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転生先が気弱すぎる伯爵夫人だった~前世最強魔女は快適生活を送りたい~  作者: 桜あげは 
3章

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99/152

99:一番弟子VS伯爵



 男は確かにラムに向かって「アウローラ」と言った。

 五百年前の記憶を持つラムは、五百年前に生きた伝説魔法使いと同じ名前で呼ばれている。

 だが、シャールはその言葉が聞き間違いだとも思えなかった。

 理由はここへ来る前に聞いたフレーシュの言葉だ。


 ずっと、心の中でくすぶっていた疑惑。

 それが今、はっきりと形になり、シャールに突きつけられた。

 子供の頃から憧れていた、伝説の魔法使いの生まれ変わりが、自分の妻だったのだと。

 衝撃が大きすぎて、どう反応すればいいのかわからない。

 動揺する心を押さえつけ、シャールは目の前の現実を直視する。


(今はラムの身の安全が優先だ。迷いは捨てろ)


 肝心のラムはと言えば、気まずそうな目をシャールに向けながら、男の腕から脱出を図っている。全然出られていないが。


「ラム、話はあとで聞く。帰るぞ」


 手を延ばすが、ラムはなかなか男の腕から出てこられない。


(魔法を使えばすぐだろうに。何故使わない?)


 様子がおかしいと思っていると、ラムが困ったように声を発した。


「シャール……実は今、私、魔力を封じられているの。解除しようと頑張ってはいるんだけど、すぐには魔法が使えなくて……」


 だから力業で抜け出そうとしていたみたいだ。

 シャールはつかつかとラムの傍まで近づき、彼女の手を取り引っ張り上げる。

 瞬間、至近距離から真っ黒な風の刃が放たれた。ラムの後ろにいた男の仕業だ。

 シャールは咄嗟にラムに教わった魔法で防御する。

 反射神経のいいシャールでなければ、今の一撃でやられていただろう。


「ちょっと、エペ! 危ないじゃないの!」


 ラムが男に向かって抗議する。

 どうやらこの男が、来る途中で見た男たちの話していた「エペ」らしい。

 向こうがシャールに敵意をむき出しにしているのと同じく、シャールもまた妻に無体を働く男を軽蔑した。


「ラムを放せ」


 冷たく命令すると、エペはラムを拘束する腕に力を込めて言い返してきた。


「てめぇこそ、とっとと帰れ。素直に言うことを聞けば、多少寿命が延びるぜ?」

「断る」


 お互いに一歩も譲る気はないようだ。


「アウローラ、お前の旦那、やっちまうけど恨むなよ?」

「待って、エペ! シャール、とりあえず逃げて!」

「……!?」


 ラムがこの場で「逃げろ」と指示したのはきっと、エペの実力が現在のシャールの上を行くからだ。

 シャールは冷静に今の状況を分析する。

 目の前の相手は、あの王子よりもさらに厄介らしい。


(だからと言って、ここまで来て逃げ帰る気はないがな)


 そろそろ、正面の敵を片付けた双子が、この部屋に辿り着く頃だろう。

 途中の妨害要員は排除してきたから、時間をかけることなく来られるはずだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 止めるきも説得するきもないな やっぱり死んでほしいんだな
[気になる点] シャールが来なかったら伝説の魔法使いも弟子に簡単にいいようにされて犯されてたかもしれないと考えると少しモヤる
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