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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第10章 アーステア大陸
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魔王軍

「ジェスカさん、動画これっすか?」

「それね、間違いなくベラルーラ国の返答動画よ」

ポチっとラースが画面を押す。


「これが今日きた用件よ」

ジェスカが腕を組んで画面を睨みつける。


一体何があったんだ。


ブーンと不快音のあと、青白い画面は映像を映し出した。



『・・・ベラルーラ国東部戦線から不審者情報。先日ベニチェア王国での魔王騒ぎを起こしたディートハルト・フェンタークがアーステア大陸アペリティフ地方に出現。

こちらが残滓(ざんし)です』


画面が切り替わり、俺が屋敷跡で祈りを捧げている様子が映し出された。



『「・・・こんな毒の沼で花も咲かない土地では眠れないでしょう・・・いつか、・・・化してこの土地・・・を取り戻します。どうか、安らかに・・・」』


残滓スキルで過去にあったことを掘り起こしているようだが、映像が乱れて所々欠けている。



・・・この時はお母様が眠っているなんて思ってもみなかったな。

あんな毒の沼にされてしまった俺たちの屋敷・・・。

握りしめた手に力が篭もる。



『添えられた花から測定不能な魔力が放たれ、映像が乱れていますが、明らかに我々に対する敵意を示しています。

先日の挑発行為のほか、領土を取り戻すと宣誓しています』




「・・・ふぁっ?!」

力が入りすぎて変な声が出てしまった。



え?!待って?!

測定不能な魔力?!敵意?!

俺あの時『いつか浄化して、土地に緑を取り戻す』って言ったんだよ!

どこが宣誓だよ!!



『この花からは押し止められぬ感情も渦巻いていると捜査関係者は述べています。

魔王が世界を脅かすまで時間がありません。

ベラルーラ国はベニチェア王国と協力し、魔王ディートハルト討伐を目指すものである』



「ほぁ?!」

おい待て!

その花の苛立ちはテオドールに向けてだから!

長年の心配事がそれかい!っていうインテグラのツッコミが込められてるだけだから!!


測定不能の魔力といい、連絡手段の花そんなにやばい代物だったのか。


どうやら俺の言葉も『あいつら焦土化して、土地を取り戻してやる』ってニュアンスになっているようだ。




「見ての通り、宣戦布告に取られてるわ。折角ベラルーラ国とは停戦したって言うのに。何してくれてるのかしらね」

「・・・誤解です」


あの花ノームの末裔じゃないと中身見れないんだったな。

やばい花とは知らずに供えたせいで騒ぎがでかくなってる・・・。


隠れ住んでるノームの末裔について勝手に話すわけにもいかないし・・・。





「これ以上の戦争は避けたいのに・・・困ったわ」

「マダムは戦おうとは思わないのですか?」

「あら?弱腰とでも言いたいのかしら?非戦闘スキルである貴方の意見を聞こうじゃない」


実際に戦うのは戦闘スキルだ。

非戦闘スキルは逃げるか巻き込まれて死ぬ。

昔なら奴隷として捕まることもあったそうだ。


それを踏まえて発言しろということだろう。



ようやく終わった戦争を俺が引き金を引きかけている。

俺が不用意な行動を取ったから・・・。


・・・いや。

何が終わった戦争だ。

向こうが勝手に攻めてきて、奪い取っていっただけじゃないか。

俺の領土で!花を供えた程度で!敵意だ戦争だと付け込まれる必要はない!!




「確かに俺は戦えません。ですが、貴族としてやるべき事があります。

主都の貴族たちは条約を無視してアペリティフを敵国へ渡しました。

なんの為の国です。

なんの為の戦闘スキルですか!

剣となり盾となるのではないのですか?!」


貴族っぽさが抜けた口調になってしまったがしょうがない。

アペリティフの現状は、アペリティフを差し出した主都の貴族が悪いんだ。



そして無駄に誤解や晒し行為をするベラルーラ国が1番悪い!




