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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第5章 上級ダンジョン
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古都バルバラ

「上級ダンジョンが復活したそうだ」

「それに魔王を名乗るものが現れたそうだぞ」

「魔王なんて、200年前に魔王ミルドレウスが倒されて以来じゃないか」

「初級ダンジョンも魔物が出たらしい。これは稼ぎ時だぞ」



浮浪者を締め出して、まだ1日。

バルバラの町はダンジョンの話題で賑わっていた。

テオドールの話では数ヶ月に1回の頻度でサイコ騎士は捕まえに来るらしいので、俺はルーイに跨り安心して買い出しに来ていた。



大きな山と麓に上級ダンジョンを有する古都【バルバラ】。

古くから続く街並みは、冒険者が踏み鳴らしたであろう石畳が続いている。

少し歩けば港もあり、各大陸との貿易も盛んなのだそうだ。


商店街には海の幸と山の幸、畑の恵みなどなど。

品揃えが豊富にあり、見ているだけでも楽しい。



「お!兄ちゃん、見かけない顔だな。買い出しなら俺の店にしな!」

黒いエプロンの似合う日焼けた肌が香ばしい色をした男が俺を呼び止める。


・・・そうだ。パンを焼こう。

そう思えるくらいこんがり焼けた肌が光っている。

俺の脳裏にはニックの焼いたパンが美味しそうな湯気を上げていた。


「あぁ、最近携帯食糧ばっかりでな。自炊するための食材を探してたんだ」

「それなら【シーフードミックス】なんてどうだ?ここで取れた新鮮な魚介類を少しずつ入れたパックだ!」

ドーンと台に出された箱の中には、エビ、イカ、魚などがビチビチと跳ねている。

よく見れば底の方には艶やかな二枚貝や巻貝が入っていた。


「欲しい分だけ量り売りだ。もちろん刻んでやるし、【冷凍】スキルで1日は凍らせれるぞ」

「それはありがたいな。でもあまり重くなると他のものが買えないからな・・・」


魔物にする布はダンジョンに置いてきたから5kgまでは鞄に積められる。

硬貨は無重力と複製不可の付与が二重にされているからどれだけ入れてても平気だが、今日は食材だけ買いに来たわけではない。


支度金で貰ったコップや皿はあるが、鍋や調理器具がひとつもないのだ。

テオドールはいつも携帯食糧で済ませていたらしいが、俺としては落ち着いた環境で温かい料理が食べたい。


鍋に調理器具に、小麦粉や調味料、肉と野菜も買い足せば5kgを超えてしまうかもしれない。

5kg以上になると道具屋のじいさんに貰った鞄からはみ出してしまう。

そうなるとルーイに括り付けるしかなくなる。


ここでシーフードを買ったとして、あまり大きな氷の塊にされると困るのだ。


「それなら隣の店で鞄を買い足したらどうだ?」

「おう!呼んだか!」

隣の店から体格のいいお兄さんが笑顔で近付いてくる。

・・・呼んでないのに来た!


「ふむ、5kg収納か。かなり使い込まれているな!」

ひょいと俺の頭越しにカバンを見る。

俺が小さいんじゃない、この兄貴がでかいんだ。


「こんなに大事に使ってくれるなら造り手も満足だろうな。よし、50kg収納を売ってやろう!もちろん値引きさせてもらうぜ!」

「よかったな!」


体格のいい日焼けの男と体格のいい元気な兄貴に押し切られ、俺は金貨1枚で50kg収納の横掛け鞄を買い、その中に銀貨5枚分の冷凍したシーフードを入れてもらった。

まぁ、相場より安いし儲けたと思うことにする。




その後調理器具や食材を鞄に積めれるだけ買うと、酒場で情報を得ることにした。

上級ダンジョンのことや魔王について聞きたいからだ。


ルーイを外に繋ぎ、店に入ると知った顔がいた。

「あ、お前は、・・・えーと誰だったっけ、名前が出てこねぇ」

酒場にいたのは隣町で情報をくれたモーセだ。

「ディートハルトだ。あんた隣町からこっちに来てたのか」


「あぁ、こっちに来てびっくりだぞ。なんでも上級ダンジョンに魔物が出るわ、魔王は出るわ。その上、地下への階段を塞がれて調査もできないときた。冒険者の末裔の血が騒ぐってみんな大賑わいだ」

楽しそうにビールをあおる男たちが視界の端に映る。


「今日にも突っ込んで行きそうだな・・・」

あんな屈強な男たちがなだれ込んでくるのか。

昨日作った魔物たちは全滅するだろうな・・・。


「それなんだがな。なんでも魔王は討伐禁止とお触れが出たんだ」



「は?」



「魔王が魔物を連れてきてくれたんだ。喜んで迎え入れようってのが今日発表されたんだ」

おいおい大丈夫かこの国。


「なんせ魔王が討伐されて200年。魔物がいなくて魔石を主力産業に据えていた国は没落か少ない魔石を取り合って戦争に舵を切ってきたんだ。人間同士の争いを止められるかもしれない魔王は救世主さまさまだぜ?」



言われて、俺は瞬きをすることすら忘れてしまった。




「・・・まさか争いの根本に魔石の取り合いがあるなんて知らなかった」


「まぁな・・・一応表向きには正義だの正当性だの、聞こえのいいこと並べてるからな。資源がなきゃ隣の国から・・・子供にはちっと早かったな、すまん」


隷属の首輪を付けた子供のほとんどはゴミスキルで捨てられたか親を戦争で亡くしたかだった。

多分俺のことも戦争孤児だと思ったんだろう。

俺の頭を軽く撫でると酒のつまみを分けてくれた。



炒り豆を食べながら、家族の顔や奴隷商のみんなの顔を浮かべていた。


戦争の原因なんて色々あるだろうけど・・・魔石のため?

そりゃ魔石は色々使えて便利だけどさ・・・そんなことのために戦争してた?

戦闘スキルじゃないと悲しまれたのは、戦争で役に立たないからだ・・・。

戦争は・・・魔石が欲しかったから?


誇りのために剣と盾になるんじゃなかったの?



魔石を手に入れる手段がないから、俺は・・・僕は邪魔者になったの?




ぐるぐると思考の渦に引きずり込まれる。


酒を呑む手が止まらなかった。



そんな俺に、モーセは黙って1杯奢ってくれた。

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