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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第10章 アーステア大陸
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旅立ち

「・・・寒い」

「ほら、ディー起きてー。空間開いてー」

昨日まで暖かかったのに、今日は突き刺さるような肌寒い朝を迎えている。

そろそろ雪が降ってもおかしくないだろう。


魔物のルーイを倒して2日が経った。

ダンジョンに生えていたキノコの収穫と魔石、ミスリルの回収を終えていた。


寝ぼけながら指パッチンで空間を開くと、テオドールとヨルヨンがテキパキとウールンたちの世話をしていく。


俺は布団に潜り直した。

・・・手伝う気が無いわけじゃない。

俺は空間に入れないから任せているだけだ。

ほんと、毎日・・・ありがたい・・・すやぁ・・・。


二度寝から起きたら魔物の補充をしようと思っていた矢先、またジェスカが来訪してきた。




「西の魔女と噂されるジェスカ様に会えるなんて光栄ですわ!」

「あらあら。ヒューム家のお嬢様がこんな所で何してるの?」

「もうあの家から出たので今はパーニャとお呼びくださいな」

「わかったわパーニャ。ああ、敬語はなしよ」

「もちろん!」


パーニャとジェスカが笑顔で応対している。

貴族だから顔くらい知ってるんだろう。


俺はジェスカのために用意した箱をちらっと見る。

箱の中には束になったミスリルが収められていた。


武器や防具だけでなく、魔石の動力を繋ぐのに最も適した素材として高値で取り引きされるミスリル。

テオドールが来てから当たり前のように魔石やミスリルが手に入っているが、どちらも希少な素材だ。

魔石やミスリルが採れると知れれば、今以上にやばい連中に目をつけられるかもしれない。

だからこそ、いくら味方になってくれた人であっても出処は教える訳にはいかない。


とりあえず念入りにカモフラージュしていこう。


俺はジェスカにミスリルの入った箱を手渡した。


「この量と質なら十分に取引ができるわね・・・でも何で糸状なの?」

「どこに悪意ある耳があるかわからない。出処のヒントとなるような形状では出せないから、俺が糸作成で変えておいた」

「あら。信頼されてないのね。でも正解よ。これの流通経路だけでも商業ギルドに登録できるほどの価値があるもの」

「商業ギルドって職人じゃなくても登録できるのか?」


「ええ。職人の『技術枠』商人としての『販路枠』で登録できるはずよ。貴族なら商人として販路を確約して、お気に入りの職人をお抱えにした『パーティー登録』にした方ができることが増えていいかもしれないわね」

「そうなのか・・・うーん・・・」


資金が豊かで情報が多く集められる貴族を商人登録して、職人をお抱えにするほうがいいのだろう。


・・・でも俺、職人のがいい。


まだ商業ギルドに入るための資格がどの程度なのかさっぱりわからないが、せっかく糸作成とソーイングがあるんだ。


それに俺、潤沢な資金も横の繋がりもない元貴族の奴隷だしね。


どうせならテオドールを商人登録させよう。

テオドールだって自分で稼ぎたいだろうし。


「悩むなら相談に乗りますわ。ディー様を筆頭に魔王軍を大きくすることが私の使命ですもの」

「え?魔王軍?」


パーニャがドーンと胸を張っているが、魔王軍なんて初耳だ。


誰だ、こいつに変な使命感を目覚めさせたのは?

最初に出会った頃の卑屈だけどまともなパーニャ、戻ってこい!


「それにこれを資金源にアペリティフ領を取り戻す交渉の場(テーブル)を用意することができますわ。商業ギルドに登録すれば商業国家ミッドガルの庇護も期待できます。敵対勢力の力を削ぐために必要な情報、戦力、資金。全て手にすることも可能ですわ」

「そう・・・なのか」


時々ポンコツな事言うようだが、パーニャは仕事できるタイプか。

さすが貴族としてしっかり教育されてきただけはある。



「アペリティフ領を武力で取り戻すにしろ交渉するにしろ・・・シェリーちゃんに戻ってきてもらった方がいいんじゃない?」

「・・・シェリーは戦争に参加させない」

お父様がジェスカの言葉にムスッと答えている。

「わかってるわよ。でもベラルーラ国だってこっちが万全な状態で挑んでくるほどバカじゃないの。居るだけで抑止力になるくらいシェリーちゃんは有名なのよ。もちろん貴方もね」