「はぁ・・・無駄に強いミハイルがいるせいで敗戦を受け入れられない貴族もいるわ。シェリーちゃんを中心にして攻撃を仕掛けるべきだって言った貴族もね。

諦めさせるためにシェリーちゃんは行方不明ってことになってるし、ミハイルたちも生存名簿に名前を残させなかったわ」


どうりでドル爺がくれた調査報告書に名前がないはずだ。


「すぐにバレちゃったけどね。

だからシェリーちゃんの後を追えるようミハイルを追い出したの。

剣となり盾となる・・・ね。

あの時アペリティフを含む3つの領土が同時に攻め込まれたわ。

2つの領土がどうなったかご存知?

・・・戦闘に参加した者はほとんどが殺されたわ」


ぐっとジェスカの手に力が籠る。

それだけベラルーラ軍の戦闘スキルが強かったのだろう。


戦闘スキル持ちは1人で国同士のバランスを崩壊させてしまう者もいる。

そういう存在が育ってしまったのか、他国から雇ったのか。

あの戦争で3ヶ所同時に攻めて2ヶ所落とせるだけの戦力だ。

それがここ1ヶ所に集中されてしまったら・・・。


「今のベラルーラ軍は強いわ。このまま戦って、みんなで心中でもする気かしら?」


「それは・・・」

無策に戦争を仕掛けること、戦争を受けることは、お父様たちを戦場に引きずり出すということだ。

そんなことはさせたくない・・・。


ジェスカがここに来た目的は俺の首を取りに来たか、俺を追放するためだろう。

・・・できればこの程度で殺されたくないから追放にして欲しいな。





俺が起こした問題だから俺の処分は仕方ない。

でも1つ、ジェスカには確認しておきたい。


「戦争が嫌なら、戦争回避のために俺の首を差し出すことも仕方ないでしょう。

でも俺の首だけで済むうちはいい。

あれもこれもと要求をされた時、マダムは立ち向かう気があるのですか?

それだけ殺されていながら、次々に犠牲者を差し出すのですか?」


戦争は嫌だと何でも差し出すのなら、条約を無視してアペリティフを差し出した連中と同じだ。


貴族として、民を守る気があるのか?



「私はここで生きる人間の未来を選んだの。

アペリティフには悪いけど、戦争を長引かせるより被害を少なくすることができたわ。

もちろん貴方の言うように、これ以上あちらに差し出すものは何も無い。

・・・ミハイルたちを無駄に戦うための剣にはさせない。

私が盾になるわ。

これが私の誇りよ」


ジェスカの赤い目が真っ直ぐに俺を見る。

貴族として覚悟した上での行動なんだろう。



私が盾になる、か。

俺も使ってみたいが、残念ながら盾にすらならない邪魔者だもんな・・・。


せっかく帰ってきたが、また旅立つしかないか・・・。



「・・・戦闘に参加できぬ身ですが、貴族としての義務を果たー」

「貴方の首は要らないからさっさと逃げー」

「ふん。ディーの言っていることがわからんとはな」


俺の言葉をジェスカが遮り、ジェスカの言葉をお父様か遮った。



なんで人の言葉を最後まで聞けない人ばかりなの?



俺はお父様を見上げた。

・・・なんでニヤニヤ笑ってるの?!




「被害を少なくすることができただと?

何を馬鹿なことを。

失うかもしれなかった物より、実際に失った物を見てみろ。

土地を差し出し、死んだ者を冒涜した。

お前の行動は売国奴そのものだ!」



お父様!?

俺そんなこと言ってないよ!!


俺一人で背負えるなら背負って出ていく。

元々魔王だとか王国の騒動は俺の責任だからだ。

そんなことでこれから更に失われる命があるかもしれないから、ジェスカは俺を追い出しにきたんだ。

上に立つ者として判断したんだ。

貴族がそんな感情的に動くわけには・・・。



「私が・・・売国奴・・・」



「・・・え?」

ジェスカがゆらりと立ち上がる


「兄が・・・姉たちが無能と捨てられていく中で、私がどんな思いで生き抜いてきたか・・・それを・・・西の魔女と呼ばれたこの私を・・・売国奴ですって?!」



ブチ切れてたーーー!!



