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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第10章 アーステア大陸
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山越え谷越え

俺たちは主都に向かって進む。

イルミティア連合国は小国や強い領地が集まってできた国だ。

王様はいないが議員制度があり、大まかに東西南北に区切られた4つから代表を選出している。

アペリティフ領は1番西側。

山越えして他の西側陣営を列車で横断しないと主都まで辿り着けない。



「・・・馬、出そう」

「パパさま大丈夫?」


屋敷の現状が見れて少し緊張が解けてしまったんだ。

震えは収まったが、なんだかどっと疲れが感じられる。




・・・パチン!


かっこいい指パッチンでルーイたちを召喚する。

「またポーズ決めてるー。余裕あるんじゃないかー」

「何を言う。ここからかなり歩くんだ。体力は温存するべきだろ」


「「メェ」」


・・・また呼んでないのにウールン夫婦が当然のように出てきた。

「ウールン、一緒に歩くの?」

「メェ!」

わーい!とヨルヨンが頭を撫でている。


腕輪の中がどんな空間なのか、俺は入れないからわからないが、入れっぱなしというのも可哀想だろう。

「はぐれて迷子になるなよ」

「「メェ!」」





屋敷跡から少し離れると緑豊かな道が戻ってきた。

「こんなに木が茂ってると犬が来ても気付けないねー」

「犬じゃなくて狼な。この土地に大型の獣はいないんだ。なんでも獣が山を避けているんだとか」

「へーふしぎー」

確かに不思議だ。

でもお陰で獣避けを節約できる。






道端に小さな白い花が咲いていて、蝶が舞っている。

ベニチェアで大騒ぎが起きてから1時間も経っていない。

心が洗われるようだ。


「のどかだねー」

「おとうさま!鳥が飛んでます!」


くきゅ~~~・・・。


「パパさま、お腹空きました・・・」

ヨルヨンが少し恥ずかしそうに頬を染めている。

さっきの気遣いや、恥ずかしそうにする様子など少し感情面が豊かになったようだ。

背は伸びていないが、中身の成長が早い気がする。

ガーディアンだからか?

