスキーという。

飲みやすくライトなグレーンウイスキーを混ぜることで、風味が良く親しみやすい味に変えるのだ。

そして”ひとつの蒸留所”から作られたモルトウイスキーのことを”シングル”モルトウイスキーというのだが、各蒸留所の個性が物凄く出る。

甘いナッツのような濃厚な味わいのあるものから、弾けるフルーツを思わせる爽やかな香りがするものまで様々だ。


確か高級列車で丸メガネが縦飲みさせてくれたのがシングルモルトウイスキーで、駅で余韻を響かせてたのがブレンデッドウイスキーだったな。


あれも有名所だが、レイチェルが買いに来るほどの品質がここのウイスキーにもあるのだろう。


ド田舎とか何も無いとか言ったのを訂正しよう。

豊かな自然が広がるアーステア大陸には綺麗な水と豊かに実った大麦麦芽がある!


これはうちでも作らなきゃ!

酪農と同時進行できないかなー・・・あ、まず土地取り返すのが先か・・・。


「ふふっ相変わらず酒のことになると目の色が変わるんだから。ほら、1本買っていきな」

「おお!チェル姉ありがとう!」


チェル姉からシングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーを買った。



「あ、そうだチェル姉。奴隷商に伝えて欲しいんだけど、スキル1つしかないのはフォーリット教会で道具を使った鑑定をしてないからなんだって。お裾分け渡すから、弟分に鑑定受けるように頼んでくれないかな」


「うーん・・・フォーリット教会か・・・ちょっと難しいかな。ホール大陸にフォーリット教会ないし」


「え?!ないの?!」


世界最大の宗教なのに?!


「なんかホール大陸は教義にない大陸なんだって。だからフォーリット教会は立ち入らないんだってー」


「うわーまじか。それじゃみんなをここに連れてきて・・・いや、それじゃいくらかかるんだよ・・・」


船代が往復でやばい事になる。

フォーリット教会の出張サービスとかやってないかな・・・。


「まぁやり方だけでもわかってよかったわ。いまドル爺、会合とかでカタラーゼ国に行ってるの。帰ったら伝えるね」


「あぁ、よろしく」


「それより!隣の子紹介しなさいよ。さっきから気になってるのに!」


グイッとレイチェルが俺の肩を抱き寄せる。

バィンバィンと俺にチチが当たるからやめてくれ。


「お父様が雇ったメイドだよ。・・・服装は本人の意思を尊重してるからな」


「うそーー!こんな個性盛る女子がいるの?!絶対趣味押し付けてるでしょ?」


俺にこの個性の責任を負わせないで!!





ふと顔を上げると、俺の視線の先にドルドーラの奴隷商専属の奴隷船があった。


誰か待っているのか、船の前に船長やごつい首輪をした犯罪奴隷たちが集まっているのが見える。


「ん?ドル爺なしで奴隷の買い付け?」


『奴隷の買い付け』という名の孤児の引き取りと孤児院への支援も奴隷商の仕事だ。

奴隷船で孤児たちを無事にホール大陸に届けている。


でも買い付けはドル爺がやっていて、誰かに任せるようなことはしていないはずだ。



「んー・・・あんま言いたくないんだけどさ、ここ数年アーステア大陸の孤児たちが消えてるの」


「それ・・・だいぶやばいな。犯人わかってるのか?」


「わかってるみたい・・・というか、その・・・うーん、船長がやる気になっててね・・・」


「?」


サバサバしたレイチェルに珍しく、目線をあちこちに逸らしてモゴモゴしている。


「えーとね・・・戦闘スキル持ちしかいないから、巻き込まれる前に逃げた方がー」

「捕まえたぞ!!」

「!!」


ドガッ!!


ごつい首輪を付けたマッチョ2人が男1人を取り押さえていた。

もう1人が布袋を担いで船長の元に走る。


「そのまま押さえていろ!すぐ首輪を!」

「こいつが孤児を攫うのを見たんだ!」


慌ただしく取り囲み布袋を開けると、中からぐったりとした子供が出てきた。


衛兵に連れていかれたはずの、あの男の子だ。


痛そうに腕を庇って震えている。

・・・見開かれた目には涙が溢れているが、腕の痛みだけのものではないだろう。



ってことは、捕まってるあれが人攫い・・・。


・・・ええ?


