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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第10章 アーステア大陸
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買い物

「おっと、いたいた。あんたたち町に行くんだって?」


村のまとめ役のベネッサだ。


動きやすいデニムのパンツ・・・。

ウエストや足にフィットしているスキニーパンツか。


・・・うむ。良きサイズ感だ。



どれだけ高級なパンツでも、大きければ野暮ったく着られている感が出てしまう。

サイズ感は第一印象に大きく関わるから、自分のサイズに応じた着こなしが大切だ。



ベネッサはヒップの生地がやや頑張っているが、これはこれでファンがいるから良しとしよう。



「ミハイル様から聞いたよ。女装するんだってね」

「うっ・・・その、俺は・・・」

「ほら、町では『私』だよ!坊ちゃんがシェリーちゃんのふりして回るんだろ?」


「・・・え?シェリーのふり?」


「シェリーちゃんがウォルトア大陸にいるのがバレたからね。ここに帰ってきたって噂になればあっちは安全なんだよ」


「そうなのか・・・」


シェリーが狙われない為に囮になる必要があるということか。

お父様はそこまで考えていたのか・・・。



昔はお裁縫スキルのこともあって、女の子に間違われるのが嫌だった。


でもシェリーの身の安全のためなら・・・俺は男を捨てるぞ!



「ほら、着替え用意してあるから。行くよ」

「わかった。・・・できるだけ地味な服にしてくれ」


まだ決心が固まらないまま、俺たちはベネッサのテントへと向かった。





ベネッサのテントで女物のパンツスーツに着替えた。

上は白のシャツに下は黒のパンツだ。

女物のコートを羽織ってしまえば胸に膨らみがなくてもバレないだろう。


「スカートにされるかと思ったよ」

「さすがに履き慣れてないと仕草でバレるからね。さて、化粧するよ。まず化粧水をしっかり肌に馴染ませて」


ヨルヨンのために買っておいた予備の化粧水を顔全体に付けた。


「坊ちゃん肌きれいねー。そんなに下地重ねなくても良さそうだわ」

「薄化粧で頼む」

「薄化粧って、ファンデを薄く塗ればいいってもんじゃないんだからね」


下地の重要性を語られるが、俺にはさっぱりだ。

とりあえずファンデーションが肌に綺麗に付いて、長持ちさせる為に必要なのだそうだ。


伸びのいいクリーム状の化粧下地を付け、少し暗いファンデーションを顔の周りに、明るい色のファンデーションを顔の中心に塗っていく。


「こうすると小顔効果があるの。まぁ坊ちゃんはそんなことしなくても小顔だからいらないけどね」


パタパタと仕上げ粉をまぶし、ブラシで余計な粉を払っていく。


下地だけでなく仕上げ粉をまぶすとファンデーションが長持ちするのだそうだ。


これだけ頑張って化粧しても、汗や脂で数時間おきに化粧直しをする女性たち・・・大変だよな。


俺はこれっきりにしてもらいたいものだ。


「アイラインとマスカラも付けるよ。ファンデしただけだと目鼻がハッキリしないから」


「別にここまで来たら逃げないよ」

正直に言うと逃げたいけどな。


上を向いたり、目を閉じているあいだに目元をペン先が触れるのは少し怖い。


先の柔らかいペンでアイラインを引き、茶色のアイシャドーを重ねていく。


まつ毛が上へ上へと伸びていき、もう目元は別人のようだ。


眉毛を書き、ピンク系のチークを頬骨をなぞるようにふわりと描く。


「リップはチークと同じピンク系よ・・・はい、できた!」


俺は鏡を見た。


・・・美人だ!