「ふん・・・」


お父様・・・もうシェリーを戦場には出さないって言ってたな・・・。


・・・あの日、俺がいなかった戦場で何があったんだろう。




「なぁ、難しいことは領主さまに任せて、こっちでアナリーゼ宛にレックで動画撮ろうぜ」

「あれだけ一方的に悪者扱いされたんだ。やり返してやる」

「嬉しい・・・2人とも私のために怒ってくれるのね・・・」

隣でパーニャがうっとりと呟いている。


誰かと思えばパーニャの彼氏1、2か。

自警団で鍛え抜かれた逆三角形の筋肉・・・居るだけで部屋が狭く感じるな・・・。


「”あの”アナリーゼねぇ・・・ふふ・・・こっちでミハイルと話してるから、ディー君も行ってらっしゃいな」

「え、ええ・・・わかりました」

「楽しみにしてるわね」


・・・何、その笑顔。

俺が揉め事を起こすと思ってる顔だよ?!

心外だよ。全く。


姉であるパーニャが不自由なく過ごせていることを動画で上げれば勇者候補たちも憎悪の対象として俺たちを見ないようになるかもしれない。

俺だってそのくらい深読みして行動できるんだ。


俺はジェスカに見送られながらテントを出ていった。





隣のテントに入ると、彼氏1、2とパーニャ、それにラースとヨハンがいた。


「よし!俺が撮ってやる。ラース、レック貸して」

「ヨハン、しっかり撮ってくれよー」

「あはは、ボタン間違えんなよー」

パーニャがソファに座り、両隣に彼氏1、2が座った。


「レック見るの2度目だよー」

「おとうさま、ヨルも映りたい」

何故かテオドールとヨルヨンも俺に付いてきた。

邪魔にならないよう注意しないとな。




ヨハンがレックを構える・・・が、画面を見て浮かない顔をしている。


「うーん・・・何か足りない。これじゃあ再生回数(すうじ)が稼げない・・・あ、坊ちゃん何か服とかあります?」


服?と思ったが、なるほど。

パーニャは薬師の黒いフード付きのローブという地味な服装だ。


これはアナリーゼに文句言うための撮影だもんな。

もっとインパクトのある何か・・・。


俺はガサゴソと鞄を漁った。


「・・・えっと化粧品は使えるな。あとは・・・あぁ、水着じゃダメだな」

「坊ちゃん、何で女物の水着なんて・・・」

「勘違いするなよ?ベニチェア王国でスキルアップの書に付属として付いてきたんだよ」

「水着が挟まった書物っすか?・・・坊ちゃんマジで言ってます?」


マジだよ?!

何その痛いものを見る目は!!

あの悪意全開のメイド軍団にデコボコのない女扱いされて手に入れた逸品だぞ?!

気になる部分をカバーできる優れもの(Mサイズ)なんだからな!


「でも水着っていいかもしれないな。思わず見ちゃう(エロ)って宣伝効果高いし」

「じゃあ着替えてくるわ」


パーニャ・・・もっと自分を大事にしなよ?


化粧品と水着を受け取るとササッとテントを出ていった。



「あ!そうだヨハン、パーニャが着替えてる間にこっちの宣伝してくれるか?」

「坊ちゃん、これなんです?」

「ウサギのあみぐるみだ。アナリーゼが空間作成のアイテムだと思い込んでたあみぐるみをカスタマイズしたんだ。このあみぐるみが空間作成のマジックアイテムじゃないって伝えて欲しい」


あみぐるみの創始者(イザベラ)がいるのに、あみぐるみそのものが不和の元凶のままというのは許し難い。

どうせならここであみぐるみの良さを宣伝しよう。

それにあみぐるみが空間作成のアイテムじゃないと知れれば、アナリーゼの情報力に疑問を持つ人も出てくるはずだ。

1度で2度美味しい宣伝になる!


「そりゃいいっすねー。あ、イザベラにこの事知らせてくるっす!」

ラースがテントから出ていった。


「じゃ、まずはこれの紹介するか」


小さな白うさぎのあみぐるみは、いつも以上に眉毛をキリリとさせているようだった。





・・・どうしてこうなった。


「アナリーゼちゃん、ボクうさぎのアーノルドだよ!ボクのニンジン真っ赤で美味しいよ!」

「王様のニンジンより硬くて甘いよ!ハハッ!!」


彼氏1、2があみぐるみをクイックイッと操りながら、卑猥な動きをさせている。

ゲラゲラと下品に笑っているが、演技だろ?な?演出なんだよね?煽ってるだけだよね?


