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藍色の腕輪

ヨルヨンにパ・・・服を装備させ、ダイニングルームにランチに来た。


ランチのメインはラザニアだ。

平べったいパスタ、ベシャメルソース、ミートソース、チーズが交互に重なり、表面がこんがりと焼かれている。


「ラザニアなんて久しぶりですね。私、結構好きなんですよ」

「僕も好きだよー」

どうやらトライドットとテオドールの好物らしい。

四角く切り分けると何層にもなった切り口から、チーズやミートソースが溢れている。



ベシャメルソースはホワイトソースの1つで、バターと小麦粉をミルクで伸ばしたものだ。

奴隷商でグラタンを作りたくてベシャメルソースを作ったが、ダマにならないよう根気よくかき混ぜ、焦がさないように火加減を調整するのがめんどくさかった。


挽き肉を赤ワインで贅沢に煮込み、渋みを効かせて肉本来の旨味のあるボロネーゼで作ってもラザニアは美味しい。

だが、ヨルヨンは甘みのあるトマトをふんだんに使ったミートソースを気に入ったようだ。

この気配り、さすがグラ様。


そしてこのチーズ。

絶対ノルトライン絡んでるだろ。

ワイナリーで何種類もワイン空けながら、これでもかとチーズが出てきたからな。


「ヨルヨン、美味しい?」

「はい!トロトロ、おいしい」

「よかったー。好みがわかんなかったから、リコッタとモッツァレラとパルミジャーノ・レッジャーノをグラに渡しておいたんだ」

さらっとすごいチーズ出したな。

アミノ酸の塊のようなパルミジャーノ・レッジャーノ。

このチーズを入れるだけで味も香りも格段に良くなる。



魔王もヨルヨンがもぐもぐと食べるのを眺めている。


手の込んだ料理、温かな雰囲気。


どうやらみんな揃ってヨルヨンを歓迎しているようだ。





ランチの後は出立の準備を再開した。

「あ、そうだ。グラ様にもらった空間作成のマジックアイテムも使ってみないとな」

俺は藍色の宝石の付いた腕輪を撫でる。


「え?何それー」

「秘密のお茶会でもらったんだ。もしかしたらルーイ達をしまっておく必要が出てくるからな」

「ルーイ?」

ヨルヨンが首を傾げる。

「そっか。まだルーイたちに会ってなかったな。ついでだ。今から会いに行こう」

「「はーい!」」


俺たちは牧場へと移動した。

相変わらずの星空の下、馬や羊が歩き回っている。

「あの子がルーイ?」

「そうだよ。ルーイ、おいでー!」

タカタカと軽やかなステップでルーイが俺の前まで走ってきた。

「ルーイでっかいね!」

「乗せてもらうと風になれるんだ。明日乗せてもらおうな」


「メェ?」


・・・いや、お前は呼んでない。


気付けば俺の横に毛糸をくれた羊がいた。

しっかり全身毛を刈ったので、ヤギのようだ。


「これは羊、ヨルヨンのボレロに使った毛糸はこいつがくれたんだよ」

ふふんと羊が自慢気に笑った気がする。

「名前はないの?」

「名前・・・名前は・・・ウールン」

「そのまんまね・・・」

後ろからインテグラが現れた。

・・・いいじゃないか、食用(ラム)じゃないんだぞ。




「ウールン!可愛いね。毛糸ありがとね」

「メェ!」

ウールンはよしよしと頭を撫でられている。



「それの使い方を教えていなかったと思って。魔力を流すだけなんだけど、念の為見にきたの」

「魔力を流す・・・そういえば初めてだな」

一応糸作成を使えるのだから魔力はあるはずだ。

だが俺にどのくらいの魔力があるかなんて測定したことがない。

あれは戦闘スキル持ちが測るものだったから。



「なら順番にやりましょう。まず手を真っ直ぐ伸ばして、魔力を腕輪に注ぐイメージをつけて」

腕を伸ばして体の中にある魔力を腕に集める。


「・・・なんか、ふわっとしたものが・・・」

集まってきた・・・そう思ったら腕の前方にモヤッとした薄暗い影ができた。


「できたわね。もう開いてるから、それを大きくしてみて。できたら1度消してみましょう」

ぐっと力を入れてみると影がすすすっと広がり、人の大きさになった。

「あとは消してみるか・・・」

「えい!」

隣でソワソワしていたテオドールが中に飛び込んだ。


「テオ!突っ込むな!危ないだろ!」

集中力が切れたら空間が壊れるとか、なんか危ないかもしれないだろ!

