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エビ色ワンピース

翌朝。

まだ部屋の明かりが黄色く灯る前に俺たちは起きた。


ガタンゴトン!ガタンゴトン!


「・・・うるさくて眠れねぇ」

ガーディアンは思ったより早くできたようだ。

ガタンゴトンと箱が左右に揺れている。


「お兄様たち呼んでくるー!」

身支度を済ませたテオドールが部屋から飛び出していった。



・・・え、箱と2人っきり?


俺は慌てて身支度を済ませると、ウルフキラーを手にテオドールの帰りを待った。

・・・別にビビってなどいない。



結構激しく揺れるが、蝶番も鍵もしっかりと付いている。

時々動きが止まり「ぬー」とか「むー」とか鳴き声が聞こえてくるが、どんなごつい魔物になったんだ・・・。



箱が壊れる前にテオドールが2人を連れて戻ってきた。

「こんな早くできるなんてすごいですね・・・」

「2人のお祈りが効いたんだな」

よしよしとノルトラインが俺とテオドールの頭を撫でる。


「ここからは手順はない。箱を開けて、どんなスキルかを鑑定してやるくらいかな」

「鑑定なんてどうやるんだ?」

「鑑定付与のマジックアイテムならここにありますよ」

これです、とトライドットは持ってきた小箱を見せる。

・・・また高級品かよ。



「よし、開けるか」

「ディー、盾にしないでよー」

テオドールを盾に箱の前に立つ。

「飛び出してくるかもしてない相手に無防備に突っ立ってるわけにはいかないだろ」

「もーしょうがないなー。開けるよー」

カチャッとテオドールが鍵を外す。


え?普通に開けちゃうのか?


「なんかこう、召喚の雰囲気とかないのか?いでよ!我が眷属!みたいな」

「あ!それいいね!・・・ふふふ!いでよ!我が眷属!!」

テオドールは叫びながら蓋をパカッと開く。



光も音もなく、モンスターボックスの箱が開く。

正直拍子抜けだ。

馬のエフェクトのが凄かったぞ。



だが俺たちはその場から声を発することなく佇んでしまった。


―――箱の中から女の子が現れたからだ。



「む?・・・なぁー!」

女の子は長い銀色のウェーブヘアをふわりと揺らし、テオドールと俺の顔を笑顔で交互に見ている。

そして次の瞬間、その背中に悪魔のような赤紫色の羽根と尻尾、頭から羊のような角を生やし、テオドールに向かって飛び立った。


「うわー!」

笑顔ですりすりと頬を寄せている女の子を押し返せず、テオドールは倒れたまま驚いている。

「なにこれ!なにこれ!」

「テオ、こちらから確認できたが、どうやら女の子のようだ」

現れた子供のしっぽを掴んで上に持ち上げる。


「そんなこと聞いてないー」

「「そこは見ちゃだめでしょーーー!!」」


俺はノルトラインに羽交い締めにされた。

トライドットも立ち塞がっている。

なんだよ、確認は大事だろ。


というか、何こいつ。

もしかしてこれがガーディアンか?



「どうしよう、女の子?女の子なのかな?」

「女の子だな」

間違いない。



「どうしよう。私たちは女性を召喚したりノームの末裔に加えるの禁止されてるんですよ」

「女性ダメって・・・でもグラ様いるだろ」



「え?あいつ女装だぞ」

「・・・」


・・・乙女の秘密ぅぅ・・・。



「宝玉の姫の話・・・知ってますか?」

急に真面目な顔になるトライドット。

俺の飛びかけた意識も戻ってきた。

「いや、この間名前を聞いた程度だ」

フランシスが船旅でそう言っていた。


「・・・あまり気分のいい話ではないのですが・・・。ノームの末裔と子を成すと、たまに魔石を体内に宿した子が生まれるんです。・・・それ目当てにノームの末裔の女性狩りがあり・・・女性禁止に」