「まぁまぁ!ほんとに若い頃のマーサ様そっくりね」

ベネッサが嬉しそうにウィッグを整える。


お母様そっくり・・・か。

こんなにお母様がみんなに慕われていたなんて知らなかった。

ずっと館に篭って勉強するか、早朝の走り込みをしていたから自警団以外の村人についてほとんど知らない。


・・・もっとみんなのことを知らないといけないな。



「口説かれたり攫われたりしちゃダメだからね。はい、これ使った化粧品セット。私の予備だから持っておいき」

「ありがとう」


ファンデーションなどの入ったポーチを受け取った。

化粧が崩れたら自分で直さないといけないな。



化粧が終わり、俺は隷属の首輪を付け直した。


「それ付けていくのかい?」

「ええ。俺のお守りなんで」


「そうかい・・・昔の隷属の首輪は体に痛みが走る仕掛けがあったんだよ・・・時代は変わるものだねぇ」


目を細めて痛々しい物を見るように首輪を見つめている。


確かこのタイプの首輪が普及しだしたのが50年前の奴隷解放運動とか本に書いてあったな。

犯罪奴隷はいまだに旧式のヤバい首輪を使う所が多いらしいが、貧困奴隷には使わないのがルールだ。


俺が貧困奴隷として不自由なく過ごせたのも奴隷の地位を保証しようと動いた人達のおかげだ。

誰か知らないが、感謝しよう。



「こっちも準備できたよー!」


ソフィアの声がして後ろを振り返った。


装備品:猫耳、メイド服、オーバーニー(白)、でかいシャベル。


おめでとう!

ツインテールがドリルツインテールに進化した。


・・・なんでや!!


「ソフィア・・・目立つ」


個性が飽和している。

これ以上はシルエットが変わらないくらい個性を盛っている。


「えー?これディー君が真っ赤なウィッグで目立つから、さらに目立つようにって。ミハイル様が」


木を隠すなら森の中。

目立つなら、さらに目立つやつを隣に!ってか!!


「お父様もなんてことを・・・」

「ほら!出発しますよー!早くしないと夕飯までに町に着かないよ」


買い物をする町まで、列車で片道2時間の距離だ。

俺たちは難民キャンプ、軍人たちのテントを抜けて駅へと急いだ。





俺とソフィアは列車に乗って町に向かっていた。

西側最大の貿易港【シャンパーニ】

ホール大陸に近く、商業ギルドとのやり取りも盛んな町だ。


「あー風が気持ちいい」


窓を開ければ風が吹き込んできた。

小さな個室のような座席に座りっぱなしでは息が詰まる。

だって2時間もかかるのだから。


「シェリー、髪が乱れるよ」


俺はシェリーとして買い物に来ている。

優秀なスキル持ちとして狙われている妹のため、囮になろうではないか!


俺は気合を入れてウィッグを編み込んだ。

いつもヨルヨンにしているのと同じ編み方だ。


どうせシェリーとして噂になるなら、淑女として話題になろう!


「さあ、行きますわよ!」


ドン!


「おい!さっきからうる・・・っすー・・・」


個室を開けようとして、男は空気の抜けるような声を発して立ち去った。



シェリーとして出発して以降、こうなのだ。

難民キャンプを抜けて駅に向かう時も女に飢えた軍人たちに絡まれるかと思ったが、俺を見る視線はすぐに隣にスライドしていく。


そりゃあね。

隣にドリルツインテの猫耳メイドという歩く個性がいれば誰でも見るだろう。

しかも使い込まれたシャベル装備って・・・。


「そのシャベルはソフィアの得意な武器なのか?」


大きさで区別されがちだが、シャベルとスコップの違いは足をかける部位があるかどうかだと言われている。


「えー?違うよ?ミハイル様にこれ持って行けば絡まれないって言われたから」


またお父様か。

確かにこんな変な装備してたら誰も絡まないよな。


というか、こんなに目立ってていいのだろうか。

買い物はソフィアと2人で出発している。


大人数は目立つからという理由でテオドールたちを留守番させてきたはずなのに、俺もソフィアも悪目立ちしすぎている。


・・・無事に買い物を済ませることができるだろうか。


余計なことを考える時は手を動かした方がいい。

鞄に付けている白いあみぐるみをカスタマイズしよう。


アナリーゼに空間作成のマジックアイテムだと思われたあみぐるみ。

途中青い毛糸で編み方を変えてみたから、繭のような形で、青いストライプが入っている。


鞄から白の毛糸を取り出し、長い耳と手足を編んで綿を詰めて・・・。

イカした顔を刺繍してっ・・・と。


「できた!」

「それ・・・うさぎ・・・かな?」

「イカしたうさぎだよ?」


何で当たり前の事を聞かれるかわからないが、なかなかいい出来だ。


キモカワ系だが女子ウケしそうなうさぎだ。

青いストライプが腹巻きのように見える。


これで俺の鞄にはうさぎ、革細工、オーガンジー刺繍が可愛く揺れることになった。


うむ、女子っぽいぞ!





