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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第9章 ベニチェア王国
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ダニ退治

「お帰りなさいませ。女王陛下が謁見の間にてお待ちです」


城のエントランスに戻るとアナリーゼが呼びに来た。

なにか仕掛けてくるかと身構えたが、俺を完全無視してテオドールを誘導している。

・・・やっと諦めてくれたか?



もう夕方になろうという時間。

窓から見える空が黄色くなり始めていた。


謁見の間に呼ばれるって事は、テオドールの王族復帰についてだろう。

そんな揉め事を夕方からやっていいのだろうか。

まさか言い渡して終わりとでも思っているのか?


古い血筋が国に戻るんだ。

すぐに王様にされる訳じゃないが、もう1人の王位継承者が従兄弟の少年ってことはテオドールの継承順位は低くない。

国民に知らせるのだってそれなりに格調高い式典が必要だろうし、晩餐会だってやるだろう。

重鎮たちとの会合なんてのもあるかな。

少なくとも今日だけで終わらない量の手続きがあるはず。

夜中までかかるのかな。

・・・城って残業手当てとか、あるのだろうか。


関係ないことまで考えているうちに、謁見の間へ続く大きな扉の前に立たされた。



あ、俺たちダンジョン帰りだけど、このままの服装でいいのかな?!


思わず隣を見るが、貴族2人と天使のようなお嬢様しかいなかった。

うん、大丈夫だ。




大きな扉を開け、その中央の真っ赤な絨毯を歩いていく。

豪華なシャンデリアと煌びやかな装飾がされた空間。

さすが歴史ある王国というだけはある。

ずらりと並んだ重鎮たちの奥、1段高い所に女王が座っていた。



俺たちは前に進み出ると、跪いて一礼をした。

事前に打ち合わせをしていなかったので、ヨルヨンが慌ててしまった。

くっ・・・凡ミスだ・・・。


ヨルヨンは慌てながらも、スカートの端をつまんでお辞儀をした。

オリビアが出会った時にやった挨拶、「カーテシー」と同じ動作だ。

うちの子、順応性まで高いなんて!



「おかえりなさい。先ほどテオドール様の王族復帰について審議が終わりました」

俺が感動に震えていると、女王がよく通る声で喋りだした。


終わったから即通達って・・・あとのこと考えてねぇな、これ。

歴史ある王国ってもっと式典に力入れてると思ったけど違うんだな。




「テオドール様、前に」

テオドールが1歩前に出る。


「わたくし、マーベル・グルド・ファミリアはテオドール・ノーブル・ロットの王族復帰を言い渡します。


―――そして、我が娘オリビアと結婚しこの国を支えることを願います」



・・・は?結婚だと?



「何をおっしゃっているのです陛下!」

ざわっと重鎮たちが動揺する。

「娘を・・・あのような陰険な国にやるなど、やはり間違っているのです!」

女王は祈るように手を組み、叫んだ。


「この条約締結までにどれだけの血が流れたかお忘れですか!」

「そうですわ!国を再び戦火にさらすというのですか!」

「こんなのは効力がない!いくら女王陛下と言えど個人の発言はお控え願いたい!」

国事録に記入するな!削除だ!と騒いでいる。



「条約について考えていないわけではありません。娘とテオドール様が結婚すれば


ーーーヨルヨン様もこの国の姫としてお招きできますよね」



しん・・・と静まり返った。



・・・何を言っているんだこいつは。


周りの重鎮が止めるのを振り切り喚いたと思えば・・・。


つまり、テオドールを婿にする、ヨルヨンを嫁に出すだと?


ふざけるな!




