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ワイヤーアクセサリー

「つい・・・た・・・」

「ディー!ちゃんと持ってー重いー!」

斜めに持ち上がるモンスターボックス。

俺に体力が無かったとかは関係ない。

箱が意外に重かったんだ。



取手を持って2人がかりでテオドールの部屋まで運んできた。

「寝室でいいかな。できた時にすぐわかるよ!」

「・・・それ、箱が壊れて襲いかかってこないよな?」

パカーンと魔物が出てくるのを想像する。



「はは、ディー君は心配症だな。大丈夫だよ。・・・多分」

ノルトラインが大丈夫と胸を張る。

でも小声で多分って言っただろ!聞こえたぞ!



「これに入れて一晩経てば、中にガーディアンが作られるんですよ。テオ、入れてみなさい」

トライドットに促され、深紅の鉱石を片手にテオドールが箱に近付く。


「えい」


その材料である深紅の鉱石をポイッと箱の中に投げ捨てた。


モンスターボックスがゴミ箱の扱いになってる・・・。


「はぁ・・・テオは物の扱いが雑なんですよ。だから魔物作りも失敗するんです」

トライドットが呆れたようにため息を吐いた。


確かに雑だな。

中敷きにクッションを敷いておいてよかった。


「えーそんなことないよー」

「いや、テオ。もっと丁寧に、優しく扱うんだ。欲望の渇きを思い浮かべ、深紅の鉱石に力が集まるよう考えてだな・・・」

「考えたよー」

ノルトラインにもダメ出しされるが、全く聞き入れていない様子だ。



欲望の渇きか。

確か銀色鉱石を魔物にする時、「これに入りたいって思わせる術」を鉱石に入れるとか言ってたな。

そりゃ雑な扱いをされたら入りたくなくなるわ。

・・・もしかして深紅の鉱石も加工しないといけないのか?



「テオ、これも魔物作りみたいに加工するか?」

「え?!できるの?」

「削ったり糸にしたりってのは難しそうだからな。ワイヤーアクセサリーをつける程度だけどな」

俺は鞄から銀のスプーンを取り出す。



「ワイヤーアクセサリーってなに?」

「ワイヤーを加工して華やかにするんだ」

俺は銀を【糸作成】でワイヤーを作る。

銀色鉱石で作ってもいいが、モンスターになったら困るからな。

N糸作成の時のように圧をかけて、編み込んで・・・。


できたワイヤーをくいっと曲げるが、以前作った時のように折れたりはしなかった。

レベルが上がってるのかな。


「・・・あ、ペンチとニッパーって無いか?あとマニキュアがあればより華やかにできるんだが・・・」

ワイヤーを作っておきながら道具を持っていなかった。


「ディーはおっちょこちょいだなー。よし!僕がマニキュアをとってくるから、ノル兄様は道具をとってきてね」

そう言うと部屋から早々に出ていった。

誰がおっちょこちょいだ!


