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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第9章 ベニチェア王国
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真っ白な願い

メルリオーネを先頭に牢獄を進む。

進むにつれて光る石をセットしたランタンが壁からなくなっていく。


「暗い・・・」

「よし、待ってろ」

ヨルヨンが怖がっている。

それに転んで音を立ててはいけないからな。

俺は鞄から光る石を取り出した。

ロンダルキアで拾った青白く光る水晶のような石だ。


普通に持ってると手の影が邪魔だな。

「テオ、それ外してくれ」

「これ?」

テオドールが壁から外したのは、光る石の入っていない古いランタン。

細部に彫り物がされてて、意外にいいデザインだ。

窪みに石を嵌めると、ぼんやりと周りを照らした。



歩けば歩くほど、どんどん埃っぽさが増していき、蜘蛛の巣も張っている。


・・・中級ダンジョンの墓地より墓場っぽさがあるな。

青白い光がおどろおどろしい雰囲気に拍車をかけている。



「ここだ」


メルリオーネが牢屋の中に入り、壁を押す。

ずずず・・・と石臼をする様な音と共に、壁の一部が開いていった。

「この抜け道を使えば駅のホームに出られる」

埃まみれの使われた形跡のない細い道を通る。



しばらく進むと傾斜のついた坂の上、蓋をするような扉が見えた。

コンコン・・・。

ノックすると扉が開いた。


「お待ちしていました。みなさん、こちらへ」

ベーグルの兄貴の誘導で扉から出る。


そこはラングバック駅のど真ん中。


止めてあった貨物列車の扉を開け、中に入り込んだ。




始発まであと1時間ほどだ。

じきに人がホームになだれ込んでくるだろう。

「ヨルヨン、今のうちにゆっくり休みなさい」

昼間は初めてのダンジョンで、夜は牢獄の移動。

多分疲れているはずだ。

「んーヨルも見張る・・・」

眠そうに目をこすっている。


「休める時に休まないと体が持たないよ」

まだ日が登らない時間だ。

メルリオーネたちが見張りをしているし、ヨルヨンは休んでいてもいいだろう。

ポンポンと頭を撫で、ふわりと毛布をかけた。



日が昇る前の静かな明るさ。

いつも朝練に走っていた空を思い出すな・・・。

俺は鞄から白いハンカチを取り出し、白い糸で刺繍をしていく。


見渡す限りの草原、畑、遠くに山。

何も無いド田舎だと思っていた故郷アペリティフ。


優しい両親と妹。

自警団のみんな。

小さな花をいくつも刺繍し、ハンカチを囲っていくいく。


この花が一つも欠けることのないように皆の無事を願う。

どうか・・・会えますように。



真っ白な布に、真っ白な刺繍。

いつにも増してキラキラと光るような出来栄えになった。

・・・普段使いにはちょっと豪勢な作りだな。

俺はハンカチを鞄に戻した。



「そろそろ時間だ。メル、後は頼むぞ」

「ああ、この国の連中に追い回されぬよう手配してやる・・・む?あれは・・・」



「お待ちください」



駅の横から女の子の声がした。

フードを深くかぶるその姿は誰なのかわからなかったが、その声に聞き覚えがあった。

「・・・姫さまか?」

「んぅ・・・姫さま?」

眠そうに目を擦りながらヨルヨンが起きた。



「ごめんなさい。どうしてもお別れの挨拶をしたくて・・・」

フードを被ったまま、オリビアが貨物列車に近づいてきた。



「昨日は母があのようなことを言ってしまいごめんなさい。隣国に行くのは国のためだもの、私は納得してるの。でも男の人と恋したことも、デートしたこともないのよ。最後の思い出にってダンジョン攻略に行ったのに、母は私の願いを勘違いしたみたい」

「・・・姫さまはそれでいいのか?」

幸せになって欲しいという母の願いは子を持つ親なら当然のことだ。

もちろん、女王としては失格だと思うが。


「勇者アリスと同じ血が流れているもの。それに私、この国が好きなの。私がいなくなったら従兄弟の男の子が王位を継ぐわ」

姫としての責任を果たそうとしているのはわかるが、まだこんなに幼いんだ。

夢見る乙女の最初で最後かもしれないデートが、ダンジョン攻略だなんて・・・。


不憫だ。


俺の視線に気付いたのか、オリビアがふふっと笑う。

「あら、憐れんではならないのよ。神様はその人に相応しいスキルを託すの。私には私のーー」



「ここにおられましたか」



影の塊が空から降りそそぐ。

影が四散すると、そこにはコートの男たちが4人立っていた。

「我らはカタラーゼ国の使者です。ヨルヨン様がこちらにいらっしゃるそうですね」

紳士風な男がニコニコとこちらを見ている・・・が、目が笑っていない。

「血の匂いがする・・・」

ヨルヨンが俺の服を掴んで小さく囁いた。


「ほら、いましたわ!あいつです!」

アナリーゼだ!

なんでこんな不穏な集団と一緒にいるんだ。

・・・違和感がない!



「不躾なのはご了承ください、確認させていただきます。・・・おい」

後ろに控えていた筋肉質な男が俺たちを上から下まで見る

「驚きです。背の高いフードの2人と荷台の子供から魔石の反応があります」

こいつ!