いや、うちの子が優秀だから早いんだろう。


「パパさま?」

「あ、そうだな。そろそろご飯食べよう」


俺たちは木陰に入り、携帯食糧を開けた。


「おお、伝統的な冒険食」

硬いパンに干し肉とチーズを乗せる。

冒険者が愛した食事。

ちょっと感動だ。


ただ違うのはパンがくるみ入りで柔らかく、肉も干し肉と言うよりローストビーフだ。

停止付与の使い捨ての箱が流通したお陰だろう。

昔ながらの食事が色々グレードアップしていた。


冒険と言うより、ピクニックのような状況だな。



「あ、白ワインがあるんだった」

牢獄でベーグルの兄貴に貰ったワインだ。

さすがにあの場で1本開けられなかったから、半分近く残っている。


「ヨルヨンはジュースだな」

「はい!」

俺たちの携帯食糧は水が付いていたが、なぜかヨルヨンの携帯食糧にだけオレンジジュースが付いていた。

こういう差別化は頂けないぜ、魔王じっじ



「とりあえず乾杯するか・・・あぁ、最近流行ってる乾杯でやるか」

ホール大陸の酒場で若い子がやっていたやつだ。


「どうやるの?」

「掛け声に合わせてグラスを上、下、真ん中にして、乾杯するんだ」

「面白そうだね」

「ヨルもやる!」



「それじゃ・・・志は高く!愛情は深く!友情は等しく!カンパーイ!」

「「カンパーイ!」」


今の俺たちにピッタリな掛け声と共に、白ワインを飲み干した。



冒険食は1口食べると、肉汁と胡椒が口いっぱいに広がった。

刺激が強い味付けだが、チーズのまろやかさによく合っている。

くるみのコリコリした食感も食べてて飽きない。

軽食のようだが、パンがもっちりしていて腹持ちがいい。

「少し野菜が足りないけどな」

「あーわかるー。船旅でハンバーガーあったでしょ。あれ勇者が『野菜不足は嫌!』って文句言ったら、『これが野菜も取れる料理だ!』って出したのが始まりなんだってー」

お父様に聞いたよーと喋りながら食べている。

「あの挟まってたトマトとレタスで・・・ねぇ」

誰がそんな横着な料理を出したんだ。

そのせいで港町でスムージーが発展したんだろうな。




食事を終え、再びルーイに跨る。

ウールン夫婦も周りの草を食んだり、ゴツゴツした岩の上を楽しそうに歩いている。

「まるでデートだな」

「ウールン、楽しい?」

「「メェ!」」

ウールンの嫁も楽しいようだ。

あの牧場から連れ出してよかった。




田舎道は徐々に山道へと変わっていった。

「ほら、ここがウルミ山だ。この山道を通った向こうが隣の領土【グリーティス】だ。中央行きの駅があるだけの辺鄙な所だけどな」

それでも駅すらないアペリティフよりは発展した都会だ。


「随分と緑豊かな山だね」

冬が迫っているのに、まるで夏のような葉が茂っている。

「アペリティフの特徴だ。風をこの山が受け止めることで厄災から守り、大地に恵みを運んでくれるんだ」

「パパさま、山の上まで行くの?」

「いや、山と山の間が崖になっていてそこに道があるんだ。登っていたらルーイたちが疲れてしまうからね」



緑豊かな道が突然開け、岩が剥き出しの絶壁が現れた。

落石が起きたら逃げ場も隠れる場所もない怖い道だ。

最短ルートとはいえ、できればもっと安全な道を作っておいて欲しかった。



「あぁ、ここだったな・・・。逃げるときに地震があったんだ。ここから落ちて、気づいたらスタータの町だった」

絶壁にできた道を歩きながら、遥か下に流れる川を見た。

今は秋の終わりだからか、あの日のような濁流はなく、清らかな水がそよそよと流れていた。

冬が終わる頃、雪解け水で濁流となるはずだ。



「ずいぶん高いところから落ちたんだねー・・・ん?」

テオドールが馬から降りて崖の下を覗いている。

「どうした?」

「んー?あそこ何かあるよー」


テオの指さす先は谷底の中州。

どれだけ視力がいいのか、まっすぐ指さす先になにがあるか俺には見えない。

「テオ、俺には石だらけでどれがどれなのかわからないぞ」

「あ、そっか。僕には魔素が見えるから。いったん下に降りてみよう」

「降りる?」

「そう!えい!」

ゴゴゴゴッと絶壁に階段が出現する。

中洲までは橋もできていて、観光スポットのような豪華さがある。

雪解け水で流されてしまうのが勿体ないほどだ。



ルーイたちを一旦腕輪にしまい、階段を降りた。


「わ―珍しい。何でこんなところに落ちてるんだろ?」

中州の石を拾い上げる。

何の変哲もない白い石だ。


「で、それは何なんだ?」

「【不思議な鉱石】だよー。ダンジョン作りたいって言ったらこれが無いと作れないって言われたんだー」

「ダンジョンの元になるのか」

ダンジョンの元になるなら『ダンジョン作成の鉱石』とか名付ければいいのに。

何が不思議なんだろう。



「これはねー相当深いところにしか落ちてなくって、お父様でも潜るのがやっとな地層に埋まってるんだ」

「へー。なんでそんなものがここに?」

「んんー・・・わかんない!」

まぁ秋に水が引かなければここは濁流の渓谷だ。誰も探しには来なかったのだろう。


俺たちは階段を昇って再び山道を歩き始めた。





「あー!見えてきたねーあれが隣のグリーティス?」

山道が終わるころ、少し高くなった斜面から領土の境界がみえた。

「・・・いや、隠れろ。あれはベラルーラの軍隊だ」

ベラルーラの青い旗が翻っている。

いくつもの簡素な建物や土色のテントが並んでいた。



「丁度あそこまでが領土として取られたようだな」

境界を示すように無数の杭に有刺鉄線が巻き付けられている。

「ベラルーラの軍隊は山に拠点を作らなかったんだねー」

「まぁ、今通ってきた道を見ればわかるが、拠点を作ったら食糧運搬や攻められた時の逃げ道とか、色々不便だからな」

そのお陰でここまで見つからずに来られたんだ。



だが、ここからどうしよう。



「どうやって通ろうか。穴掘ってくぐっちゃう?」

「は?そんなことできるのか?」

モグラみたいに穴を掘って下を通過するだと?



「まかせてよー僕これでもダンジョンリフォームは天才なんだよ。トンネル作りくらい簡単だよ」

そういうとテオは地面に潜っていった。



「・・・テオ、おい、テオー・・・」

騒いだら見つかる気がするから小声で呼びかけるが、返事がない。



・・・できるだけ深く掘ってくれ!

途中で上がって敵地のど真ん中に出ちゃうとか、浅すぎて崩落するとか、絶対なしだぞ!

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