「すでに仲介省への伝達は私が行いました。明日にも使者がこの城を訪れるでしょう」

「なんてことだ・・・」

重鎮たちが愕然としている。



どうやら女王単独の暴走らしい。

無駄に手際がいいからすぐに逃げないと・・・。



コソッとテオドールの後ろに回る。

「テオ、魔王の覇気出せるか?」

「うん。・・・何するの?」

「とっとと出ていくための一芝居だ・・・」

王族復帰は受けてやったんだ。

もうこの国に用はない。



「明日にも使者が来るだと?!そんなバカな!」

「このような幼子では・・・」

いまだにガヤガヤと重鎮たちは騒いでいる。



「ーーー全くもってナンセンスだ」



ひやっとした侮蔑を含む怒気がテオドールから立ち上る。

「この私に、敗北した国に留まり屈辱を受けよと言うつもりか」

よしよし。

魔王様っぽいぞ。


「なっなぜ敗戦を知っているのですか!」

あ、しまった。

国民にバラさないって密約してたんだっけ。


「挙句、我が娘を敵国に差し出すだと。話にならないな」


「ち、違うのです。これは我が国の優位になる婚姻で・・・」

「そうです!差し出すなどと、そんなつもりは・・・」

わぁ・・・見苦しい。

あとは、このままお怒りモードで外に飛び出すぞ・・・。




じりっと足を引いた、その時だった。


「はぁ!」

「うわっ!」

俺は床に倒れ込み、頭を押さえつけられた。


誰だよ!

酷いことしないで!

「え?!ディー!」

「お下がりくださいテオドール様。女王陛下、こやつが裏でテオドール様を操っていたようです」

「なっ!メル!」

メル?!

あの胸元デラックスか!


何とか首を捻って後ろを向く。

・・・下乳しか見えねぇ!!


「誰も近寄ってはならない。こやつの始末は私が行う。よいな」

ひょいっと首元を掴まれ、立たされる。


なんで?!トライドットの友達じゃないの?!

裏切ったのか?


顔を上げた時、アナリーゼがニヤニヤと笑っているのが目に入った。

その顔、腹立つわ!

まさか・・・こいつが仕組んだのか?


「パパさま!」

「ヨルヨン、テオといなさい。いいね」

すっとトライドットが前に出る。

助けて!


「その者はテオドール様の所有物だ。処分する際は私も同行する。よいな」


よかないわ!!


俺は引き摺られるように謁見の間のをあとにした。





「はぁ・・・」

牢獄まで歴史を感じるような造りは要らないんだけどな。

ちゃんと掃除がされていない牢獄は埃が溜まり、ジメジメと湿気っぽい。


夏から秋にかけてはダニの繁殖期だったな・・・。

いや、確か春から夏にかけて増える種類がいて、それを食べるダニが夏から秋に増えて・・・。


もう!気持ち悪い!

毎日こまめに掃除しておけよ!


あの仮眠ベッドなんて絶対ダニの住処になってるだろ。

こんな所で寝たら身体中が痒くなるわ!



昔は布団を干して、掃除機ってマジックアイテムで退治していたそうだ。

だが布団を干すなら高温を20分程度維持しなければダニは死なない。

天気の悪い日なんて、干すだけ労力の無駄になることがある。



しかも掃除はこれで終わらない。



奴らは死骸になっても襲ってくるんだ。

そう!ハウスダストだ!

