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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第3章 初級ダンジョン
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初仕事の成果

馬車に揺られるのは体格の良い男たち。

その手には大剣や盾など昔の冒険者を彷彿とさせる。



絶好のダンジョン攻略日和だ。もちろんダンジョン内には日の光は入らないが、そういうことじゃない。

ロマンとか、気分の問題だ。



おおよそ200年ぶりとなる初級ダンジョン【スタータの洞窟】行きの冒険者御一行様。その乗り合い馬車に俺たちも乗せてもらっていた。


「俺の時代に魔物が復活するとはな」

「代々伝わってきた大剣を持ってきた」

「スキル効くんだよな?初級だから強くないよな?」

口々に同じパーティーのメンバーと会話をしている。その顔はこれから冒険に出る少年のように輝いている。


みんな初級ダンジョンのリニューアルを心待ちにしていたようだ。

まだリボンスライムしかいないけど、きっと初めて魔物と相対するんだ。緊張する声も聞こえてくる。


もちろん、緊張しているのは俺たちも同じだ。

先回りして最深部の小部屋から冒険者たちをウォッチしていこう。




俺たちはダンジョンに着くと一団から離れ、裏手の紋章に触れる。

すっと景色が変わり・・・。


―――――俺たちは凍り付いた。


「―――どこかなー?どこかなー?」


女の人の声。それにブオン、ブオンと空気を裂くような重い不快音。


――――なんだこれ・・・小部屋の外に何がいるんだ・・・?


テオドールに目線を送るが、テオドールは困ったなーとでも言いたそうに頬を掻いて微笑んでいる。


「あーここかな?ここかなー」

壁一枚隔てて声が近づいてくる。俺はホラーな現場に遭遇したのか?いや、なんでこんな殺気をまき散らす女がいるんだ?スライムたちがやばい進化でも遂げたか?

叫びださないよう口元を覆い、立ちすくんでしまった。




「―――おい!なんだこれは!」

がやがやと壁の向こうから複数の会話が聞こえてくる。

「あんたが全部やったのか!」

さっきの一団がやってきたようだ。

「あぁ、悪いな。魔石はくれてやる。…帰りますよ、隊長」

男の声がする。ちょっと渋い。

「ふふ、ふふ、またね、またね」

ざりっと壁をひっかく音がして、ダンジョンには似つかわしくない軽やかな足音が遠のいていく…。




辺りが静かになったのを認識し、俺は膝から崩れ落ちた。

なんだったんだ、あれは・・・。



テオドールの能力で壁を開き、最深部広間に出てみる。

そこにはボロボロのリボンが無残に転がっていた。


それだけじゃない。

リフォームしてヒビ一つなかった壁一面、天井に至るまで深い爪のような跡が無数に存在していた。


「うっわ・・・なんだこれ」

俺は慎重に周りを見回している。

「さっきの声のやつか?・・・魔物か?」

「違うよー人間だよ。スキル【サイコキネシス】の騎士、ミリア・シュティール。【ミッドガル国】の親衛隊【十字架(クロス)レンチ】の隊長だね。通称【サイコ騎士】」

テオドールが軽やかに答える。


「知り合いなのか?」

「うーん、知り合いではあるよ」

「なんだ、煮え切らない返事だな」


「えっとねー、僕を追いかけてくるの。多分ここももうだめだね。荷物まとめて逃げよっか」

は?追いかけてくる?目的は?

まさかこいつが魔物を作ることを知って追いかけているのか?それなら今度は貧困奴隷から犯罪奴隷に・・・いや、むしろ処刑の可能性が高い。


「理由は後回しにしてやる。せっかく作った城だが、とにかく逃げるぞ。こんなスキル持ちとやりあっても勝算がない」

俺はボロボロになった壁を睨む。



「あ、それならね、隣町の【アサラム】に行こう。ここから半日くらいだけど歩いていけるはず」

ここに来るまでに昼前になってしまった。

今から歩いては門がしまってしまうかもしれないし、狼たちの行動する時間帯に直撃する。


俺たちは夜が明けるまでダンジョンの小部屋で過ごすことにした。

俺は各階のボロボロリボンを回収し、できるだけ修理を施した。


せっかく作ったのに・・・。



俺たちの魔王としての初仕事はサイコ騎士に蹂躙されて終わってしまった・・・。


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