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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第5章 上級ダンジョン
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持ちつ持たれつ

「ディー!見てみて!すごい出来だよ!」

「ちょっと静かにしような・・・頭痛いんだよ・・・」

飲み過ぎた頭を振りながら、テオドールと共に完成したダンジョンを眺めていた。


昨日は飲み過ぎた。

気づいたらルーイに跨って上級ダンジョン前まで来ていた。

どうやら自力で帰れないくらい飲んでしまったようだ。


戦争の原因なんていちいち考えたことなんてなかった。

でも魔石云々は原因の一つとしてあるって程度だろう。

だってアペリティフには魔物も魔石もないし。

酒が入って冷静に考えられなかっただけだ。



「前にリフォームしたことがあったからね。今回は壊れている個所を直すだけにしたからあっという間だったよ」

大きな広間にはらせん状の階段が緩やかに伸び、さながら王宮のようだった。

初級ダンジョンの作りに似ていたが、こっちの方が広くて豪華だ。

12層もあるのだから、それぞれ見て回るだけでも大変な労力だっただろう。


「テオは魔物作りは全然だが、ダンジョンリフォームは得意なんだな」

「むー魔物作りはまだ練習中なだけだよ。リフォームは得意でね、天才だってお父様にも褒められたんだ」

あぁ、弟分たちに「天才だ!」っておだてながらしつけしていた光景が思い出される。

きっと俺とその親父さんは気が合うだろうな。




「各部屋の魔物たちも魔石ができる頃合いだね。えい!開放!」

ぐらりと地震のような地響きが起きる。

・・・浮浪者を追い出す時もこうして地震を起こした方がよかったんじゃないか?

ぼんやりする頭を働かせながら各階の隙間から魔物の動きを確認する。


スカーフの巻き方に個性のあるゴブリン。

エプロンをひらり、くるりと舞うゴースト。

リボンを纏ったスライムにぬいぐるみの狼と鳥。



「あれ?なんか見た目違わないか?」

最下層に近い魔物は凝った外見をしている。

「ほんとだー。何か違ったのかな?」

3層のぼんやりした顔の狼と違い、11層の狼は鋭い顔つきで体に文様が浮かんでいる。



「・・・贔屓目に見るのを控えても、可愛らしいと思う。うん」

俺は二日酔いの頭で考えるのを放棄した。

俺の作った魔物たちは優雅で洗練されている。

それでいいじゃないか。


なんなら一昨日浮浪者に倒されたぬいぐるみたちだっておかしな点がある。

中身の綿は消えたが、刺繍は残っていた。

テオドールに聞いても「ふしぎー!」だそうだ。

ほんとだね。不思議だね。

もうそれでいいじゃないか。


「ディーの魔物っておしゃれさんだよねー」

テオドールは笑いながら魔物が出て行った部屋を埋めていった。





いま、俺は自分が歩けなくなるまで飲んでしまった反省を込めて、全力でパンを捏ねている。

「もう!絶対に!飲みすぎない!」

こね!こね!こね!とリズミカルに捏ねていく。


もう飲みすぎない・・・何度目のセリフだろう。

夜中もまだ胃に酒が残ってて、気持ち悪さで起きてしまった。

「テオ・・・牛乳、少し貰うぞ・・・」

牛乳で吐くと、喉が痛くないんだ。

もう吐き方すらマスターした俺は、テオドールに背中をさすられながらトイレを占領した・・・。




「あああ!情けねぇ!」

すぐにネガティブシンキングする癖はどうにか治さねば。

イースト菌を加えた強力粉がムニムニと俺の嘆きを吸い取っていった。




一次発酵後。

「・・・ぜんっぜん膨らんでねぇ」

どうしたパンのタネよ。

ネガティブを吸い込み過ぎて萎んだか?


「あー捏ねが足りなかったかな?水分は足りてるねー」

ツンツンとテオドールがパンのタネをつつく。

「あと用意した地下水が冷たかったかなー」

「やけに詳しいな」

携帯食糧ばかり食べて自炊してないやつの意見じゃない。



「グラ姉様がよくパンやお菓子を焼いてくれたからねー」

そういえばテオドールの家族について聞いたことがなかったな。

生まれた時からこの姿で、500年歳を取らない。

その上魔石が無事なら不死身らしい。


そんな存在に家族がいる。

ちょっと聞いてみたいが、いまこうして1人でいるんだ。

言いたくないことまで聞いてしまうかもしれない。


―――ま、そのうち自分から言うだろう。

俺はポジティブシンキングに生きると決めたんだ。



「このパンのタネはピザにしよう。シーフードピザだ」


この日の夕食は、上に乗ったシーフードが沈み込むくらいモチモチのピザになった。




たまにはパン作りを成功させたいから、今度作る時はテオドールにも手伝わせよう。


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