死骸を吸い込むことで体に不調を引き起こす厄介なやつ。

もちろん干した布団は叩いてはいけない。

死骸が細かくなり、吸い込みやすくなってしまうからだ。



そういう時は掃除機をゆっくりかけることで、死骸やフンなどを取り除くことができる。


だが生きたダニは簡単には吸い込まれてくれない。



死骸すら残さず徹底的に駆除せねばならない。

それがダニ退治だ。



気密性の高まった現在の屋敷では、普段からダニを増やさない努力が必要になる。

布団を乾燥させるのも有効だ。

湿度がなければ繁殖を抑えられるのだ。


だがここは水の大陸ウォルトア。

時期によっては雨が続き、シーツすら干せない日が続いてしまう。


そんな時は布団乾燥機だ。

掛け布団の間に挟むお手軽タイプだが、使い方を間違えて隙間ができると威力が足りない。


もっとドーンと大魔法を撃たねば撲滅させられない。


布団用のでかい乾燥機を置いている店があるから持ち込むのもありだ。

注意したいのはウール、シルク、P素材でできたものは乾燥機にかけられないことがある。


ダニ駆除を専門にしているスキル持ちもいるが、お金をかけ過ぎず手軽にやりたいのが心情だ。

もちろん、ワサワサと歩いているのが見えるくらい繁殖されてしまったら、諦めろ。

即座に依頼した方がいい。

マダニになんて刺されたら命を落とす危険だってあるんだ。



俺がよくやるのは薬草入りのスプレーの噴射だ。

『ダニ退治はこれ1本!1ヶ月に1度の簡単退治!駆除と予防ができる優しい薬草の香り』ってやつだ。

これをやるだけで、とりあえず刺されない。

自分に振りかけたいくらいだが、用法用量は守らないとな。

もちろん、噴霧したあとは死骸を掃除機で綺麗にするのを忘れてはいけない。

アルコールが入っているからすぐに乾くし、人体に影響がないから小さい子がいる家庭は必ず使うべきだ。


・・・。


「・・・牢獄で考える内容じゃないんだよな」

「何を1人で喋っているのです?」

鉄格子の向こうでトライドットが心配そうに見ている。


「なんでもないよ。それより厄介なことになったな」

向こうに残してきた2人も心配だ。

「どうやら式典を省き、テオの王族復帰を急いだのはこの為のようですね」

「はぁ・・・女王も娘を嫁に出したくないからって無茶するよな」

隣国がどんな国か知らないが、陰険って言ってたからな。

嫌な王族でも・・・。


・・・あれ?


「なぁドット、隣国に王族はいるのか?」

フランシスの授業では王国はベニチェアだけと教わったはずだ。


「・・・あ。30年、いや、40年程前に滅んでました。私も王子に嫁ぐとばかり・・・」

どういうことだ?

指導者にでも嫁ぐのか?



「古い物好きだと思っていたが、教科書まで古かったとは・・・」

「メル!」

「隣国【カタラーゼ】の王族が滅んでじきに50年になる。今は指導者たちが集い、中々発展した国家となっておるぞ。相変わらず嫌味の多い陰険な国じゃがな」

コツン、コツン、と階段を降りてきた。

前回見た時とは違い、フードを外している。


ピンと横に伸びた先端の細い耳。

整った顔立ちに、グラマラスな躰。

薄ピンク色の長い髪を揺らす様は妖艶だ。


「・・・説明しろ。まさか」

「・・・ガキにはまだ早い」


トライドットがガキか。

少なくとも120歳よりかなり上なんだろう。

「メル婆、俺た「誰がババアじゃ!」

ぐわっと俺は胸ぐらを捕まれ、宙に浮く。


訂正するから!

お願い下ろして!


「せっかく教えてやった情報を「これ知ってます!」なんてバラすアホが!何でこっそりやれんのじゃ!中級ダンジョンからもノコノコ戻って来おって!」

「ご、ごめんなさ・・・」

ブンブンと上下に揺さぶられる。

鉄格子が無ければ横揺れも追加されてただろう。



「どうせその様子ではあの会場に洗脳スキル持ちが集められていたことも知らんじゃろ」


はぁ?!


「どういうことだ」

「女王とアナリーゼの差し金じゃ。円満解決にする予定だったんじゃろ」

不穏すぎる・・・どこが円満解決だよ!


「そなたらが敗戦を口にした事で、ワシが情報を流したこともバレるところだったんじゃ。少しは反省せよ」

ポイッと床に落とされる。

口は悪いが、どうやらあの状況から助けてくれたようだ。



「テオとヨルヨンは無事なのか?」

「心配するでない。あちらにもワシの部下を付けておる。明日の始発列車に乗れるよう手引きしてやる故、今晩はここで大人しくしていろ」


・・・こんばん?


「・・・まさか、一晩ここで過ごせって言うつもりか?」

こんな掃除が行き届いてない牢獄で?!

「そうじゃ。野宿と変わらないじゃろ。朝になったら抜け道を使って駅に行くぞ」

野宿のが新鮮な空気がある分マシだ!



「ここ!この埃を見ろ!いつ掃除したんだよ!次に使う人のことを考えて「あーはいはい。これを使うがよい」

ポイッと投げ寄越されたのは緑色のスプレー。


『ダニ退治はこれ1本!1ヶ月に1度の簡単退治!駆除と予防ができる優しい薬草の香り』


「ではな。明日は早いぞ」



・・・俺はスプレーをありったけ振りかけた。

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