2時間後、俺たちはシャンパーニに着いた。

ウォルトア大陸ではオシャレなパラソルの露店やレンガ造りの建物なんてあったが、アーステア大陸は質素で白い建物が多い。


隣国に取られた領土からそんなに離れていないのに人通りは多く、物流もそれなりにあるようだ。



さて、もう夕方だ。

冬は暮れるのが早い。


「ちょっと早いが、宿屋を探そう。買い物は明日でもいいだろうし」

「そうね」


俺は人にぶつからないよう注意しながら歩く。

絶対に絡まれてはいけない。

非戦闘スキルにとって歩行者は歩く地雷だ。

よそ見せず、急に立ち止まらず。

目当ての店を探す。



「むっ!まてぇい!!」

「はぇぇ?!」


やめろよ!びっくりするだろうが!!


突然店からオッサンが出てきた。

歩行者ばかり見ていたから横から来るとは思わなかった。


「その革細工を見せてもらおう!さぁ!」

何だこのハゲマッチョは!?


「え?革細工・・・あ!」


よく見れば看板に『商業ギルド所属 レザークラフト専門店』と書いてある。


レザークラフトのスキルアップの書の付録、確か出来栄えで割引きしてくれるって書いてあったな。



「ど、どうぞ・・・」

鞄から革細工を外してオッサンに渡した。

何だか緊張するな。


「ふむ・・・磨き方にムダがあるな。穴開けは・・・うむ、上出来だな」


磨いたのは俺だ。

ムダがあるだと?!

・・・まぁ、力加減が難しかったんだ。


穴開けはテオドールだったな。

あいつレザークラフトの才能あるんじゃないか?


査定される間、店内をぐるりと見回す。

照りのある鮮やかな茶色の革の靴や鞄。

他にも青いウロコのような革や赤い毛皮も吊るされている。

よく見れば『俺が取ってきました!』の写真付きでハゲマッチョがサムズアップしている。


品質保証が暑ぐるしい!



「よし、合格だ。次のステージに進むがいい!」

バーン!とカウンターが叩かれた。


「つ、次のステージ?」


オッサンは足元からでかい箱を取り出した。

「うむ!上級スキルアップの書を読む頃には自分で狩った革で作れるだろう!」

「あの、お・・・私レザークラフトスキルじゃないので・・・」

「なるほど!ではこの中級スキルアップの書を読むがいい。さぁ選べ!」


聞いちゃいねぇ!!


オッサンは箱とは別に、2冊のスキルアップの書をカウンターに並べた。


【誰でもガンマン!固定しやすい銃ホルスターの決定版!楽々サイズ変更ホルスター同封!】


【女子必見!赤トカゲのオシャレベルト!楽々サイズ変更!小物入れ付き!】


ホルスターと小物入れ付きのベルトがそれぞれ付属に付いているスキルアップの書だ。



「ホルスターはどうだ?いずれこのホルスターに嵌る銃を手に入れ、自力で獣を倒し!皮を剥いでくるのだ!!」


「いや、銃はちょっと・・・それに皮の剥ぎ方知らないし・・・」

ついでに皮をなめして革にする技術も知らん!


「ふむ!では小物入れ付きのベルトだな!あと【皮剥ぎ名人!毛ダルマからウロコまで何でも剥せる限定版!おすすめキット同封!】と、割引き特典商業ギルド御用達のグッズあれこれ!全部合わせて銀貨29枚だ!」

先程取り出した箱の中身が割引きグッズのようだ。


「うーん・・・ちょっと高い・・・」


「よし!銀貨28枚にしてやろう!」


あんまり変わってねぇ!

でも銀貨1枚でもランチ1回分の特だもんな。

いい割引だ。


「ありがとう」

スキルアップの書と道具を手に入れた。


・・・テオドールのお土産にしよう。




「あ、そうだ。私たち宿屋を探してて・・・」

「宿屋はうちだよ!」

隣の店から元気なおばさんが出てきた。


呼んでないのにきた・・・。


「うちの隣の食堂は美味しいからね!期待しなさい!!」


見れば宿屋の隣からウェイトレスがサムズアップしている。


隣の隣も臨戦態勢か。

客を逃さない姿勢は見習おう。





おばさんの宿屋に部屋を借り、隣のレストランに入った。


夕食は何にしよう。

最近食べてなかったから魚介類がいいな。


「どれにしようかなー。これ安いから・・・でもこっちのがお得?」

ソフィアがメニュー表と睨めっこしている。


「私が払うから好きなの選んでいいよ」

「え?!いいの?!よかったー。メイドって住み込みだし難民だから給料ないんだよねー」


・・・なん・・・だと。


無料奉仕?!

お父様、給料はちゃんと支払わないと!


