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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第9章 ベニチェア王国
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あみぐるみと皮細工

列車の旅はなかなか快適だ。

食事も部屋に運んでくれるから周りを気にせず、ヨルヨンにテーブルマナーを教えながら食べることができる。

「ヨルヨンは覚えるのが早いねー」

「そのうちヨルヨンお嬢様とか言われちゃうかもな」

それでそのうち「お嬢様を嫁にください」とか言われちゃうのかな。

・・・絶対嫁には出さん!


「ディーどうしたの?」

いかん、顔に出ていたか。

「いやなんでも・・・テオもテーブルマナー完璧なんだな」

「えーできないと思ってた?」

普段の行い見てるとな・・・。

「見た目貴族だもんな」

「見た目だけじゃないよー。お父様の真似だって上手なんだからね。見ててよー・・・コホン」



「・・・テオ、なぜ人間がここにいる」



「ぶっは!似てる!テオから威圧感が出てる!」

普段からは想像できないくらい魔王の覇気が出ている。


「テオのマナーは全部お父様のモノマネでしたからね。そのせいで一度グラ姉様にすごく怒られて・・・」

「ドット兄様!それダメ!ストップ!」

先程までの覇気はなく、慌ててヨルヨンの耳を塞いでいる。

どうやら黒歴史にぶち当たったようだ。

こいつが魔王のようになる日は、まだ来そうにない。



列車旅も明日には目的地につく。

「今のうちにニット&クロシェとレザークラフトのスキルアップの書でも読むか」

ちょっと楽しみにしていたんだ。

だってニットはカギ編みも含むとか、クロシェはニットとは違うと真っ向から対立していたスキル持ち。

それが手を携えて書物を出した。

素晴らしいね。


ぴらっ・・・


「なになに、あみぐるみとは毛糸で編んだぬいぐるみの事で・・・」


パタン・・・。


俺は思わず頭を抱えた。

「どうしたの?」

「クロシェスキル持ちの作者がニットのあみぐるみを作ったことでクロシェ団体から追放。さらにぬいぐるみの権威を脅かすものだとソーイングも介入してきて、泥沼になった歴史が綴られている・・・」