「・・・なにしてんの」


奴隷のマッチョに組み敷かれていたのは・・・自警団だった。





人攫い・・・ええ?!自警団が人攫いしたの?!

あれ誰だっけ?!

名前が出てこねぇ!!


自警団の男が顔を上げてこちらを見る。


「やー、シェリー様、ご機嫌麗しゅうございます」


ギリギリと頭や肩を押されられているが、それをものともせず爽やかな挨拶をやってのけた。


多少棒読みだが・・・それより何してるの?!


「孤児院がもぬけの殻・・・お前何をした?」

「はぁ?何もしてねー・・・よっ!」


バキッ!


グルンと向きを変えると、奴隷2人の顎を殴り飛ばして距離を取った。


それを合図に他の自警団が路地から出てきた。


・・・お父様なんでいるの?!


6人ほどいる自警団の真ん中でお父様が腕を組んでいる。


6人ということは、防衛のため自警団を半分くらい置いてきたのだろうか。

っていうか、お父様置いてこい!

領主なんだから!

お留守番してなきゃダメでしょ?!


エスロットもバレたかーと頭をかいて笑っている。


・・・うん。誰も止めるヤツがいなかったね。

お父様の右腕であり、自警団の隊長であるエスロットが止めれないならしょうがないだろう。



「全員捕まえて孤児たちの居場所を吐かせるぞ」

ジリッ・・・と奴隷たちが手に棒や剣を構える。


「お?いいねー久しぶりに暴れるか」

エスロットがいい笑顔で大剣を光らせ、自警団が農具を取り出す。


おいおい!ここで暴れるなよ!!


「待ってください!何かの間違いです。お父様たちが人を攫う意味なんて・・・」


・・・ある。


確かお父様が『色々必要なものが』って言っていたし、ソフィアは衛兵が『回収する』って言っていた。


ってことは、俺が薬作るって言ったからか?!

いや、でも孤児がいなくなるのは数年前からってレイチェルが・・・。


「相変わらずそれ使ってるのか。泣き虫のガキどもめ」


船長が俺を無視してお父様たちに話しかけている。

無視すんな!

っていうか、知り合いなのか?


「ほお?あの時の船長か・・・忘れる気がないなら首を落とすぞ?」


「ろくな大人にならなかったな・・・奴隷船に乗せてやるよ、首輪付きでな」


知り合いだけど親しくなかった!!


無視された俺はお父様と船長の間に入る。


「ダメです!私は、私たちは誇り高きアペリティフの民です。そのような非道をするわけがありません!ですよね?!みんな!!」


くるっと振り返りお父様たちを見る。


「「・・・・・・」」


おいぃぃ!!

そこは嘘でもそうだって言えよぉぉ!!


「ほれ、どいてな。嬢ちゃん」

「シェリー、下がっていなさい」


自警団と奴隷たちの戦いが始まってしまった・・・。





ギィイン!!

バガッ!!


さすが首狩りと噂されるだけのことはある。

お父様が飛び上がれば足場にされた建物は砕け、誰が放ったか炎が壁を焦がしている。


犯罪奴隷とはいえ堕ちても戦闘スキル持ち。

岩を出現させて投げたり、水や風が舞っている。


・・・やめて!!

町が壊れる!!

そして巻き込まれるから威力下げて!!


「始まっちゃったかー。ディー、メイドさんと離れてな。メイドさん、よろしくね」

どうやらレイチェルはこの事を知っていたようだ。


「で、でもみんなが・・・」

「りょうかーい。ほら、いくよー」


ぐいっとソフィアに手を引かれ歩き出した時だった。


「くっそ、やっぱ強ぇな!」


船長がドロリと溶けた剣を投げ捨て、こちらに走ってきたと思えば・・・俺を片手で抱き上げる。


「ちょっと人質になってくれ!」

「にゃっ!!」

「シェリー!!」


何するの!酷いことしないで!!

っていうか、そこまでするなら喧嘩やめろよ!!!


「おい!アペリティフの魔物どもめ!こいつが・・・って!やばっ!」

「うわっ強化薬飲みやがった!」


え?強化薬?