「・・・ソフィア、好きに注文してくれ。お金の心配はないから」

「え?うん、ありがとー!」


「それと明日はソフィアの必要だと思う物を買おう」

給料がないなら私物も買えなかっただろうし。


「え?!う、うん!」


イザベラたちも給料貰ってないのかな。

何か買っていった方が・・・あ、でもイザベラとアメリアの分はラースが金を出すだろうし・・・いや待てよ、難民だから村のみんなも苦労しているのだろうか。


だとしたら村のみんなに着替えの1つでも多く渡せるよう、布を買って行くか。


となれば、明日のために英気を養おう!


「ソフィアもお酒飲める?」

「んー15才になったし、アペリティフでは飲んでいい年だねー」

「あれ?ソフィア1個下なんだ」

「シェリーちゃんの1個上ですよー」

「ふふ、そうでした。じゃあロゼワインにしよっか。女の子でも飲みやすいのが揃ってるからね」


ロゼワインは赤ワインと白ワインの中間のような、淡いピンク色が特徴のワインだ。


赤ワインの原料は黒ぶどう。

白ワインの原料は白ぶどうだ。


ロゼワインは黒ぶどうと白ぶどうを一緒にして作ったもので、赤ワインと白ワインを混ぜたものでは無い。


淡い色をしていても赤ワインのような濃厚な味わいも、白ワインのようなスッキリとした飲みやすさも兼ね備えていて女子ウケがいいのだ。



「はい、お待ちどうさま!」

ロゼワインと一緒にクラーケンのカルパッチョ、アボカドのフリットがテーブルに並ぶ。


このクラーケン、船旅で倒したでかいヤツかな・・・。

いや、吸盤の大きさ的にぞろぞろと出てきた小さいクラーケンっぽいな。



「ロゼワインピンク色でかわいー!」

ソフィアがグラスに注がれたロゼワインを見てはしゃいでいる。


「喜んで貰えて嬉しいよ。では明日の買い物のために乾杯!」

「乾杯!」


赤ワインとも白ワインとも違う甘くスッキリとしたロゼワイン。

どんな料理にも組み合わせやすいし見た目も華やかで、どんどん飲んでしまいそうだ。


生ハムが花のように添えられたオシャレなアボカドのフリット。

熱々のアボカドがトロトロしていて、ハーブと生ハムによく合う。


「すごく美味しい」

「お口に合って良かった。この生ハム、アーステア大陸のワイルドボアじゃないとこの味にならないの!」


ふふっとウェイトレスとコックがサムズアップしている。


素材の良さか。

アーステア大陸なんてただの田舎だと思っていたが、こうして職人が集まるいい土地なんだな。




食事を終え、ソフィアはデザートにパフェを食べている。


よく酒飲んで料理もガッツリ食べた後にパフェが入るね!


「そういえば、なんでホルスター選ばなかったの?」


デザートのほろ苦ブラウニーをつつく俺を不思議そうに見ている。


「・・・ちょっと苦手でね。ここに来る途中撃たれたけど、あれを持つ気にはなれないな」


「え?!撃たれたの?」


「あ、いや撃たれたけど、私には当たらなかったよ・・・その、庇ってもらって・・・」


あの紳士っぽいやつが撃った弾が、トライドットに当たった。

テオドールの驚いた顔・・・申し訳なかった。


「そうなんだ・・・ディ・・・じゃない、シェリーも武器持ってた方が安全だけどねー」


一応ウルフキラーを装備しているが、ソフィアにとってはお飾りに見えるのだろう。


スキルキャンセルはその場で使用するスキルに反応する。

火薬で飛んでいく銃はスキルを使用できない状況ならとんでもない威力を発揮するだろう。


まぁ・・・乗り気にはならないが、手に入れたら使うかもしれないな。


「そうだね・・・スキルで対応できない時に持ってると便利かもね」


「うんうん!ね、このパフェすごく美味しいよ!1口あげようか!」


「・・・ふふ、じゃあ私のブラウニーと交換ね」


ビバ女子旅!


そういえば、いつの間にかソフィアとも普通に喋れている。


ソフィアは貴族の女子たちとは違う感じがする。


俺のことをスキルで判断していないような・・・。


・・・そんなわけないか。

ソフィアのタイプはエスロットみたいなムキムキな大人だし。

今は護衛対象かつ女の子として振舞っているから距離が近く感じるのだろう。


でも女の子とこうして食事するのも悪くない!

だって俺も大人の男だもん!!