「うわぁ・・・」

手を携えてなんていなかった。

どうして仲良くやれないんだよ・・・。


気を取り直してページを捲る。

「それでも可愛いものが作りたいと活動した結果、根強いファンも増え、この書籍は増販しているらしい」

「がんばったんだねー。あ、作り方に可愛い絵がいっぱい描いてあるね」

孤高に頑張ってきたのだろう。

手作り感が満載だ。


「頭部、胴体、手足をそれぞれ編んで、綿を入れて組み立てるようだな」

今回は頭部だけの練習キットのようだ。



「まず道具か。前回の付録にあった物より持ち手がしっかりしているな」

先端のかぎ針を出して、持ち手が硬いゴム素材で覆われている。

多分先端の細さに合わせてかぎ針全体が細いと、指にくい込んで痛いのだろう。

作る人のことをよく考えている良い道具だ。


「あとピンセットと・・・針?」

針穴の大きな針が入っている。

なんで編むのに針が出てくるんだろ。




とりあえず作るか。


「まずは作り目だな。・・・ん?まず輪を作る?」

左手の中指と薬指に毛糸をふた巻きして輪を作り、輪を巻き込むように編んでいく。

「少し編んだら、かぎ針のループを大きくしておいて・・・」

かぎ針を外し、輪を指から引き抜き、短い方の毛糸を引くと輪が小さくなる。

ぐいぐいと絞られる輪に毛糸を送り込みながら、輪が萎むまで引っ張った。


「おー!モチーフみたいになったね!」

俺の手の中には小さなモチーフのような毛糸の塊がある。

「これの目を増やしたり減らしたりしながら球体にしていくみたいだ」

毛糸をかぎ針のループに巻き込む【鎖編み】、作り目を巻き込みながら編んでいく【細編み】。

これらを使いこなせば目が一定に編めると書いてある。




球体の半分くらいまで目を増やして編んでいく。

「あ、違う編み方もあるのか」

鎖編みを作ってから細編みをするような編み方【長編み】がある。

せっかくだから毛糸の色を白から青に変え、真ん中の1段を長編みにしてみた。

細編みより段の幅が長く、細編みとは目の模様が異なった。

用途に応じて使い分ける必要がありそうだ。



白の毛糸に戻し、増えた目をまとめて編むことで目を減らしていく。

途中長編みをしたから繭のような楕円の球体ができた。

「一旦かぎ針を離して、綿をピンセットでパンパンに詰めて・・・お、ここで針を使うのか」

俺は針に毛糸を通す。

毛糸のような太い糸は、針穴が大きい方が楽に通せる。



「えーと、針に毛糸を通したら・・・」

毛糸を針に通し、ぽっかり空いた穴の縁を針でクルクル縫っていく。

「んで、引っ張ると・・・」

キュッと穴が縮んでいく。



「んで、玉留めして完成っと」

玉留めを球体の中にしまい込み、毛糸で編まれたあみぐるみの頭ができあがった。

「途中で長編みにしたから楕円になったけど、全部細編みでやった方が編み目が同じだから見栄えがいいな」

この要領で手足も作って組み立てろってことか。

【あみぐるみ】を習得した。




「次はレザークラフトだな」

スムージーのお姉さんの隣にいたおばちゃんの話では、どこに所属するかで揉めてたとか言ってたな。


「なになに、レザークラフトは本革の良さを追求し・・・」


えぇ・・・。


「どうしたの?」

「・・・こだわりの皮を得るために準魔物の討伐までやってきた武闘派らしい」

お前ら俺と同じ非戦闘スキルだろ・・・。

あの狼やタコと戦ってるってことか?