なんで?!

「売国奴」が地雷なの?!



ジェスカが立ち上がり、真っ赤な髪をかき上げる。

演劇の男役のような凛々しさがパンツスーツに良く似合う。

女の人って戦闘態勢に入る時髪触るよね・・・って!そうじゃない!!



お父様助け・・・てくれる気ない!

ラースたちと仲良くサムズアップしてる!



「いい度胸じゃない!ディートハルト!

好き勝手言うバカどもにきっちり言い返しておやり!!ミハイル!【レック】はある?!」

「レックならここにあるっすよー。前にベラルーラの城の中で見つけてきたっす!」

「でかしたラース。よし、早速撮るか!」

おー!と掛け声を上げている。



・・・もう流されよう。

良くて追放の流れだったんだ。



ここで誤解を解いて、戦争の流れを断ち切ろう。

無能(アナリーゼ)が俺を魔王って誤認したこととか・・・いや、これは間違いじゃないか。

間違いとすれば俺だけじゃなくてテオドールも合わせて魔王ドゥールバルトだってことくらいだが、今それを言うと混乱が起きる。


えーと、空間作成のアイテムは俺ので、テオドールは攫ってないし、男たちを洗脳もしてないって訂正しないとな。

その上でベラルーラ国に俺は無害な人間だって訴えよう。




「まずそのレックについて説明してほしい」

ラースが丸いパソに何かぶっ刺して雪だるまのようにしている。

あれで撮影するのか?

盗品だってことしかわからん。


「ユグドラシルに上げる動画を撮るアイテムっすよ。よし!領主さまー、撮るよー!」

どうやら説明はしてくれないらしい。

俺の存在を脇に置いたまま、ソファーの位置をずらして撮影の準備をしている。




レックの上にぶわっと赤色の丸い魔法陣が浮かぶ。



「・・・我が名はミハイル・アペリティフ。かつて首狩りのフェンタークと呼ばれた者だ」

あ、もう撮ってるのか。

お父様がソファでふんぞり返って喋り始めた。


ユグドラシルに上げたら削除できないそうだからどんな内容にするかちゃんと話し合った方がいいと思うが・・・すでに手遅れか。



「妻を得て、領土を得て・・・そして息子を得た。もはや争いは不要と、首狩りの名と共にフェンタークの名は捨てたのだ」

お父様・・・初耳です。


「だが、現状を見ろ。隣国からの侵攻により妻は命を落とし、尽くした国には領土を和平の手土産にされた。

挙句、息子は魔王として追われる身だと?

なぁ諸君、私の我慢を試すのはさぞかし楽しかっただろうなぁ?」


はははっと笑うお父様、目がやばい。

怖すぎる。


スルッと隣にジェスカが並ぶ。


「首狩りのフェンターク、西の魔女ジェスカは今よりディートハルト・・・いえ魔王ドゥールバルトと行動を共にするわ。

手始めに相手になるのはどこかしら?

ベニチェア王国?ベラルーラ国?それともまだ見ぬ勇者かしら?」


あ、あれ?!

魔王、暴れませんよ?

っていうか、ジェスカめちゃくちゃ攻撃的な物言いだよ?!

そうじゃないんだって!

俺はか弱いミツバチなの!!



「坊ちゃんも一言かましてやるといい」

「あ、いいっすね」

ボソボソとラースとエスロットが悪巧みをする子供のような目で俺を見る。


かますってなに?!

俺は慌ててフードを被った。


レックがこちらに向けられる。



・・・ここはやるしかない!



「・・・ふっ、今回はあいさつ程度だ。冒険者よ!最果ての地ロンダルキアにて待つ!」

どこかで聞いたセリフだがしょうがない。


アペリティフに来るな!

ロンダルキアに行け!!

そして待ってるのは壁転移の即死トラップだ!!!