宿屋に戻り、湯浴みをした。

化粧は取れたから明日自分でやり直さないとな。


とりあえず寝る前に化粧水付けておこう。


「あーさっぱりし・・・」

湯浴みから戻ってきたソフィアが入口で固まった。


「「・・・」」


・・・何故、お揃いのパジャマ。


って、あの縫い目は俺のハンドメイドか。

いつ縫ったんだ?


いや、いまはそんなことどうでもいい。


恋人でもないのにお揃いのパジャマ装備で部屋にいるなんて・・・衛兵に突き出される事案だ!



「シ、シェリーもお揃いのパジャマなんだね・・・パジャマパーティーみたいだねー・・・なんてね・・・」


ご、ごめん気まずいよね?!

フォローさせてごめんね!!


「う、うん。やっぱサイズピッタリだと着心地が違うよねー・・・」


・・・他に言うことがないのか?!俺!!

ソフィアとは話しやすくなったとはいえ、これはまずい!



でも・・・何だこの状況・・・。


女の子とお揃いのパジャマで2人っきり・・・。


ちょっとドキドキする。


・・・いや待て、冷静になれ俺!


ソフィアだって戦闘スキルじゃない男にドキドキされても迷惑だろ。


それに・・・シェリーが領主になったら、俺貴族じゃなくなるのかな・・・。


って、平民どころか、今奴隷だった!


非戦闘スキルで奴隷の俺・・・スンッ・・・。


「・・・寝よっか」

「え?!う、うん・・・」


ドキドキするだけムダだ。

どうせ結婚どころか恋もできずに一生を過ごすんだ・・・。


俺はモゾモゾとベッドに潜った。





翌朝、俺たちは商業ギルドに向かった。

まずは野菜を売って資金を得るためだ。

そのために高く売れそうなハーブ類をいくつか持ってきた。


「うーん。ホントは商業ギルドに所属してないと物は売っちゃダメなんだよね」

「だからうちで買い取って、仲介すればここで物が売れるんだけど」

「可愛いお嬢さん困ってたら助けるのが紳士だからね」


ワラワラとオッサンたちが群がってくる。


商業ギルドに所属してないと物は売れない。

スキル持ちが不正に労働させられていたり、市場を荒らすような生産をするスキル持ちが入り込まないため。


そして何より、品質の保持のためだ。


顔の見える生産者が作って安全と品質を保証している。


でもこのオッサンたち。

どうやら仲介を進んでやってくれるようだ。


女装って・・・女の子って・・・いい事あるんだな・・・。


「わーありがとー」

愛想だけ振りまいておこう。


あくまでも資金を得るために取った行動だ。

断じてこのまま女の子になってもいいかなーなんて、欠片も思ってないんだからね!!



「あと薬を作れる方を探しているのですが・・・」

「それなら隣だよ。おーい、パーニャさん!客だよ」


「・・・」



え?呼ばれても来ないだと・・・。


いつもと違うパターンに驚いてしまった。



隣の店を覗くと、ガラスでできた筒がいくつもあり、カラフルな色の水がコポコポと湧いていた。


不思議な雰囲気の店内に、不機嫌な顔でフードを被った女性がいた。


「あの、パーニャさんですか?薬の作成を頼みたいのですが・・・」

「・・・はぁ?」


うっわ。

態度悪い!


「チッ・・・男にチヤホヤされていいご身分ですねー」


おうおう、嫉妬か。

見苦しいぞ。


「粉薬をタブレットにして欲しいんです」

カウンターに粉々になったポジティブキノコの入った袋を置いた。


「・・・はぁ?これが粉薬?ただ粉にしただけで不純物多すぎ。水分含んでることすら気付かない素人が。タブレットって保存の為の添加物加えるから。ただ圧かければいいとか思ってんの?バカじゃないの?」


・・・早口で悪口言われた!!


でも単純に圧かければタブレットになる訳じゃないのか。

さすが商業ギルドに所属するだけはあるな。



「でしたら薬の・・・」

「店じまいだ。あっち行きな」

ポイッと袋を返された。


話さえ聞いてくれればいい人なのに!!



「全然話聞いてくれなかったねー」

「商業ギルド所属だけあって実力はありそうだ。できればここで薬の作成をして欲しかったんだけど・・・」

「あーそれなら大丈夫。とりあえず次行こー」


大丈夫?

まぁ時間が解決することもあるもんな。


ソフィアは切り替えが早いな。

俺も見習うとしよう。




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