最後の約束
紂王との最終決戦
この戦いに、何が残るのか?
私は姜子牙
私は謎の救援の戦士達に救われて、再び紂王に向かって戦う。
「良いな。黄天下」
「当たり前だ!紂王に俺が造る新たな国を、世界を破壊されてたまるか!」
「そうだな。お前を王にして、この私が支えてやる。だから」
「この場は踏ん張る!」
私と黄天下は四不象の背に乗り、上空高くに見える紅九尾に向かって上昇した。
「しかしどうする?無鉄砲に飛びこんでも、さっきみたいに軌道を変えられたら同じだぞ」
「私に手はある。」
「そうか、なら俺はお前を信じるのみ」
私と黄天下は飛び込んでいた。
「打神鞭・雷穿孔」
「打神鞭・炎槍」
互いに貫く雷と炎が融合し、天に向かって一直に線を引く。
「!!」
私と黄天下に向かって巨大な塊が降りてくる。
それは隕石の如き圧力が迫る。
(貫いて、チュウオウの元へ辿りつけるか)
それは九尾の狐から繰り出された巨大な尾。
凄まじい衝撃を感じて衝突した。
「うぉおおおおおお!」
今の私と黄天下は互いに強い絆で結ばれていた。
その絆はお互いの力を相乗効果的に限界まで引き上げたのだ。
そして、
「貫けぇーーー!」
一本の尾が貫かれた時、私らの後方で粉砕されるかのように塵となって消滅した。
(や、やった)
が、直ぐに青ざめる。
目の前には先ほどと同じ勢いで急降下してくる残る八本の尾が迫っていたから。
「くそぉ!紂王に近付けさえすれば」
そう口に出した時、
「突破口があるんだな?だったら信じるぜ!」
「えっ?」
それは私と黄天下を追い抜くように急上昇していく五つの金色の閃光。
「俺様達が手を貸してやるから、今度こそ決着をつけやがれ!」
「お前達・・・」
それは孫悟空、阿修羅、八怪、沙悟浄、鉄扇と呼ばれる救援者達。
ナタクと同様の金色の魔眼を所持して戦う。
「うぉりゃあ!」
「はぁアア!」
「ウラァア!」
「はぁいいいー」
「いくわー!」
五人は金色のオーラを纏い、孫悟空は如意棒で突き上げ、阿修羅は両掌から繰り出す手刀の斬撃、八怪は釘鈀なる鎌で切り裂き、沙悟浄は降妖宝杖から光を放ち、鉄扇なる娘は疾風の刃を放ちながら鉄の扇で叩きつける。
「凄いな・・・」
見惚れそうになる凄まじい力。
一度に砕かれる五本の尾。
しかしまだ三本の尾が迫っていた。
その時、聞きなれた声が私達の背を押すように、そして追い抜いた。
「待たせたな」
その声の主は、
「やはり来てくれたのだな。ナタクよ!」
「当たり前だ」
この場に来てくれたと言う事は、あの聞仲を倒したのだな?凄いな!ナタクは!
そして繰り出された抜刀は、一本の尾を粉砕して消し去った。
抜刀と同時に落下していくナタクは私達に向けて強い視線を向けていた。
残る邪魔な尾は二本か。
熱い期待と、眼差しを受け取り、
「ナタク、そして私達をここまで来させてくれた者達の分も今度は失敗は許されぬ」
「そしてこれが最後の機会だ!」
私と黄天下は向かって来る二本の尾に向かって分かれると、残された力を籠める。
「うぉおおお!四不象!私らの力をこの打神鞭に集中させるのだぁ!」
『お任せください!ご主人!』
『聖獣変化唯我独尊・四不象』
四不象の鎧を纏う打神鞭から放雷が拡散し、迫る巨大な尾に帯電していく。
「打神鞭・昇雷切刑!」
振り下ろされた雷撃が帯電した尾を伝って広がっていく。
そして、
『忌眼』
開かれた銀色の輝きが私の雷の色を紅く染め、触手のように尾に絡み付き切り裂く。
同時に黄天下が吼えた。
「倶利伽羅炎天下極上」
紋様が全身に広がり皮膚が真っ赤に染まりあげると、拳に宿る倶利伽羅の血が燃え盛り渦を巻いて迫る尾を止めると、
「倶利伽羅の焔拳」
強烈な拳の一撃が繰り出され、目の前の尾が木っ端微塵になって、燃え盛りながら消滅していく。これで九尾の九本の尾は全て消えた。
(後は本体を討つのみ)
再び私と黄天下は腕を掴みお互いの目を見て、共に紂王本体へと突っ込んだ。
「うぉおおおおおお!」
その時、視界の空間が歪む。
これは先に私と黄天下が突進した時に、空間をねじ曲げられ地上へと叩きつけられた歪みだ。
またこれを受けたら、間違いなく再び地上に叩き付けられる。
落下する塊が地上に向けて急降下した。
「ば、馬鹿な!お前!」
それは四不象だった。
寸前で私と黄天下は四不象から弾かれたのだ。
しかし歪められた空間にそのまま突っ込んだ四不象は地上へと真っ逆さま。
「ご主人ー!私に構わないでくださ~ぃ」
「四不象・・・お前って奴は」
弾かれた私と黄天下は九尾の頭上へと放り飛ばされ、急降下する。
「四不象が与えてくれた本当の本当に最後のチャンスだ!」
「あの豚。俺が王様になったらご馳走振る舞ってやるからな!だから絶対に死ぬなよ!」
九尾が首を上げて急降下して迫る私と黄天下に口から咆哮を放とうとしていた。
「させるものかぁー!」
黄天下が私の前に飛び出し、
「倶利伽羅の焔拳」
私の目の前で九尾の咆哮の直撃を倶利伽羅の拳で受け止める。
凄まじい衝撃が波紋を広げ、その震動が大地を震わせた。
これが倶利伽羅の王の力か。
「紂王、お前を倒して俺が真の王になってるぞぉー!俺がお前の代わりに世界をあるべき道へ導く!」
その時、黄天下の拳に脈打つように力が流れこみ、
自分自身とは異なる倶利伽羅の力が感じられた。
(ち、父上!)
