仙界大戦終末、三つ巴の愛浄土!
妲己、紂王、姜子牙
仙界大戦は始まり、そして歴史の中では?
我は妲己
我は愛した。
二人の男を・・・
我は天界で幽閉され、洗脳され、暗殺を目的に働く人形として使われていた。
その間、我にも考える思考はあった。
天界への謀反さえ考えなければ、元の我と何も変わらぬ人格。
この頃にはサクヤは記憶を消され龍神界へと返されていた。
玉面に関しては心を閉ざし、気が狂って人格が崩壊したと聞いておる。
壊れたのじゃ。
残った我と姜子牙。
いや?そう言えば姜子牙の奴は改名して今は太公望と名乗っているようじゃ。
「おい!妲己。勝手に抜け出し一人でフラフラしておると監視の者共が騒ぐぞ」
「知らぬ。我は好きにやる。奴らとて働く我が逆らわなければ、多少の自由は許そう」
「変わらぬなぁ」
「?」
我には記憶がなかった。
気付けば、この天界にある閉ざされた隠れ島にて特殊な訓練を課せられ、指令が入れば暗殺に向かう。我が何者で、いつからいるのか?培った能力と知識はある。
しかし己に関する名前以外の記憶はない。
我は妲己。
そして目の前におる太公望もまた我と同じ境遇にて、同じ働きをしておる。
「太公望」
太公望は我に近づくと、我の手を取り、そして抱き寄せる。
「のぉ、またか?」
「せっかく二人になったのだ」
「あ、ぁ」
太公望と我はいつしか、そう言う関係。
この隠蔽された島に男と女がおれば、そうなる事も自然の摂理かもしれぬ。
天界の監視の者共も知らぬ合瀬。
気付けば我は太公望を求めておった。
太公望は本音を語らぬ。
いつも話を逸らしては、肝心な所はいつもはぐらかし、ただ無邪気に笑みを向ける。
これが我が愛した男。
この生活の中で唯一の救いだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから天界より仙界大戦を起こすように命じられた我と太公望は間をおく。
我は地上界へと降りて、そこで人間の王である紂王と出会う。
そこで我は紂王に惹かれた。
それは男女のそれとは違う。
本能が告げる主従の関係。
「我の王・・・」
しかしコレは恋や愛とは異なる。
ソレは分かっておった。
しかし紂王が我にゾッコン我は計画的に誘惑するしかなかった。
天界の呪縛と、王への忠誠。
その柵に心は痛み、苦しくなった。
「妲己よ。何を苦しんでいるのだ?」
「紂王」
振り向くと紂王の寝顔が傍にあった。
我は立ち上がると、その背中を見惚れるように見る紂王は背中から抱き締める。
「お主は誰にもやらん!この余のもの」
「何を言っておるのですか?我は紂王様のものですよ」
「本心が聞きたい」
「?」
すると紂王の目が光輝き、我の心を見透すように見詰めた。
(ソレは魔眼か?)
紂王は頷く。
「心を読めるのか?」
「心を読めるだけではない。この魔眼は百の能力を秘めた百眼の魔眼と呼ぶそうだ」
「!!」
それは我が滅ぼした一族が持つ眼の能力。
ソレを何故、紂王が?