「えーと、ペンチとニッパーか。確か工具箱にあったから持ってくるよ」

「すまない。さっき気付けばよかったな」

「いや、むしろ助かったよ。テオってば注意しても全然聞かないんだから」

行ってくるーとノルトラインも部屋を出ていった。



部屋に俺とトライドットが残された。


「・・・なぁ、その・・・中級ダンジョンに出た炎の矢の女の子って、どんな姿だった?」

「冒険者育成学校のヘルメットと制服を着てたから見た目はなんとも・・・気になるのですか?」

じっとトライドットが俺を見る。

「・・・3年前に戦争に巻き込まれて家族が生きているかわからない。妹かもしれないと思ってな・・・」

「そうでしたか・・・」



トライドットが紫色の目を細め、ニコリと笑う。

「中級ダンジョンに帰ったら、その女の子が誰なのか調べてみます」



「え?」

「家族かもしれないなら、確認したいでしょう?」

「・・・そうだな」

妹かもしれない。

でも・・・違うかもしれない。

知りたいのに、知りたくなかった・・・。




「ディー!とってきたよー」

その手には赤紫色のラメ入りマニキュアが握られていた。

「高級そうなマニキュアだな・・・どこにあったんだ?」

「グラ姉様のとこー」

なるほど。()ってきたか・・・。

「あーあ、怒られますよー」

「1回くらいバレないよー」

絶対バレるやつだな。

後で怒られよう。



ノルトラインが工具箱を片手に戻ってきた。

「ワイヤーアクセサリーってどう作るんだ?」

「基本的にどうやるって決まりはないな。ペンチとペンで曲げたり、ニッパーで切ったり、マニキュアフラワーを作ったりだな」

「マニキュアフラワー?」

テオドールが首を傾げる。



「乾かすのに時間かかるから、マニキュアフラワーから作るか」

俺はペンチを取り出し、ワイヤーをペンに巻き付ける。

「このひと巻きが花びらになるんだ。5つ作って、先を潰して形を整える」

指で潰せば、先のとがった花びらになった。



「ディー君は器用ですね。これスキルではないのでしょう?」

「まぁ、見よう見まねかな。この花びらにマニキュアを塗るんだ」

コツは筆先を横に寝かせること、内から外に向かって塗ることだ。

表面張力で花びらに赤紫色の膜が張る。


「おー!綺麗!」

「扇いで乾かすとシワになるからな。吹いたり扇いだりするなよ」

3人とも口元を押さえてマニキュアフラワーを見ている。

こうやって見ると兄弟なんだなーと微笑ましくなる。



「乾くまでにワイヤーアクセサリーで石を囲っておくか」

マニキュアフラワーに使ったワイヤーより、やや太めのワイヤーを準備する。


「ペン先に巻き付けて・・・」

先のとがった部分に巻き付けると、周の長さの異なる渦巻きができた。


「これをペシャンコにする」

すると渦巻き模様に巻かれたワイヤーができる。

それを同じワイヤーに間隔をかけて3つほど作った。



「次は石の固定だな」

直接巻き付けては石に傷が付いてしまう。

ちょうどコルクと同じサイズだったから、コルクにワイヤーを巻き付ける。


重ねたり、隙間を広くとったり。

「これを向かい合わせに作るんだ。そうすれば石に穴を開けなくても固定できる」

コルクからワイヤーを外す。

下は鳥の巣、上はどんぐりの帽子のような形だ。



「で、渦巻きと組み合わせる」

1本のワイヤーで作り上げる人もいるが、俺は初心者だ。

固定に使うワイヤーと飾りのワイヤーは別にしている。

渦巻きを3つ間隔をあけて配置し、余ったワイヤーをペンチで捻って模様をつけた。



最後にマニキュアフラワーのワイヤーをペンチで固定すれば完成だ。

「こんなもんかな」

ワイヤーにすっぽりと収まった深紅の鉱石。

所々に渦巻きやうねりを加えた銀のワイヤーがアシンメトリーで見ていて飽きない。

そして上部にちょこんと咲いたマニキュアフラワー。

赤紫色で深紅の鉱石との相性もよく、可愛い仕上がりになっている。



「よし、テオ。これを卵を扱うように優しく箱に入れろ。さっき出来てただろ」

卵として扱えばいいだろう。

少なくとも投げ入れるよりは正解に近いと思う。


「え?テオできたの?いつ?」

ノルトラインが少し驚いたように俺を見る。

「モンスターボックスの説明聞く前に。卵温めようとしてただろ?」

何故か3人の視線が俺に集まった。



え?なに?



「そっか!」

元気良くテオドールが返事をすると俺から深紅の鉱石を受け取り、両手で包み込み優しく入れ直した。



パタンと蓋をして鍵を閉める。



ノルトラインがモンスターボックスを優しく撫でる。

「ちゃんと入れれたな。そうだ、お祈りしてみたら?早く生まれておいでーって。ほらディー君も!」

ノルトラインに押され、俺とテオドールは箱の前に並ぶ。



「お祈り・・・すっごい久しぶりな気がする」

テオドールは箱の前で手を組んで膝付くと目を閉じた。



イケメンがやると絵画のようだ。



かなり絵になる光景なのに、「強いの・・・強くてかっこいいの・・・」とブツブツ聞こえるので台無しだ。


少年らしい純粋な思いがあるのだろう。

俺も同じように手を組んで膝をついた。



・・・ガーディアンって言われるくらいだからな。

きっと俺が作ったメイドさんより強いんだろう。

きっと羽とか生えてて・・・そうそう、ガーゴイルって魔物みたいにダンジョンと俺たちを守ってくれるんだ・・・。




光や音のエフェクトは無い。

俺たちは粛々と箱に向かって祈りを捧げた。


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