見ればお父様たちの足元に空のビンが落ちている。


ユラユラ・・・。

お父様たちに赤黒い霧のようなものがまとわりつく。


「・・・ゆくぞ」


ぶわっと風が吹いたと思えば、お父様たちの姿が消えた。


「ぐぁ!!」


前方にいた奴隷が叫ぶ。

よく見れば腕や腹がえぐれている。


先程とは比べ物にならない速度でお父様たちが奴隷たちを一方的に殴り飛ばし始めた。


「やべぇ!船長!そいつ捨て・・・ぐぅ!!」

船長を庇おうと前に出た奴隷が、ぶっ飛ばされていく。


奴隷たちは壁にめり込んでいたり腕や足が曲がっていたり・・・。


気付けばあとは俺を抱える船長だけだ。


「おいおいまじかよ・・・」


船長を取り囲むように自警団たちが立っている。

ゆらりと立ち上る赤黒い霧・・・。


「・・・その子を離せ」


船長に向けられた殺気が俺にも伝わってきた。


・・・怖い。


いつものみんなじゃない・・・。


「みんな、やめ・・・」


声が震える。


くそっ・・・女の子のようなか細い声しか出せない自分に腹が立つ。


俺は大きく息を吸い込み・・・。


「やめ「何しとるかガキどもぉぉ!!!」ふぇ?!」


突然ビリビリと腹の底に響く怒声が轟いた。





振り返れば見慣れた緑のスカーフを巻いたジジイ!

「ドル爺!」

「げっドル爺!・・・とダンカンの兄貴!」

振り返った船長が慌てている。


「おーおー、暴れとるのー」

はっはっはとフッサリ蓄えた髭を撫でる小柄で筋肉質な男がドル爺の隣にいる。


あれは・・・ホール大陸にいたドワーフのダンカン!!


「ほれ、ガキども止まれ」


ほいっ!と気合いを入れると、目の前に水でできた剣が4本現れた。


シュババッ!!


4本の剣は分裂しながら次々に飛んでいき、自警団に突き刺さる直前に形を変えて絡みついた。


「うぉ!何だこれ?!」

「げっ!!」


あっという間にお父様たちを全員捕まえ、道路に転がしていった。


「あとは回復かのぉ」


そりゃ!っとダンカンが拳を上げると、そこから放たれた光が奴隷たちを包み込んだ。


光が消えると、奴隷たちの怪我も消えていた。


・・・えええ?!


ダンカン、まじつえぇ!!

勇者?!勇者なの?!



・・・ガハッ!!



フッサリモサモサな勇者を見ていたら背後で嫌な音がした。


見ればお父様たちが血を吐いていた。


「お父様!」

船長の脇を抜けてお父様たちに駆け寄る。


「・・・大丈夫。いつもの事だ」

「そうそ・・・ごふっ・・・いつもの事ですぜ」


いつもって何?!

なんでみんな血を吐いてるの?!


「強化薬の副作用だな」


気付けはダンカンが近くに立っていた。


「・・・ったく、いつから使い込んでんだ。血の臭いが染み付いてんぞ」

「・・・ふん」

「ふんじゃねぇよ。ったく、軽々しく使うなよ」


パァァ!とダンカンが回復スキルをかけてくれた。

お父様たちの拘束を解くと、服を払いながら立ち上がった。


「お前がダンカンか・・・手紙はあるか?」


手紙?・・・あ!取りに行くって言ってた手紙か。


「お前・・・まず礼が先だろ。あと普通取りに来るのが礼儀だろ。しかも20年以上経つんだが・・・」


ダンカンがもっともな愚痴を呟く。

ジト目で睨まれるがお父様は気にする様子もなく、手をダンカンに向ける。


「・・・ん」


・・・この状況でチョーダイって顔しないで!!


「まじで誰に似たんだか・・・ったく。ほらよ」


ダンカンが手をかざすと手紙が出現した。

テオドールと同じく不思議な鞄でも持っているのだろうか。



手紙をお父様に渡すとダンカンがこちらに向き直った。


「よぉ、ディーだったか?あぁ、変装中か。すまんすまん。ん?テオはどうした?」


「今日は留守番を・・・目立たないように」


「めちゃくちゃ目立っとるな。ほんと、お前の血筋は問題ばっか起こすからな・・・もう少し大人しくできんのか?」


問題って言ったって・・・うん、問題いっぱいだ!

そんな目で俺を見ないで!


