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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第9章 ベニチェア王国
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ヨルヨンの戦い

「こんな大きな魔物は初めてです!きっと良い魔石が取れますわ!」

オリビアが狩人の目をして、じりじりと1つ目巨人に近付いていく。



「キュイイ!」



1つ目巨人がトライドットを見て鳴き声を上げた。

もしかして・・・。



「ドット、こいつ・・・」

「ええ。私のガーディアン、サイクロプスです・・・こうなれば、私が・・・」


「ダメなの!」


意を決して前に出ようとするトライドットの脇を抜け、ヨルヨンがオリビアの前に立ちふさがる。

「まぁ!私の魔石なのに。邪魔をなさるの?」

「助けてって言ってるの!」



「え?」

言葉がわかるのか?



「助けてって言われたら助けるの!パパさまが言ってたの!それにおとうさまもヨルの力を見せてって言ってたの!」



「・・・うちの子素晴らしくね?」

「言ってる場合ですか」

どうやら声に出ていたようだ。




「今のうちに逃がします。テオ、ディー君、ヨルヨンが怪我をしないよう援護していてください」

護衛の兵士たちが気を取られている間にトライドットがすっと床に姿を消した。



「お退きなさい!はぁぁ!」

「ダメなのー!」

ヨルヨンからしっぽ、翼、角が生える。

スキル【ガーゴイル】か。

勢いが良かったのか、背中とお尻のワンピースの一部が破れてしまった。




・・・墓石の建ち並ぶダンジョンの最下層、金髪の勇者と異形の角や羽の生えた魔王。

まるで英雄伝のようだ。

ただ違うのは、魔王が幼い上に、守っているのはムキムキの1つ目巨人。

薄ら涙が浮かんでいる姿は、紛れもなくヒロイン。



・・・逆だ、逆。



俺はカオスを振り払うべく、ヨルヨンの帰りの洋服を縫うことにした。


今着ている狼色フィット&フレアのワンピースを作り直すか。

俺は墓石のひとつを机替わりにして、布を取り出した。



「え?ディー何してるの?援護は?」

「帰りのワンピースを作っている」

「今?!今なの?!」

え?!どうしたらいいの?!と頭を抱えている。


こういう時は考えたら負けなんだよ・・・。



「はぁ!」

ドガガガガ!と尖った石柱がヨルヨン目掛けて放たれる。

あれは当たったら痛そうだ。




俺は表地より濃い色の、ツヤツヤした薄い布を取り出した。

ワンピースの裏地に使う「キュプラ」だ。

P素材の薄い布でも良いんだが、キュプラは天然繊維で摩擦が少ないから静電気が発生しにくい。

どうせなら吸湿性があって、肌触りが良い物にしたいじゃないか。


チョキチョキチョキチョキ・・・。




「えい!」

ふわっと飛んでいたヨルヨンがオリビアに殴り掛かる。



意外にアクティブな動きだな。

動きやすいようにスカート丈を少し短くするか。

ちなみに裏地を付けないと、足に絡みついて見栄えが悪かったり、透けたりするんだ。

ヨルヨンに透けは必要ない。


チクチクチクチク・・・。




「くっ!やりますわね!」

スカートにヨルヨンの攻撃が当たると、パキーン!と弾ける音がした。

何か魔法付与でもされていたのだろうか。

一国の姫さまだし、高級な防具を装備していても不思議じゃない。


・・・俺の持ってるマジックアイテム、何で音がピコーン!なんだろ。

こっちの音のがかっこいいじゃないか・・・。



「えい!」

ビリッとオリビアのスカートが切れた。

どうやらさっきの音は防具の魔法付与が外れてしまった音なんだろう。



・・・弁償しろとか言われても面倒だ。

仕方ない。

姫さまの分のワンピースも縫うか。



ヨルヨンとお揃いのフィット&フレアでいいか。

・・・いや、あの胸はお揃いにならないな。



身長の割に胸元が育っている。

確かルミナ姉もあの位の年にでかくなり始めたとか言ってたな。

オリビアが今着ているドレスは、戦闘用に動きやすさを追求した職人技が細部まで施されている。

・・・が、すでに布がパツンパツンだ。

職人の想像を超えて育ったのだろう。


それに胸元に飾りがあって胸の大きさを強調してしまっている。

ルミナ姉はでかく見えると太って見えるからやだ、とか贅沢なこと言ってたな。

確か首もとを三角の物に変えたり、縦のラインを作ることで胸を強調しないコーディネートができるとか言ってたっけ。


よし、やるか。




俺は鞄から布を取り出す。

色は金髪が映えるように鮮やかな青色にしよう。

首元は三角に大胆に開ける。

その代わり谷間が見えぬよう胸元カバーを付けるか。


胸元は立体的に縫い上げる。

これでおっぱい皺ができず、形の良いシルエットをキープできるのだ。

だが、そのためには大きさを見極めなくてはならない。

大きく作り過ぎると、隙間ができて胸元が凹むという大惨事が起きるのだ。



少し観察するか。

じっ・・・。



「えい!」

ふわりとヨルヨンのスカートがめくれる。

・・・かぼちゃパンツのサイズはピッタリだな。

ノーマルパンツが見える隙間すらない。



「はぁ!」

ピラッとオリビアのスカートもめくれる。

・・・こいつの分のかぼちゃパンツも縫うか。

スカート履いてるのに下着しか履かないとか、何考えてるんだ。


とりあえず胸はE寄りのDで作るか。

ルミナ姉より控えめだな。



チクチクチクチク・・・。





ゴゴゴゴゴゴゴ!!