・・・いや、言い訳にもならないな。

ダメだこれ。あみぐるみの品位が陥れられてしまう。


ラースが戻ってくる前に取り直しを提言しよう。


「ちょっとま・・・」

「着替えて・・・きたわ!」

カオスが形成されつつあるテントの中に、水着パーニャが現れた。


クロシェのビキニ姿。

トップスはパーニャが両手で隠してしまっているが、ふわりと広がるフレアタイプのようだ。

胸元をふわりと広げることで小さな胸を大きく、そして胸が大きく見えることで腰の細さ(クビレ)を強調させる仕上がりになっている。


職人の心意気を感じていたが、パーニャの表情が青白い。

化粧をして目元がパッチリとしているが、頬に赤みはなくカタカタと震えていた。


・・・そう言えば今日は一段と寒かったな。

暖房のないテントで水着姿とか震えるわ。


「パーニャ、俺たちの間なら寒くないだろ」

「そうね・・・ありがとう、ライナス・・・」

「お前ばっかずるいぞ。ほら、もっとこっち来いよ」

「あんっ・・・乱暴にしないで、ジャン・・・」


「・・・・・・」

イチャつくんじゃねぇ!!


パーニャは彼氏1、2に挟まれるようにソファに座り直した。


でも腰を抱かれ、絡め合うように座るその姿は・・・。


「ナイスですねー!ほーらパーニャ、こっち見て自己紹介しなよ」

「わ、私はパーニャ。アナリーゼのお姉ちゃんだよ・・・」

プルプルと震えながらダブルピースをする。



・・・絵面(えづら)ーーー!!!


なんで今から”ナニが始まります”撮影会開いてんだよ!!

俺は鞄から布を取り出してテオドールに目隠しをし、シーツをヨルヨンに被せた。

この教育に悪い状況が見せれるか!!


いや、それより・・・。


「サイズが合ってない・・・だと・・・」

ダブルピースの為に退けた手の下で・・・フレアの下から胸がはみ出していた。

いわゆる下乳である。


「え?ディー?なに?」

「パパさま見えないー!」


「・・・・・・くっ」

バカな・・・Mサイズでは収まらないのに・・・何着てんるだよ!!


本来であればMサイズが収まる空間を3Lサイズが占領するんだ。

そりゃ漏れるって。

ローブ姿の時にサイズ測定しておくんだった・・・。


くっ・・・俺の前でサイズ違いなんて着させないぞ!!


俺は鞄からスキルアップの書を取り出した。

「ねーディー、これ何?サイズって?」

「・・・テオ、これ持ってしゃがんで。ヨルヨンは耳塞いでてね」

「えー?なんでー?」

「パパさま見えないー!」

シーツを被せたヨルヨンがモゴモゴと動いている。

俺はテオドールにスキルアップの書を持たせて床に座らせた。





「いいねいいねー、もう少し上目遣いでいってみようか」

「アナリーゼ、貴女の自尊心ってどこまで大きいのかしら?そんなに大きいとすぐ傷付いて大変ね。次はどんな不満が出てくるか、お姉ちゃん楽しみだわ!」

「パーニャちゃん、もっと!大胆にいこう」

「う、うん。アナリーゼ!私、真実の愛を見つけたの!すっごく気持ちい・・・幸せなの!!」

「いいよいいよー、どんどんいこうか」


ええい!!

そのサイズの合わない水着姿でポーズを取るのをやめなさい!!

俺はクロシェのセットを取り出し、テオドールの広げたページを読み飛ばしながらテキパキと編んでいく。


本来なら胸が小さいとかクビレに自信が無いというのをカバーするのに長けているが、パーニャには必要ない。

あのでかさならフレアタイプじゃなくて普通のデザインでも十分だろ。

今必要なのは布面積だ!!

俺はかぎ針を動かしていった。




「あ、これも宣伝しますわ。ある薬の副産物なんだけど、すごくいい感じにキマれる薬なのよ。材料いっぱい貰ったからどんどん作るわ」

「あーあれか・・・昨日凄かったもんな」

「名前はエスクタしっくしゅん!!」

「あはは風邪引いちゃったかな」


おいぃぃい!今ダメ絶対な単語出ただろ?!

ポジティブキノコのやばい成分で何作ってるの?!



「ナイスですねー。ほら、坊ちゃんも一言・・・あ、こっちもお楽しみでしたか」

ヨハンがレックを構えたまま、こちらに向き直った。


え?お楽しみ?