「ダンカンってドル爺の知り合いだったんだな」

「おぅ。昔のよしみってやつだ」


ちらっとドル爺を見れば、いつも通り奴隷たちに怒鳴っていた。


「全く、こんな所で騒ぎやがって・・・おめぇも何してんだ。今日は商人の買い付けの護衛だろうが」

ドル爺が船長に詰め寄っている。


「いや、ドル爺違うんだよ!こいつらが孤児を攫って・・・」

「それで大暴れか?このど阿呆!」


マッチョたちがドル爺に縮み上がっている。

首輪のせいじゃなく、普通にビビっているようだ。



「ふん・・・言っておくが、孤児院のガキなんて知らないぞ」

お父様が船長に反論すると、自警団もそうだそうだと同調する。

「そうだ。俺たちがそのガキ捕まえた時はもう誰もいなかったぞ」


「・・・この子は攫っちゃったんだね」


俺の言葉に、すいっ・・・とお父様たちが目線を逸らした。


「・・・私が薬を作りたいとわがままを言ったからですね」

自分が情けなくて目を伏せる。


「ディ・・・シェリー、何を言う!」

「そっすよ。それに薬ができた方がみんな助かるんで」

「そうそう。んでやっぱ薬作りと言えば人体実験用の人間確保だもんな!」


おいさっきからうっかり発言してるの誰だよ!

不穏しかない!!



「薬の人体実験に人間確保って・・・てめぇら・・・」

「馬鹿だ・・・馬鹿がいる・・・」

ドル爺とダンカンが頭をガシガシかいている。


「ほら、やっぱりアペリティフにいようとフェンタークはフェンタークなんだよ。絶対こいつらが孤児院襲ったんだって」

へっと船長が吐き捨てる。


「なんだと。そんなに疑うならベラルーラ国の兵隊に残渣スキル持ちがいるから連れてくるか?」


・・・連れてくるって、それ多分同意なしに連れてくるんでしょ。

それ誘拐とか拉致っていうんだよ。


「そこ!そういう所!!だから魔物扱いされるんだよ!バカ!」


船長がお父様に説教しているが、全く響いていないようだ。


昔の知り合いなのかな・・・泣き虫とか言ってたな。

お父様もああ見えてか弱い子供時代があったのだろう。





「ドル爺・・・首輪返上した方がいいか?」

これだけの問題を起こしたんだ・・・。

もう繋がりを絶たれても文句を言えない。


「阿呆が!買い取られたんなら飼い主と話付けずに首輪返せるか!」


久しぶりにドル爺のツンデレが聞けた。


俺はまだドルドーラの奴隷商と繋がりを持っていていいようだ。


「そっか・・・ありがとう」


「・・・全く。報告書渡せばここには帰ってこないと思っていたんだがな・・・」


「え?!ドル爺、みんなが生きてたの知ってたの?!」


「当たり前だ。余りに教育に悪いから関わらずに生きられるようにしたんだ」


あーそういえば報告書渡された時、ドル爺そっぽ向いてたな。


嘘の付けないジジイに慣れないことさせたな・・・。


「ドル爺、わた・・・俺、とっくに大人だからな。そんなに庇ってもらわなくても傷付いたりしないよ」


「・・・ふん、だったら自分の親の躾くらいしっかりやれ」


見ればお父様がダンカンに止められていた。


「お前が、ディーを隠し、奴隷にした、張本人か!」

「あー!もう!落ち着かんか!ほんと!このポンコツめ!!」


ドル爺に掴みかかりそうなのを水魔法や土魔法で抑え込んでいる。

ダンカンのスキル『剣作成』って言ってたけど、色々使えるようだ。


そういえば魔王(ミルドレウス)も色々使えてたもんな。

勇者(ダンカン)も色々使えないと戦いにならないのだろう。


そんな勇者が全力で止めてる(ミハイル)を俺が止める?躾ける?


ははっ・・・ムリ!