魔力が高い人間は魔石を感知できるんだったな。



「なんと3人も!ベニチェアは宝玉の姫を隠していたのか。・・・どちらにせよ、確保です。行きなさい」


「はっ!」

ぐわっと筋肉質な男がヨルヨン目掛けて走り寄ってくる。


バキッ!!


「させぬぞ」

メルリオーネが水を体の周りに纏いながら降り立った。


バッとベーグルの兄貴と姫さまも飛び出していく。

「使者がこのような態度、許されるものではないぞ!」

「敗戦国の分際で口を開くな!」

どうやら話し合いにはならないらしい。



メルリオーネと筋肉質の男が水と拳をぶつけ合いながら浮き上がる。

ベーグルの兄貴が跳ねるように宙を舞い、相手が矢のように攻め込んでくるのを、姫さまが石柱を出して迎え撃つ。


これが戦闘スキル・・・。


魔法というより殴り合いだが、初めて見る戦闘スキルのガチ喧嘩。

アガるわ・・・。


「少女よりあの男よ!空間作成のマジックアイテムを持ってるわ!」

アナリーゼ!

この女、バラシやがった。

どんだけ俺のこと嫌いなの!



「ほぅ・・・それはそれは」

紳士風な男の視線が俺に刺さる。

・・・スっと荷台に顔を引っこめた。


いや、逃げたわけじゃない。


俺は腰のあみぐるみを外し、スキルキャンセルのハンカチで包んで掲げる。

これなら鑑定持ちがいてもバレないはず!


「待て。もし欲しいなら、これはくれてやる。その代わり俺たちを見逃しー」

「バカが」

ピコーン!とスキルキャンセルか反応する。


え?!

問答無用なの?!


「チッ・・・スキルキャンセルか。面倒なものを」

懐から銃を取り出して構える。

「ディー君!下がって!」


ドンッ!ドンッ!


俺の前に立つトライドットが音に合わせてふらついた・・・。


「ドット兄様・・・」

テオドールが目を見開いて佇む。


「・・・ディー君、下がっていてください!」

「ほぉ!これで死なないとは!素晴らしい。魔石を使いこなしているようですね」

気味の悪い目付きでトライドットを見ている。



俺はすぐ荷台に頭を引っこめた。

これ以上トライドットに盾になってもらう訳にはいかない。

アガるとか言って状況が見えてなかった。

これは殺し合いなんだ。


「待てよ!姫を嫁にもらって丸く収めるんだろ?!」

「は?姫を嫁に貰うようなもの、と言ったのだ。まさかあのように魔力も魔石もない姫を嫁に欲しがるとでも思ったか?」


・・・敵国の姫を嫁に貰うようなものって、確か絶対無理って時に使うことわざだよな。


「それじゃあ平和条約って話は・・・」

「そんなものは存在しない」


誰だ!こんな杜撰な外交交渉した阿呆は!!

・・・アナリーゼだ!!


「全く。先日誤解は解いたはずだが?」

紳士がアナリーゼに呆れを含んだ視線を向ける。

「なによ!別のを連れてきたんだから一々言わないでよ!あれが本物の宝玉の姫なら問題ないじゃない!」

こいつ・・・よく分からないけど、こいつが悪い!




紳士が再び銃を構えながら俺とヨルヨンのいる荷台に突っ込んできた。


「テオ!」

「う、うん!えい!」

テオドールとトライドットが土属性魔法を繰り出すが、紳士の体から生えた影が跳躍を補助していて捕まえられない。


それに何故か作った石柱が小さい。

中級ダンジョンで出したオリビアの石柱より威力がないようだ。


ーーーこの国の地下はスキルキャンセルがばらまかれているので、地下に逃げることができないのです。


ここに来た時のトライドットの言葉を思い出した。

スキルキャンセルで土属性魔法が十分に使えてないのか!



「手間取らせないでください」

「うわっ」

あっという間に荷台に乗り込み、俺の手からスキルキャンセルのハンカチごとあみぐるみを叩き落とす。

しゅるしゅると俺とヨルヨンに影が巻き付いた。


「きゃあ!」

「ヨルヨン!」


「動くな。少女に傷をつけるつもりは無いが、この男は違うぞ?」

俺の頭に銃を突きつける。


「くっ・・・」

紳士から影が伸び、テオドールとトライドットを縛り上げた。


「おとうさま!おにいさま!」

「さぁ、宝玉の姫。我が国においでください。その体で我が国の技術を向上させましょう」

するりとヨルヨンの頬を撫でる。



「おいやめろ!」

うちの子に汚い手で触るんじゃねぇ!



じわっとヨルヨンの目に涙が浮かぶ。

泣かせない!

頼りになるパパとして!



「・・・じっじぃ・・・」

うわぁぁと泣き出してしまった。



「・・・許さん」

ヨルヨンを泣かせやがって・・・。


そして俺も泣きたいよ!!

何でじっじなの?!

そこはパパさまにして欲しかった!!


「絶対に許さん!」

ヨルヨンに怖い思いをさせた事!

俺の自尊心を傷付けた事!

絶対に償わせてやる!!



ぶわっと俺の周りに魔法陣が展開した。

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