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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第9章 ベニチェア王国
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国境ゲート

「ここが【ベニチェア王国】最大の駅、【ラングバック駅】です」

はるか遠くにある屋根はアーチを描き、幾何学模様の編み物のようにガラスがはめられている。


「すごい人だな」

列車から出ると上下左右、どこを見ても人だらけだ。

当たり前のように渡り廊下は浮いているし、上空に行くための箱がすごい勢いで上下している。

なんであれで頭打たないんだろ。

いつか乗ってみたいものだ。



「とりあえず降りますか」

俺の目の前には、先程の箱がある。

思ったより早く機会が訪れたな・・・。


天井が五角形をした全面ガラス張りの箱。

「これいきなり割れたりしないよな」

「割れたという話は聞きませんね。途中で止まることならありましたが」

あの速度で止まるの?!

やばいだろ。階段で行かない?


「・・・ヨル、ちょっと怖い」

「・・・ヨルヨン、安心なさい。パパが付いてるぞ」

俺は手汗をズボンに擦り付け、しっかりとヨルヨンの手を握った。


箱に乗り込み、ボタンを押した。

ヒュン!と外の景色が変わり、扉が開いた。


・・・なにこれ、すごいな。


重力を感じずに一瞬で下まで降りてしまった。

もちろん景色を楽しむ時間なんてなかった。

「テオ、いつかこんなの作ってくれ」

「えー・・・がんばるー」

頑張ったらできちゃうのか。

ちょっと期待しておこう。




人ごみの中、はぐれぬようヨルヨンの手を握ったまま歩く。

駅のホーム出口にある国境ゲートへ向かった。


今日のヨルヨンは狼色だ。

光沢のある紺色で、フィット&フレアのワンピースと真っ白なニットボレロ。

もちろん真っ白な付け襟のリボンは鮮やかな青色に変えたし、靴は編み上げのフォーマルショートブーツ。

ミニショルダーバッグには黄色のノームっぽい生物のあみぐるみが付いている。

ふわふわと良い香りのする銀髪を揺らし歩く姿は、どこからどう見てもオシャレなお嬢様だ。


「パパさま、お酒の匂いする」

俺もふわふわとウィスキーの残り香を漂わせながら歩いている。

到着前に丸眼鏡がウィスキー持ってきたのだからしょうがない。

余韻が鳴り渡ると言われるブレンデッドウィスキーだ。

飲まないわけがない。


「美味しかった。だがその一言では言い表・・・」

「ヨルヨン、ディー君が迷子にならないようにしっかり手をつないでてね」

おい説明させろよ。

「はい!おにいさま。パパさま、迷子になっちゃダメですよ」

「はーい!」

俺はヨルヨンと繋いだ手をプラプラと揺らした。




「ねぇおにーさん、どっから来たのー?」

「えー超イケメンなんですけどー」

後ろを向けば露出度の高い女性にトライドットがナンパされていた。

そろそろ寒くなる時期なんだからもっと着込まないと風邪引くぞ。


「申し訳ないが、先を急いでいるんだ」

「えーそんなこと言わずにさー」

「そーそー。うちらご飯とか奢っちゃうよー?」

奢っちゃうよーって、その人めちゃ金持ちだからな。

・・・でも金持ちって知ったら余計食いつくんだろ。



「・・・ヨルヨン、行きましょう」

おい、なぜ、こっちに来た!

トライドットがナンパから逃れてヨルヨンの隣にきた。

巻き込むんじゃねぇ!


「ドット兄様、早くい・・・」

「キャー!まじで!超やばい!」

「うわ!やっば!超イケメンじゃん!」

今度は振り返ったテオドールが捕まった。

女性の叫び声に周りの視線が集まる。


「え?・・・え?」

「ねー彼女いる?私今フリーなんだー」

先程よりボディタッチが露骨だ。

もう1人は髪をふわっとかき上げ、狩人の目をしている。

「まじタイプなん・・・」

「あー、えーと!ディー!いこ!」

テオドールがなぜか俺の隣りに来た。

ヒヤリと周囲の視線が俺に集まる。



え?ヘイトがやばいんですけど?



女性2人以外にも周りで狙っていた狩人がいたようだ。

なぜか俺に殺気が向けられている。


「・・・よし、行こっか」

ウィスキーの余韻が響いている俺に怖いものはない。

考えるのを放棄し、4人で手を繋いで国境ゲートへ向かった。




「ふー・・・助かりました」

「あれは怖いねー」

怖い目にあったのは俺の方だ。

あのヘイトはトラウマになるぞ。

「毎回駅を降りるとこうなるんです」

「なんでだろうね?」

何でだと?