「おおー!ひろーい!」

・・・中から呑気な声が聞こえる。


「パパさま、ヨルも入っていい?」

「・・・行っておいで」

何故かヨルヨンの後ろをウールンもついて行った。



「ふふ、大丈夫よ。途中で消しても体が半分になることはないわ」

「親切設計なんだな・・・」

「さ、入口を消してしまいましょう」

あれ?グラ様鬼じゃね?


「そんな顔しなくても大丈夫よ。これから馬をしまうのでしょ?」

「ま、まぁそうだが・・・おーい、テオ!入口閉じるぞー!」

「了解~」

・・・出てこないのかよ!


影を消すイメージを持って力を込めると、入口は消えてしまった。


「ではもう一度開けてみて。少し力を込めすぎているから気楽にね」

意外にスパルタなんだな・・・。

テオが修行投げ出すのも、ちょっとだけわかった。



入口を作るとテオドールたちが戻ってきた。

「広くてここより少し暗かったよー」

「はい!暗かったの!」

2人とも興奮した様子だ。

「テオ、中の様子を知りたいから交代しよう」

「あら無理よ。それディー君専用だもの」


え?そんなの聞いてない。


「他の人に悪用されると困るの。次はヨルヨンね。中は暗かったでしょ?鉱石作成で光る石を作れるようになりましょうね」

次のターゲットはヨルヨンのようだ。


「ヨルがんばる!」

「ふふ、光る石は鉱石に魔力を溶かし込むの。自分の魔力じゃないわ。大地の魔力よ」

すっと手をかざすと、インテグラの体が仄かに発光する。

「これが大地の魔力。さぁやってみましょう」

ヨルヨンの頭には「?」が浮かんでいる。



「・・・テオ、ちょっと気持ちわかったよ」

「何でもできちゃうんだけどね・・・」

コソコソと喋る。

何でも出来ちゃう人向けの指導方法なのか。

自分がやる感覚で教えるから、凡人には伝わらないことも多い。



「グラ様、大地の魔力って俺でも見えるのか?」

「うーん・・・そうね。手を繋げば見えるかも」

「ならみんなでやってみよー。ほらヨルヨン、手を繋いでー」

おっと、危ない。

俺は2つしかないヨルヨンの隣に滑り込んだ。


4人で手を繋ぎ、円になる。

「・・・いい?いくわよ?」

インテグラが目を閉じると、発光する魔力に包まれる。

「おお、温かい・・・」

インテグラに繋いだ俺の手がじわりと熱を帯びたと思ったら、すぅっと体の中に流れ込んできた。

「ヨルもわかる!温かい!」

俺の中に入った光と熱がヨルヨンへと流れていく。


ふと顔を上げる。

「・・・すごい」

風もないのに光が空をそよぎ、パラパラと輝きながら欠片を落としている。

上に行けば行くほど、大きな渦のように光が蠢いている。

「おー!こんなに光ってたんだー!」

テオドールも初めて見る光景のようだ。

「きれい!」

俺たちはしばらく光の流れを眺めた。




「えい!」

「そうそう。大地の魔力を固定化・・・光ったままにするの」

ヨルヨンの手の中にはコルクくらいの光る石がある。

ダンジョンで見たものより薄ら光る程度だ。


「おとうさま!パパさま!できた!」

ヨルヨンが大切そうに両手に抱えて見せに来る。

うちの子天才だ!




「こんなにもらっていいのか?」

藁や光る石をわけてもらい、中に入れた。

俺は腕輪を持っているから、運ぶのはテオドールの仕事だ。

ヨルヨンも藁をちょっとずつ運んでいる。

「いいのよ。また作ればいいもの。・・・それに、教え方を指導してくれたお礼も兼ねてね」

「何もしてないよ。ヨルヨンが鉱石を作れるようになったのはグラ様のおかげだ」

「ふふ、ディー君は優しいのね」

その笑顔は最初に会った時より、少し柔らかくなっている気がした。





「ルーイ、入ってみてくれ」

警戒心の強い馬が中に入るのだろうか。

「ルーイちゃん、一緒に行く?」

ヨルヨンがおいでーと声をかけながら一緒に中に入っていった。



そして・・・お前もか、ウールン。



腕輪の中に馬2匹羊1匹を入れ、俺は空間を閉じた。


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