俺は自分の状況を確認した。


跪き、目隠しをされて本を掲げるテオドール。

その目の前で女性の水着を編む俺。

不規則に踊るシーツ。


あ・・・これダメなやつだ。

何がダメとか説明できないが、俺の本能が告げる。

これは、ヤバいと。


「ヨハン、すぐに消して!」

「えーしょうがないですねー。おーい、ラース。これどうやるの?」

ちょうどイザベラを連れてテントに戻ってきたラースにレックを渡す。

「このボタン押すんだよ」


ポチッ・・・。


・・・。


『これ(消すには)どうやるの?』

『(動画を上げるには)このボタン押すんだよ』


「・・・ふっ」

・・・俺は自分の指にはまっている解呪の指輪をそっと撫でた。


・・・ピコーン!

・・・ーピッーコココココココッ!!!!!


「うわっ!うっさい!!」

俺めがけて呪いが放たれてくる。

いつものやる気のない数じゃない。


世界が!俺の敵に回ってる!!


「ヨハン!消してって言ったのに!!」

「ぶはっ!坊ちゃんすいません!」

わざとか?

わざとだろ!!


「あらー・・・こっちにも来てるけど、ディー様の比ではありませんね」

パーニャも解呪の指輪を装着していた。


・・・左手の薬指に。


この2日の間に彼氏1、2は、旦那1、2に昇格していたようだ。



「ディーは何でそんなに攻撃されてるの?」

「あらテオドール様、もちろん貴方様を侍らせ目隠し放置プレイをした挙句女性用の水着を編むという変態の極みに興じていたからですわ!」

「パーニャ!黙って!教育に悪い!」


ヨルヨンの耳を塞ぎながら、編み上がった水着を投げつけた。





「面白い動画を上げたわね。再生回数がどんどん更新されていくわ」

「私も水着になった甲斐がありますわ」



お父様とジェスカのいるテントに戻った俺たちはパソで先程上げた動画を見ていた。

あみぐるみが下ネタに走る人形劇、ほぼアウトな撮影会、理解の範疇を超えた状況で編み物を嗜む俺。


・・・カオス。


「あらあら。やっぱり問題を起こしたわ。ほんと驚きよね」

ジェスカは楽しそうに動画を見ている。


俺だって意図した内容と全然違うものができて驚いてるよ!


再生回数の伸びが落ち着く頃、パソにランプが灯った。


「あら?あちらから返事のつもりかしら?」

「しかも生配信(ライブ)?何を言うつもりかしらね」




サイズピッタリの水着を着たアナリーゼが画面に映し出された。

隣にはシーツに包まれたラザニールが座っている。


『ほほほほ!!それで勝ったつもりかしら!ディートハルト!!』


・・・なんで俺を指名するの?

俺はお前と何の勝負をしているんだ?


というか、ラザニールくん死んだ目をしてる!

誰かあの子を助けてあげて!!


『彼氏が2人もできて浮かれる浅ましい姉を持つなんて!サイズと数で勝ったつもりかしら!?私たちはこんなに愛し合ってるのよ!でもね、それより、ディートハルト!!テオドール様に何て不埒なプレイを強要してるのかしら!この魔王め!!』


「誤解だ!!」

これ一方的に言われるの?!

返事させて!

せめて俺は無実だと証明したい!!


『それにっなに?!きゃぁ!!ーーガガガ!!ラザニール様確保!よし!すぐにーーうがっ!!ーーザザザーー』



「なんだ?!」

画面が揺れ、ノイズが混ざる。

ーそして画面いっぱいにデラックスな胸が映し出された。


「「「おおおお!!」」」

ざわっと自警団が立ち上がる。


『ーー私はールリー王族の保護ーーガガガーー助力を求む!!』


ーーブツン。


「「「あぁぁ・・・」」」

画面いっぱいのおっぱいが消えると、自警団から落単のため息が聞こえた。


いや、今、それどころじゃないでしょ!


アナリーゼが襲撃されていた。

あの(デラックス)はメルリオーネに違いない。

ラザニールくん、助かったのか!良かった!


「お父様ー」

「アペリティフに住む者総出で臨む。直ちに支度せよ。出撃だ!」

「「「はっ!!」」」


・・・はい?出撃?