まるで背中が押された感じがした。
「父上、ありがとう。けど俺は父上から借りる力はこれが最後になる。後は、俺と姜子牙の力でやっていくからな」
その時、
(逞しくなったな。黄天下。お前はとうに俺を越えている。俺はお前を誇りに思うぞ)
「ち、父上・・・」
涙を堪え、そして貫く視線で紂王を見ると、
「倶利伽羅の豪速弾頭」
振り下ろされた拳は九尾の額を殴り付けると、割れた額から血が噴き出す。
「ウギョオオオオオオオ!」
九尾は溜まらずに悲鳴をあげた。
が、その直後!
九尾の目が銀色に光輝き、その眼から熱光線が放たれたのだ。
「ウグッ!」
一直線に貫く光線は黄天下の右腕を蒸発させながら消し去った。
それでも寸前で身を反らした黄天下はそのまま地上へと落下していったのだ。
『こ、この余に痛みを与えるとは』
それは意識を取り戻した紂王。
勝ち割れた九尾の額の傷口から中欧の上半身が抜け出すと、その視線は眩しく光る外の世界に光る閃光に視界を一瞬奪われる。
「黄天下。お前からの襷は受け取った。後はこの私が決着をつけよう。この能力でな」
それは半信半疑の能力。
己自身が使えるかわからない。
それでも一度は覚醒し、趙公明相手に使用した忌眼の能力。
もはやこの能力は、間違いなく理解出来る。
歪みの血界だったのだと。
それは一か八かのかけだった。
忌眼の裏能力。
あの時は無意識だったが、この数度と目の当たりにして、その引き金を掴んだ感じがしていたのだ。
『忌歪血界!』
その瞬間、私の忌眼が炸裂したかのように大量の血をぶちかまし、その広がりは目の前に存在する九尾を覆い隠した。
「!!」
そこには何も存在しない空間。
そこに紂王は元の姿で立っていた。
「ここは何処なのだ」
見渡す限り、赤く染まった世界。
「余を閉じ込めたつもりか。このような空間など、直ぐに消し去ってやろう」
掌を頭上にあげて、力を放とうとした。
「ヌッ?」
何も起きない。
己の力が何も起こさない。
チュウオウは初めて、己が置かれた状況を理解して、そこで笑みを見せた。
「この余を喰らうか。この世界。そうか、お前も蠱毒の器か」
直後、赤き世界は蠢き、無数の触手が紂王目掛けて伸びて来て、異様な牙をもつ口が開きながら空を覆い隠した。
落下すると同時に紂王の姿は一瞬で飲み込まれた。
時が動き始める。
静まり返った戦場には、紂王が横たわっていた。
その身体から生気は失われ、触れば粉々になりそうな塵の塊。
その場には、あの娘達が囲んでいた。
「本当にやってくれたのね」
「正直、駄目なら俺様が倒してやったがな」
孫悟空が笑うと、沙悟浄が声をあげた。
「見てください!ま、まだ!」
すると紂王が崩壊する身体で起き上がろうとしていたのだ。
そして法子なる娘に向かって腕を伸ばした。
「テメェ!往生際が悪いぜ」
「待って、孫悟空」
娘は従者達を止めると恐れることなく紂王に向かって近付いていく。
「おい!気を付けろよ、法子!」
「分かっているわ。けど、何か放っておけないの。皆、私を信じて」
従者達は警戒しながら彼女の動向に注意して見守っていた。
「何か言いたいの?」
「だ、妲、己、妲己、その声は、お前、生きておったのだな。のぉ、妲己よ。余は、余はお前がおればそれで」
(誰かと勘違いしているの?)