大方、家畜のように子供を孕ませたのだろう。

子供たちがどうなったのかも、あまり考えたくないな。


「ま、今ではノームの末裔について知ってる人間ですら稀になったからね。過去は過去だよ。それよりその子に名前を付けてあげなよ」

ノルトラインが指さす先には、いまだにむふー!とテオドールに抱き着いている女の子がいた。

「名前はもう決めたの!ヨルヨン!」

ヨルヨンか、可愛い名前だな。



「スキル鑑定もしてしまいましょう。ヨルヨンの手をかざしてください」

「はーい。・・・おー、ちっちゃい」

テオドールがヨルヨンの手を握るとぷにぷにと触りだした。

「テオ、触ってないでかざして」

「あ、そうだった、えい!」

手をかざすと、カシャーンとカードが発行された。


【ガーゴイル】【鉱石作成】





「これはどういうつもりだ、テオ」

ヨルヨンを連れて謁見の間に通された。

羽や角は仕舞えるみたいだ。

これがスキルガーゴイルの力なのかな。

とりあえずテオドールのシャツを着ているが、これで外を歩かせるわけにはいかない。

俺は後ろに立ちながらヨルヨンの洋服を縫うことにした。


「ガーディアンを召喚いたしました」

テオドールが貴族口調で話している。


俺はヨルヨンの身長を測り、ピンクの布を広げた。

ピンクと言っても種類が豊富で、薄茶に近い落ち着いた色から赤が強い色、朱色がかったものまで様々だ。

今回はシュリンプピンク。つまりエビ色だ。


「なぜこの姿なのかと聞いている。ガーディアンはわれらの守護者。われらと共に悠久の時を歩む者・・・それをこのような幼い姿で召喚するなど・・・」


奴隷商で何度も作ったワンピースでいいかな。

本来なら囲み製図という線と数字の書き込まれた型紙を使うが、俺のスキル【ソーイング】が本領発揮する。

なんと型紙なしでバリバリ線が引けちゃうのだ!

余り布が出ないようパズルのように線を引き終え、裁ち鋏で裁断していく。

まち針で形を整え、ワンピースの上半身からチクチクと手縫いをする。

縫い終わったらアイロンで縫い代を割って、また縫っていく。

こうすると着心地が良くなるだけでなく、見た目も美しくなるのだ。



チクチクチク・・・。

「私としてもこのような姿になったのは驚いています」

ですよねー俺も驚いたよ。


ワンピースのスカートにはギャザー、つまりシワを入れよう。

ポイントは均等に布を寄せることで、上半身はスッキリと、スカートはふわふわと可愛らしくなるのだ!

チクチクチク・・・。


よし、襟元はあとでクロシェで付け襟を作るとして、シンプルなワンピースができた。


「それでは・・・隣にいる人間が仕組んだことか」

「はい、ヨルヨン。ばんざー・・・ふぇ?」

ヨルヨンに頭からワンピースをすっぽりかぶせると俺は顔を上げた。


え?俺が何かしたとでも?



「俺何もしてませんよ。箱作っただけなのはミルドレウス様も見ていたでしょう」

俺はヨルヨンのウェーブヘアをふんわりと三つ編みにする。

右で編んで左に流す、テオドールと逆の編み方だ。

「・・・いや、そうか。貴様、この箱を作るとき何を考えた」

「え?奴隷商でいつもやってたなーとか。同じようなおもちゃ箱を弟分に作ったなーと。そのあとガーゴイルみたいな強い子に育ちますようにって祈っただけですよ」

三つ編みを終えると赤い紐で三つ編みを止める。

うむ、可愛いな。



「願いではなく想いで形を成したか・・・」

魔王が難しい顔をしているが、なんの事かわからない。

それよりヨルヨンの洋服だ。

まだ下着だって縫わないといけない。


「ふむ・・・姿見の原因はわかった。それで、実力はいかほどだ」

魔王がドレスアップしたヨルヨンを見据える。

びくっとヨルヨンが背筋を伸ばすと、テオの足に抱き着いてしまった。


隠れているつもりなのか、ちらちらと足から顔を出し魔王を覗いている。



「おとーさま、こわい?」

ヨルヨンが喋った。

・・・うちの子天才じゃね?

でもおとーさまはテオじゃなくて、こっちに言って欲しいな。


「あはは、怖くないですよーほーら、じっじにご挨拶しましょー」

テオドールが笑顔でヨルヨンを前に出す。



「・・・じっじ?」



こてん、と首をかしげるヨルヨン。

何それかわいいなおい。

あとで俺にもやってみましょうね!



ヨルヨンが「??」と笑顔のテオドールと固まってしまった魔王の顔を見比べている。


俺たちに可愛い仲間が増えた。

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