ピョコっと足元に花が咲く。

同時に、レックにノイズが混ざる。


「あ!壊れた!」

「あ!連絡きた!」


どうやら魔力たっぷりの花はレックには耐えられなかったようだ。

近付いただけで壊れるとは。

繊細なマジックアイテムなんだな。



「とりあえず撮れた分だけ上げたいけど・・・うーん画面戻らないっす」

ピコピコとラースが画面を押している。


撮り直しだな。

あんな好戦的な物言いじゃなくて、もっと穏便に済むように考えないと。



テオドールが花を拾い上げ、顔を近づける。

「んーと・・・ラザニールってオリビア姫の従兄弟の男の子だって。

なんかメルリオーネも追い出されちゃって、みんな洗脳されて、アナリーゼが好き勝手やってるってー。

あ!女王も姫さまも生きてるって!」


「そうか生きて・・・いや、洗脳?!従兄弟って!それ子供じゃないか!

なんでアナリーゼみたいなおばさんに!!

アーステア大陸に轟く無能がよくここまで引っ掻き回したよな、まったく!」


みんな洗脳されたって?めちゃくちゃだ!

ふざけんなよアナリーゼ!


まさか女王たち追い出して次期国王の妃に自分ねじ込んだのか?

ラザニール少年が不憫すぎる!!



「あ、坊ちゃん、壊れたの画面だけみたいっす!」

「え?」

「音声生きてるっす。今の分まで録画完了っす」

「え?」


「んじゃ早速、あっぷあっぷー」

何そのうぇーいな呪文。


ラースがポチっと画面を押すと、赤い魔法陣が空に舞い上がって消えた。


「ディー。これを付けなさい。すぐに」

「え?」


お父様が俺の右手中指に金色の指輪を嵌めた。

「これなんー」

ピコーン!解呪しました。

ピコーン!解呪しました。



「・・・は?」

頭の中に聞き覚えのあるピコピコが響く。


「やはりな。呪いスキル持ちは名前だけで呪うこともある。予備として持っていてよかった。それを付けておきなさい」

「お!坊ちゃんみんなとお揃いっすね」

見れば自警団は全員金色の指輪を付けている。



・・・恨まれる自覚があるのかよ!!



「確かにおばさんはダメだったかしらね。おばさんだって少年と結婚することあるもの」


待って、それ魔王関係ない!!


どうやら魔王として世界の敵になる前に、女の敵になったようだ。


「俺もう外歩けない・・・」

「そうだわ。変装用にウィッグをあげる」

ジェスカは鞄から真っ赤なウィッグを取り出した。


ウィッグ・・・それはカツラ。

主にファッションとして用いられる。



「貴族の集まりだと女性は長い髪をまとめ上げて!って古いドレスコードの時代もあったのよ。ほら、顔貸しなさい」


俺はウィッグを被せられ、簡単に化粧をされた。


どう見ても女性に変身中だよね?

・・・もうどうにでもしろよ。



「はい完成。・・・あら、マーサにそっくりね」

「知っているのですか?」

「知ってるも何も。私の妹だもの」

「え?!それじー」

「マーサ!!」

どーーーん!!とお父様が俺に抱きついた。


「おお!なんてことだ、マーサにそっくりだ!よく顔を見せておくれ!」

「お、お父様・・・」

お父様、近い!!

あと涙ぐまないで!!


「坊ちゃん似てる!なんならシェリーちゃんより似てる!」

「男の子は女親に似るって聞いたことあるけど、ここまで似るか!すごいな!」

ワラワラと周りにいた自警団たちが寄ってくる。



「それじゃ私は帰るから。ミスリルの件、考えておいてね、ディー君」

ヒラヒラと手を振ってジェスカがテントを出ていった。



いや、待て!

猫にマタタビ食らわせたような自警団置いて帰るな!!

助けて!!!




誤解まみれの動画により、俺は魔王としてデビューを果たした。

魔王軍に首狩りと魔女が加わった。

そして俺に親戚ができた。

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