自警団と村人によってテキパキと難民テントが片付けられて行く。


「お父様、これは・・・?」

「・・・シェリーは今、ベニチェア王国の冒険者育成学校に留学している。卒業試験の後そのままあの国のダンジョンを探索していたそうだ」

「そうでしたか。中級ダンジョンにシェリーが立ち寄ったと噂を聞きましたが・・・」


「ベニチェア王国は内乱状態にある。・・・あの者は助力を求めたが、他国から戦力だけ来る訳では無い。すぐに出入国停止となるはずだ」

「出入国停止?なぜです?」

「・・・国内を荒らす外部勢力が入るからだ。すでに内乱状態にあるあの国に法の力はない。シェリーが心配だ。すぐにも迎えに行かねば」


「そうですね。でも皆で迎えに行く必要が?」

「・・・・・・」

「そりゃ坊ちゃん、荒し回る外部勢力って俺ら・・・っと、はいはい黙りますよー」

お父様がエスロットを睨みつけている。


「・・・お父様?」

「・・・新興貴族である我々は戦場こそ勢力拡大の場であってだな・・・」

「法に触れることをしに行く訳ですね?シェリーを迎えに行くついでに。総出で」

「・・・うむ・・・いや、それだけではないぞ。この手紙のこともある」

ピラッと見せられたのはダンカンが持っていた手紙だ。


「これによると魔石持ちの人間を作る実験がアーステア(この)大陸のどこかで行われていたようなんだ。だから我々が出撃する間、領地の守りのない村人を置いておくことは危険だと判断した。よって、皆連れていく。ディーのアイテムがあれば容易だろう?」

「そういうことで、坊ちゃん。そろそろ空間開いてくだせぇ。荷物入れるんで」

周りを見回せば荷物を抱えた村人たちが笑顔で集まっていた。



「ヨルヨン、中にいるウールンたちを守ってくれ。くれぐれも(ラム)にされないようにね・・・」

「パパさまわかりました!」

「んなこと言われなくても中の獣には手出ししませんよ」





「それじゃ、また帰ってきたらお土産貰いに来るわね。恨まれるのはいいけど、軍団引き連れて逃げ帰って来ないようにね」

「誰に言っている」

「そうだったわ。行ってきなさいな」

ジェスカはミスリルを鞄にしまい、立ち去っていった。



シェリー・・・今から行くよ。

内乱に乗じて色々法に触れることもついでにするけど・・・。

どうか無事でいてくれ。


荷物と人が空間に入っていく中。

ぴょこぴょこと揺れる耳としっぽが目に入った。


「私もこの子と行くわ・・・貴方に何かあったら、生きていけないもの・・・」

「イザベラ・・・俺は何時でもそばにいる。・・・そう、最期まで一緒だ」

「ラース・・・」



内乱に乗り込む前に何してるのラース夫婦。

いい雰囲気だが死の前フリ(フラグ)立てるな。



「ラースもイザベラも。最期とか縁起でもない。本気じゃないにしても、ちゃんとアメリアのこと考えてくれ」

親がいなくなって奴隷商に来た子は何人も見てきた。

アメリアにもあんな思いはして欲しくない。


「そうっすね。一時の感情に身を任せるかもしれないから、イザベラたちは空間から出ないようにして欲しいっす」

「もちろんそのつもりよ。ね?アメリア」

「あぅ」


「全く・・・」

「ふふ。ディー君はいい子ね。でももしラースを失ったら・・・私にとって息もできないくらい大事な人なの」

「それでも残った者は子供を大事にするべきだろ」

「ディー君は恋したことある?」

「・・・まだない」

「ふふ・・・きっとディー君にもわかるわ」

ふわりと笑いながらイザベラたちは空間に入っていった。




テント跡の穴が空いた大地が広がっている。

全て空間の中に入れることができた。


空間の中に入れない俺。

地下道を作れるテオドール。

護衛にお父様とエスロット。

この4人で目立たないようにベニチェア王国を目指すことになった。




「それにしても、息もできないくらいの恋か・・・でも子供がいるならそっちも考えて欲しいよな」

「うーん、そうなの?」

「例えばな、俺とテオどっちかがいなくなっても、ヨルヨンが幸せに暮らせるように考えるのが大人なんだよ」

「え?坊ちゃんテオドール様と夫婦なんで?」

「違う!そういう意味じゃなくて、大人としてだな・・・もう、お父様はわかりますよね?」


ピタっとお父様が動きを止めた。

「・・・さぁ・・・俺にもわからないよ」


「お父様?・・・あの」

「さーて坊ちゃんは俺と行きますか!」

「ぐぇっ」

エスロットが俺を担いで飛び上がった。

・・・青筋浮かんでるんだけど?なんで?



「うぁあぁあああ!!!」


エスロットがぴょんぴょんと飛び上がる。

捻りを加えると重量で気が遠くなる。


やめて・・・何この仕打ち・・・。

と、跳ばないで・・・うぅ・・・。


め、目立たないように出発するんじゃないのかよぉぉ・・・。


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