ヨルヨン、姿見鏡出してやれ!


「次からちゃんと断れよ。テオなんて魔王っぽく振る舞えば誰もナンパなんてしてこないだろ」

「そういうものなの?」

「ヨルヨン守るんだろ。お前が連れてかれたらヨルヨンはどうなる」

「・・・そうだね。ビシッと言わないとね!」

ナンパにそこまで警戒する必要はないだろうけどな。



国境ゲートはシルバーで統一されたメタリックな外観をしていた。

大勢の人が歩みを止めず、次々とゲートを通っている。

まるで人の川のような光景は見ていて飽きない。


「すごい設備だな」

「商業ギルドが渋滞解消に作ったそうですよ」

確かにこんな人数をいちいち検査してられないからな。


俺たちはゲート横の人集りに並んだ。

「入国管理もしていますから、初めての人はここでスキルカードの作成が義務付けられているんです」

表示されるのは名前、スキル、魔属品の3つ。

このスキルカードは国境を行き来するために使うだけではない。

名前とスキルがわかるから職探しでこの身分証を履歴書と提出する、信頼度の高いアイテムだそうだ。


魔属品は魔力の籠った所持品を持っていると表示される。

昔、知らないうちに呪いのアイテムを持ち込む事件が後を絶たなかったせいで導入されたそうだ。

何それ怖い・・・。



俺は腕輪をスキルキャンセルのハンカチに包み、鞄の中に隠した。

何か書き込んだりするのかと思ったが、列に並んでいるとすぐに順番が来た。



「はい通ってください。はい、ではよい観光を」

スポーン!と出てきたスキルカードを受け取っていく。

そういえばヨルヨンのスキルを鑑定した時もこんな感じだったな。


渡された手のひらサイズのプレートを確認する


名前:ディートハルト・フェンターク

スキル:【ソーイング】【糸作成】

魔属品:隷属の首輪、5kg収納鞄、50kg収納鞄、毒無効の指輪



とても簡素だ。


・・・ん?フェンターク?

「どうされました?」

止まっていたら駅員に声をかけられた。

「いや、名前が違うんだが・・・」

「あぁ、結婚したり、領地の得失により自動で変わる仕組みになっています」


あーなるほど。

確かお父様の元の名前がミハイル・フェンタークだったっけ。

お父様は領主になる前のことを話してくれなかったからな・・・。


「そうか。多分、これであってる・・・」

俺は静かに駅員から離れて行った。



「ヨルヨンも、もらった!」


名前:ヨルヨン

スキル:【ガーゴイル】【鉱石作成】

魔属品:転移の翼、100kg収納鞄、ドライヤー、毒無効の指輪


ん?転移の翼ってのは何のことだ?



「ねー僕もなんか名前が違うんだけど」


名前:テオドール・ノーブル・ロット

スキル:【ノームの祝福】

魔属品:転移の翼、毒無効の指輪、不思議な鞄


長い名前だな。

転移の翼ってこいつも持っているのか。

黙ってお揃いは許さんぞ。

あと不思議な鞄って何だ?



「・・・まずい。すぐに移動します。テオ、それ誰かに見せましたか?」

「えーとね、職員さんが・・・」

「あのー失礼します」

振り向くとニコニコ笑いながら帽子の鍔を軽く持ち上げてあいさつする女性職員がいた。


「こちらの不手際があったようでして、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか」

「・・・いや、我々は急いでいる。すでに迎えが来ているはずだ。さぁ、行きますよ」

トライドットは硬い表情で俺たちの背中を押してここを出ようと促す。



だがゲートの光はテオドールのカードをはじいた。

「申し訳ありません。そちらのカードでは通り抜けできないようでして。すぐに確認をいたしますので、今しばらく・・・」

よく見れば周りを同じ制服の女性たちに囲まれている。


まさか固有スキルの件か?

この二人がノームの末裔だとばれたのか?



「お待たせしてしまい申し訳ありません。責任者のアナリーゼ・ヒュームと申します。失礼ですが、そちらの方のカードを見せていただけますか?」

薄い金髪を揺らしながら美人な女性が現れた。

どうやら目的はテオドールだけのようだ。

トライドットに目もくれないということは固有スキルの隠し方でもあったのか?


「はい、どうぞ」

笑顔でカードを渡しやがった。

・・・もう少し空気読もうね。



「・・・やはりそうでしたか。ようこそいらっしゃいました。いえ、よくぞお戻りになられました。テオドール・ノーブル・ロット様」

恭しくお辞儀をすると周りを取り囲んでいた職員たちが一斉に敬礼をした。



考える間もなく、俺たちは止めてあった馬車で連行されてしまった。


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