「な、なんですの!」

地面が揺れるとサイクロプスに無数の腕が伸び、地下へと引きずりこんでしまった。

「追って!」

「ダメです!凄い勢いで離れていきます!」

索敵と思われるスキル持ちが叫ぶ。

どうやら無事に逃がすことができたようだ。



「もう!ヨルヨンが邪魔をするので逃げてしまったではありませんの!」

「あぅぅ・・・」

ヨルヨンは先ほどの凛とした様子が一変し、おろおろと姫から逃げ回っている。


「まぁまぁ姫、ヨルヨンも悪気があったわけではないのです」

テオの足にくっついているヨルヨン。

可愛い。



「ヨルヨン。破れてるから着替えておこう」

ワンピースを取り出すと、メイドたちに遮られた。


「お着替えの手伝いは私たちで行いますわ」

「ワンピースをお預かりしますね」

あれよあれよとワンピースを取られてしまった。


・・・まぁいいけどね。



「姫さまの分も作りましたのでお渡ししますね」

「あら!ありがとうございます。・・・これは・・・」


ぴらっと広げる。


「かぼちゃパンツです。スカートで戦闘をおこな・・・」

ドガドガドガドガ!!


俺の横を、鋭い石柱が通り過ぎた。


「・・・見ましたの?」


「ふっ・・・」

俺、追い詰められると笑っちゃうタイプだったか・・・。


「テオドール様ぁぁ!」

俺はテオドールの足に抱きついた。

もう恥ずかしとか言ってられない!

助けて!殺されるぅぅ!



「まぁまぁ姫、ディートハルトも悪気があったわけではないのです」

さっきと同じセリフ!

使い回しで許してくれるわけあるか!


「もう!仕方ありませんわね」

あ、許してくれた。

姫さま意外に懐が広いね!





ダンジョン内の階段で昼食を食べる事になった。

なんでも階段には魔物が出ないのだそうだ。


コソッ

「そういう仕様なのか?」

コソコソッ

「いえ、魔素の薄い階に上がりにくいと言うだけで、襲ってきますよ」

ダメじゃん。

といっても、今このダンジョンには魔物は居ないそうだ。

安心して食べよう。



「ベーグルサンドです、どうぞ」

配膳してくれたのは男性だ。

この国で初めて働く男性(人間)に出会えたよ。


周りで姫さまに「素晴らしいスキルでしたわ!」「さすがオリビア様!」ってよいしょしてる女性たちに目もくれず、1人でせっせとベーグルサンドと水を配っている。

・・・ベーグルの兄貴はこの国から逃げた方が幸せになれるよ。


そんな事を思いながらベーグルサンドの包み紙を剥がす。



ベーグルはドーナツのような形をしたパンだ。

ドーナツとの違いは卵やバターを使用していないこと。

そしてその食感だ。


生地の状態で茹でてから焼くことで独特の食感となる。

外はカリカリ、中はもっちり。

ずっしりとした驚異の食べ応えは、大人の男でも1つで満足できるほどだ。



ベーグルには『終わることのない人生の輪』なんてかっこいい意味があり、妊婦のお守りや冒険者の食事として人気がある。



包み紙を捲ると、船旅で食べたハンバーガーのような形をしたサンドが出てきた。

ベーグルはそのまま食べてもいいが、やっぱりこうして挟んだ方が見栄えが良い。


チラッと挟まった具材を確認する。


中にはクリームチーズとサーモンが挟まっている。

オーソドックスだが根強い人気の組み合わせだ。

エビとアボカドなんて組み合わせも好きだ。

ベーグルはほぼ強力粉の塊でヘルシーだから、カロリーを気にせず挟めるのも人気の秘密なんだ。


ヨルヨンもパクッとかぶりつくが、あまりの弾力と分厚さで中までたどり着けなかったようだ。

んっんっ!と一生懸命口に頬張っている。

・・・可愛い!


挟まっていたサーモンはスモークされていた。

スモークすることで生臭さが取れて、濃縮された味と燻した香りが付いてて俺は好きだ。

それにクリームチーズがかなり沢山塗られている。

玉ねぎの甘みとレモン汁のアクセントも効いててかなり美味い!



モグモグと食べながら腕を見た。

そういえばスキルキャンセルのハンカチを巻いたままワンピースを作っていたな。

・・・スキル使わなくてもできちゃったのか。


いや、うん。

スキル使っても「裁縫が得意」ってレベルだもんな。

気にしないでおこう。




昼食を食べ終え、俺たちは中級ダンジョンを出ることにした。

地下に転移でもあるかと思ったが、普通に来た道を登っていくだけだった。



出口まで魔物との遭遇もない。

あのスケルトンはサイクロプスがせっせと作っていたのだそうだ。

ムキムキ巨人がツヤ光りする健康的なスケルトンを作ったのか・・・。

ヨルヨンが作ったらどんな可愛い魔物になるんだろ。




外に出ると太陽が西に向かい始めていた。


「ねぇ、テオ様」

「なんですか?」


「私、今日のこと絶対に忘れませんわ」

ふふっと笑うオリビア。

楽しんでくれたならそれでいいか。

俺たちは城に向かって馬を走らせた。





「ウールン!」

城の裏手にある牧場にウールンはいた。

よかった、羊肉(ラムラック)にされてない。


・・・というか、その隣のふわふわは?

「メェ!」

「メェ!」


「ウールンに彼女ができたんだねー」

「ウールン、よかったね」

テオドールとヨルヨンが頭を撫でている。

俺たちが心配している間に・・・。


殺されるかもしれないこの短時間に燃え上がっちゃったんだろ。



「さぁ戻るぞ」


パチン!


影を出現させると、当然のように2匹ぴったりと寄り添い、影に入っていった。


・・・まぁ利子みたいなもんだ。



俺の空間作成の腕輪には、馬2匹、羊2匹が住むことになった。

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