俺もウールンから毛糸取ってきたし、こだわりはわかる。

でも命は大事にしろよ・・・。



「これに、切って縫うなら我々の派閥だ!ってソーイングが突っかかってきたそうだ。でも菱目(ひしめ)打ちもできない軟弱者と同じにするなって喧嘩になったそうだ・・・」

ソーイング、ここでも噛み付いちゃったかー・・・。

レザーは厚みのあるものはハサミでは切れないし、普通の縫い針で縫うこともできない。


とりあえず俺の中でレザークラフトスキルは筋肉ムキムキなイメージができあがった。




「まずは道具の確認だな。今までより多いぞ」


俺は初回特典の大きな付録を開ける。

「この針、先端が丸いねー」

針の先端が滑らかに削られ、丸くなっている。

「レザーを傷付けないために丸いらしいな。俺も初めて見た」

今までは専門の道具が無くても裁縫道具があればなんとかなった。

レザークラフトは道具が今までと全然違うようだ。


「皮に線を引く銀ペン。これはチャコペンのようなものか。」

丸ギリで傷をつけるように線を引くのもいいが、この製作者のこだわりらしい。

「んで、切るためのナイフとゴム素材マット」

カッターと呼ばれる初心者でも使える刃の小さなものが入っている。

それを使う際に机が傷つかないようにマットを下に敷くようだ。


「そしてこれ、(ひし)ギリと木槌だ」

菱目打ちという針穴を開ける作業。

これこそレザークラフトの醍醐味だ。

「なになに・・・穴は菱目打ちや平目打ちなど形を変えることで縫い目を違うものにできるが、初心者は菱目打ちから始めろ・・・」

「説明文も喧嘩腰だねー」

「喧嘩腰だけど丁寧なのが笑えるな」

なんだかドル爺のようだ。




まだ色々入っているが、もう作りながら確認しよう。

付録から皮の端切れと型紙を取り出す。


「さて、まずは線を引く所からだな・・・ん?磨いた方がいいのか」

付録からトコノールと呼ばれるワックスを取り出す。

使い切りサイズで、これが欲しいなら商業ギルドへ来い!と書かれている。

商売上手め。


「あとはプレススリッカーとガラス板?なんだこれ?」

凸凹した溝付きの木の棒と、分厚いガラス板が出てきた。

このガラス板のせいで付録が重かったのか。


「・・・ふむ。床面にトコノールを付けて、ガラス板で削り取るように磨くらしい」

「床面?」

「ツルツルした表を【銀面】、ゴワゴワした裏を【床面】って言うらしい」

特に床面が見える作品は磨くことで見栄えや手触りが良くなるため、気合で磨けと書かれている。



「なるほど。切る前に磨いた方がムラができにくいから、細かく裁断する前に磨けって書いてあるな」

大凡の大きさに切った皮の端切れにトコノールを均等に伸ばし、ガラス板で磨き上げる。


スイ・・・スイ・・・スイ・・・。

「・・・意外に力作業だ」

「え?どの辺りが?」

なんとか床面を磨き終えたが、俺の手は既にプルプルしている。


ゴワゴワとした床面はしっとり滑らかな手触りになった。




型紙をピッタリと合わせ、銀ペンで線を引く。

カッターで切り出し、切り口をプレススリッカーの溝にはめて磨く。

この切り口のことをコバ、コバのモサモサしたのをヘリと言うらしい。

トコノールを少し付けてしばらく磨くと、ヘリがなくなり表面が溶けたようにツルツルとしてきた。


「これに金属の輪を通して、半分に折って・・・」

接着剤で仮止めする。

ちらっと接着剤の裏を見ると、こだわりの「ゴムのり」が売ってるのは商業ギルドだけ!と書いてある。

接着剤は匂いや接着力が種類によって全然違うらしい。




「で、菱目打ちだな」

コンコンと木槌で打ち、皮を等間隔に菱ギリで穴を開けていく。

「・・・これは・・・なかなか・・・」

コンコン・・・コン・・・コ・・・。

「・・・力作業なんだね。代わろうか?」

「頼む」

もう手がプルプルしてるんだ。



テオドールがコンコンと木槌を打っていく。

「もっと菱ギリを立てて。等間隔、同じサイズの穴になるように・・・」

「代わる?」

「代わらない」

もー!なら黙っててよー!とブツブツ言っている。

今の俺には口出ししかできないんだ!


コンコンコンコン・・・。

「テオって器用だよな」

皮に目印になるガイドラインを引く道具もあるそうだが、何もなしにコンコンと等間隔に打っている。

「え?!そ、そうかな」

「あぁ、綺麗にできてると思う」

鉱石放り投げるような雑なことする割に器用だ。

初めて言われたよ!とニコニコしながら菱目打ちの速度を上げていった。



「これに糸を通していく・・・ん?糸を削るだと?しかも針を両側に付ける??」

レザークラフトは道具に謎が多すぎる。


縫い代の3倍ほどの長さにカットした麻糸。

その太い麻糸の端をカッターで削いでいく。

「んーで?その糸に蝋のワックスを塗って、毛羽立ちを抑える・・・」

四角い黄色の蝋を糸に擦り付けると、一回り糸が細くなり、光沢がでた。


「この糸を針穴に通して、さらに糸をほぐして針をぶっ刺すと・・・」

通した糸と残りの糸、両方とも針に刺した。

こうすると縫っている最中に糸が針穴から出ていかないようになるのだ。

通した糸は残りの糸にクルクルと巻き付け、穴を通す時に邪魔にならないようにする。


糸の両側に針を取り付け、どちらも糸が抜けないよう処理ができた。



「やっと縫えるな」

まずは一番端に針を刺す。

一番端は圧がかかるので、縫い方は返し縫いというやつだ。

3番目くらいの穴に針を通し、端に向かって塗ってから反対側へと縫っていく。


「こっちを通して・・・少し残して、反対の針を通して・・・」

通った糸を刺さないよう、同じ穴に針を通していく。

表の縫い目が斜めに揃うように縫うが、力加減が難しい。

「おー!できてきた!」

最後に糸を結んで留める。



俺の手の上にはオレンジ色のナスのような柔らかい膨らみの皮細工がある。

金属の輪を付けたので、鞄とかに付けれそうだ。

「作りたい物に合った皮の選び方、金属の留め方など色々あるが、今回は基本中の基本って書いてある」

「こだわりだねー」

「今回の出来栄えを評価して次のキットを割引してくれるらしい」

これ、割引券になるのか。

【レザークラフトの基本】を習得した。



「結構皮がパリッと張っててかっこいいな。・・・そうだ」

俺は先程作ったあみぐるみを皮細工に通し、横掛け鞄に付けた。


「・・・まぁいいんじゃないか。うん」

思ったほどかっこよくも、可愛くもない。

青い縞模様が入った謎の球体と、オレンジ色をした皮の割引券が鞄に付いているだけだ。



「パパさま、いいな」

「ヨルヨンにも作るよ。これは練習だからね」

皮細工は1人じゃできないし、一旦置いておこう。

ヨルヨンのために可愛いあみぐるみを作るんだ。




俺はこの1日をあみぐるみを作ることに費やした。

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