「そうだ、ここに来る前に鑑定持ちのおばさん2人組を見たんだ。もしかしたらその人たちがやったのかも」


だとしたら、フォーリット教会で忠告するの忘れた俺にも責任がある。


「そうか。残渣は使えないが、消えた子たちの追跡はわしも手伝おう。この坊主はドルに渡してやっていいよな?」

クイッと男の子を親指で指す。

「ええ。もちろんです」


「勝手に決めてんじゃねぇ!」


大人しくしていた男の子が叫んだ。



「なら坊主、選べ。骨の折れた子供をずた袋に詰める連中について行くか、犯罪奴隷として奴隷船に乗るかだ」

ダンカンに促され、男の子が息を飲んだ。


チラッと男の子がエスロットを見る。

・・・が、『入る?』と袋を広げられ、視線を逸らした。


チラッと男の子が船長を見る。

・・・が、『付ける?』とごつい首輪を広げられ、虚ろな目をしている。


うっわ・・・選びたくないな。


「うっ・・・なんで・・・なんで俺ばっかり!俺戦闘スキルだよ?!なんでこんな所にいなきゃいけないの?!なんで?!なんで・・・」


男の子の視線が俺に向けられる。


「そいつなんて戦闘スキルじゃないんだろ?!シスターだって言ってたよ、社会に貢献できないやつはゴミだって!!ゴミのくせにイキってんじゃねぇ!!」


おいおい。

いま俺が弱そうだから啖呵切ってきたな?

叱るぞ?躾るぞ?!


「だ・か・ら・落ち着かんか!!」

視界の端でダンカンがお父様を押さえ込んでいる。


しばらくそうしててくれ。


俺だって言われっぱなしじゃないんだからな!


「戦闘スキルじゃないからと言って、侮辱されるつもりはない!私たちは『商業スキル』なんだ。戦いばかりが生きる術だと思うな!」


ビシッと指をさして反論する。


「だって・・・俺戦闘スキルなのに・・・」


「戦闘スキルだからって犯罪を行っていいわけじゃない。っていうか、奪おうとするな。お前が落ちようとしている世界はここより怖い所だぞ。・・・袋に詰められて怖かっただろ?」


「・・・っ」

男の子が腕をさする。

ダンカンはバッチリ腕を治してくれたようだが、精神的なダメージは残っているようだ。


自警団やソフィアがやらかしたことを『な?弱肉強食って怖いだろ?』って言うのもどうかと思うが、身近に起きたことの方がこの子に伝わりやすいだろう。


「犯罪を続けるつもりなら、あれより怖いことが起きる。自分より強い戦闘スキルなんてどこにでもいるのだから・・・。だから・・・今のうちに自分の居場所を作って。守ってもらいながら、自分のできることを探して欲しい」


「・・・でも・・・俺・・・」


「カーー!!グジグジうるせぇ!!」

「「ひぇっ!!」」


隣でドル爺に怒鳴られた。


「いいかガキ。自分のやった事が悪い事だと自覚しとけ!それができりゃ自分がされた非道を無自覚にやらかすボケ共より、マシだ」


ドル爺がチラッとお父様たちの方を見る。

お父様たちも昔何かに巻き込まれたのだろうか?


「お前もビシッと叱るなら厳しく言わんか!」

「ドル爺みたいに慣れてねーんだよ・・・」

ボソッとボヤくが、確かに人を正したいなら厳しさも必要だろう。


でも言い方を厳しくすればいいってもんじゃないしー・・・難しい!!


「小僧、いつまでメソメソしとる!さっさと支度せんか!面倒見るのはワシなんじゃぞ!!」

「うぅ、はい・・・」


ポンっと男の子に渡されたのはごつい首輪ではなく、緑のスカーフだ。


・・・ドル爺も甘いんだから。


この男の子がドル爺のツンデレに気付くころには、きっと奴隷商のみんなと仲良くなっているだろう。





「あーあ、終わった終わった。久しぶりに聖女様が見られたぜ」

「さすが魔物使いマーサ様と同じ目をしてたな・・・いや、少し優しすぎなところは違うか」

アハハと自警団が笑っている。


みんな、町壊した自覚ないのね。


周りを見れば壊された店の商人たちがため息混じりに店を再開している。


謝罪と補償はドル爺がするって言ってくれたから甘えてしまった。


だが色々再認識した。

アペリティフやばい。

主に倫理観!


いくら難民とはいえ、やっていい事と悪い事がある。


人攫いの件は俺にも原因があるが、ちゃんと叱らないといけない。


帰ったら反省会開いてしっかり話し合おう。


「あ!みんなで買い物すればすぐ終わるね」

ポンッとソフィアが手を叩く。


「それじゃとりにいくか」

バッと自警団が屋根を超えていった。


・・・ん?『()りにいく』だと?


「ちょっと!みんな!お金払ってね!!お金ー!」


・・・お母様、厳しくしないと伝わらないこともあるんですね。


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