紂王が伸ばした指先に、法子は自分の掌で包むように支えた。
その温もりある掌に触れたとき、まるで浄化されたかのように塵となった身体は粉々になりつつ空へと昇っていったのだ。
これが、本当に紂王の最期か。
その時、私は地上を這っていた。
「大丈夫らか?」
「無理はしないで」
八怪、阿修羅が私を抱き起こすと、私は力の入らない膝を震わせ、回りを見回した。
「おった!」
そこに黄天下が倒れていた。
「黄天下ぁー!やったぞ!私はやってやったぞぉー!お前、ちゃんと生きておるのだろうな!この私の王様よ!」
私の声に反応した黄天下は、指先を動かすと、
「へへへ。うるさい奴だ。大丈夫、ボロボロだけど、死んじゃいないさ」
黄天下は立ち上がると、消し飛ばされた右腕が失われている事に気付く。
「どうやら、再生しないみたいだな。まぁ、仕方ない。この俺の右腕は、ちゃんといるのだからな。お前と言う右腕が」
そして私を見た時、私と目が合った。
共に近付いた時だった。
「ぐふっ!」
「えっ?」
私は黄天下の胸に突き刺さった針を見て、信じられない顔で青ざめた。
そして声が響いたのだ。
「漁夫の利だ!倶利伽羅の王を殺せば、この俺が奴を喰らって新たな倶利伽羅になれるんだよなぁ?あははは!」
そいつは高継能!
そして突き刺さった針は太陽神針。
澠池城にて高蘭英より手に入れた能力で、
カミシニを殺す唯一の武器。
「な、何が」
黄天下は胸に感じる熱さに気付いた時、内部より胸が破裂したのだ。
「ぶはぁ!」
その惨劇に私は駆け寄り、黄天下の身体を抱き起こすと、黄天下の身体は震えながら痙攣を起こしていた。
「おいおい!俺の餌に近付くんじゃねぇよ!姜子牙!そいつの倶利伽羅の力の次はお前の忌眼を貰う。俺はな、このチャンスをずっと待ってたんだよ!お前らが消耗して動けなくなって、楽して力を手に入れることを。それが今なんだよ!今!今!今なんだ!」
高継能が近付き、黄天下にふれようと手を伸ばしてくる。
「汚い手で黄天下に触れるでない!」
私は庇うように立ち上がると、
「知ってるぜ。お前はもう限界だってな。お前ともいささか因縁があったが、ここでお終いにしようぜ」
振り払われた手から太陽神針が私目掛けて投げられると、私は不用意に肩に受けて倒れこむ。
「ガハハハハ!漁夫の!漁夫の!リリリリリリ!」
私は、震えていた。
恐怖だった。
それは決して高継能なんかに向けられた恐怖ではなく、目の前で今にも事切れる寸前の黄天下に対してだった。
「きょ、姜子牙・・・」
「黄天下!喋るな!直ぐに治癒してやる!ナタク達が何とかしてくれるはずだ」
「そ、そうか。けど、分かるんだ。俺は死ぬのだな」
「馬鹿な事を言うな!お前は王になるのだろ!この地上を統べる真の王に!そして、この私に見せてくれるのだろ?誰もが幸せになれる世界を!」
私は目に涙を浮かべて叱った。
「そうだな。そうだな。だから、俺はお前に見せてやる。だから、受け取ってくれ。この俺の魂を!お前になら、託せるから。受け取ってくれ。俺を!そして・・・」
「!!」
「お前が真の王になって、俺の魂を連れていってくれ・・・友よ」
その瞳から光が消えた。
「黄天下?冗談は止せよ、黄天下ぁあああああああ!」
黄天下の身体は塵となって拡散すると、その中心に炎の打神鞭が宙に浮かび、私の手の上に乗り、握りしめた。
「黄天下、この私に王になんてなれるものか。お前が、お前が王になるはずだったんだ!なるべきだったんだぁー!」
振り払った打神鞭は炎を纏い、
「えっ?」
高継能の身体を脳天から股下まで一刀両断していたのだ。
何が起きたかわからないまま、高継能は目の前で消滅したのだ。
「うわぁあああああああ!」
そして天に向かって私は泣き叫び、そのまま力尽きてその場に倒れた。
もし、目覚めた時、全て夢であって欲しい・・・
次回予告
ついに新生殷国での地上界の戦いが終えた。
しかし戦いは終わらない。
残された伏線は、この後の仙界での戦いへと引き継がれる。
黄天下を失った姜子牙は?
法子達の参戦復帰
先に向かった牛角魔王や竜吉公主の動き
謎の行動をとる申公豹。
仙界の新たな王と西王母、
玉面乙女とサクヤ龍王。
まだまだ物語は終わらない。
もし宜しければ、次から始まる仙界編も読んでくださると、法子が喜びます。
※次の物語まで、私情でしばし間が空いてしまいます。
ぶ、ブクマを置いていってくださると、続きが始まった時に・・・あ、すみません。