「我が幼少時に、夢の中に現れた魔物を受け入れた時に、この力を授かった。余は力と引き換えに、天界への復讐を背負わされた」
「紂王?」
「しかし余は自由。何も束縛出来ぬ。力は貰うが、そのような復讐に加担するつもりはなかった。しかしお前の記憶を読んだ時に余の意思は固まった」
「それは何を?」
「余はお前の記憶ではなく過去を見た。お前の本心に宿る復讐を、この余が力を貸す!だから余の女となれ!身も心も!その全てを捧げてくれ!妲己」
直後、我の眼に紂王の魔眼の力が発動し、消されていた記憶が甦ったのだ。
幼少時に拐われた事。
拷問の実験の日々。
運命を共にした四人。
そして脱走。
太公望の裏切り。
「ぅあぁあああああ!」
発狂とともに濁流のように流れ込む記憶に我は息を切らして踞る。
そんな我を紂王は強く強く抱き締めながら、
「これより復讐の始まりだ。お前の怒りも悲しみも余が背負う。余がお前を苦しめた天界を落とし、真王として君臨するのだ」
「!!」
それが我が愛した二人目の男。
紂王様。
我と紂王様との天落としが始まる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして今、
「貴様が太公望だな?この余の妲己を誑かし、裏切りし下道!」
紂王が我と太公望の戦いの間に割って入る。
「あははは!どうやら紂王を上手く手懐けたようだな?妲己よ」
紂王と太公望が衝突する。
互いに譲れぬ戦い。
我は動けずにいた。
どちらの加勢も出来ぬ我は両者を同等に愛していたのじゃ。
幾度と裏切り憎き相手である太公望。
主君としてではなく、我を愛して、全てを捧げる紂王。
選ぶのは決まっておると言うのに。
「妲己を誑かし、泣かせおった太公望!余は己を決して許さぬぞ!」
その魔眼が見開くと、上空より巨大な眼が見下ろした。
「その身残さず消え失せよ」
上空より視界全てを焼き消す怪光線が広範囲に振り下ろされた。
(!!)
しかし我にはその光は届かず守られている。
その代わり中心にいた太公望の逃げ場は完全に奪われたのじゃ。
「消え失せよ!外道!」
が、太公望はニヤリと笑む。
「残念であったのう。この儂でなければお前の勝ちであったろう。しかし儂のこの忌眼の力は、滅ぼしの力じゃ!」
太公望の忌眼の力が解放され、銀色の閃光が紂王を覆った時、その能力は徐々に弱まる。
忌眼の能力は、カミシニの能力と同じなのだ。
相手の能力を無力にする事が出来る。
力が消えかける紂王は、
「この余がお前を相手に無策に戦場に現れたと思うか」
「なんじゃと!?」
その時、紂王は秘めし能力を使ったのじゃ。
それは統合の魔眼。
真王たる紂王が持つ特殊能力。
以前から我は聞かされていた。
「妲己よ。お前の呪われた血を全て消してやりたい」
「何を馬鹿な事を」
「もし出来るとしたら?」
「ホホホ。そのような事が出来たら泣いて喜ぶわ」
「そうか、なら」
そっと我の顔に手を置こうとする紂王に我は寒気が走った。
そして本能的に紂王の腕を握り、止めたのだ。
「何をするつもりだ?本当に?」
「この余には可能だ。余の能力は他者の優れた能力やモノを交換出来るようなのだ。この力を使えばお前の呪われた血と我の血を入れ換える事が出来よう」
「!!」
統合の魔眼。
魔眼自体に殺傷能力はない。
しかし最も恐ろしい能力。
視野に入った者の能力を己に集め、力とすると言うのじゃ。
「待て!どうするのじゃ?」
「お前の血を全て我の血と入れ換える」
「そのような事をすれば、お前はカミシニの血に身体を犯され、適合出来なくば跡形もなく消滅するのだぞ!我は何度も見てきた。この血は適合者でなければ命を奪われ猛毒じゃ!」
「この余を心配してくれるのか?妲己。余は嬉しいぞ」
「馬鹿者が!我はお前に死んで欲しいとはこれっぽっちも思ってはおらぬ。下手な博打で命をかけるな」
「そうか。しかし余はお前のためならこの命、いつでも捧げよう」
それは紂王との約束。
唯一の約束じゃった。
まさか紂王がやろうとしている事は?
「妲己よ。太公望とお前の血を余が貰い受けるぞ!」
その時、我と太公望は血の気が一気に消えて貧血をおこすと同時に、力を失い落下する。
そして血蒸気が上空へと集約していく。
その中心には紂王が胸を押さえて苦しんでいた。
その身に、カミシニの血が流動し、血管が浮かび上がる。
浮き出た血管が裂けて、血が垂れ流れ、蒸発している。
「やはり無理なのか。だ、だが、ま、まだ死ねぬ。これが余の・・・妲己への愛だぁあああ!」
紂王の魔眼が再び光輝いた時、我は顔が熱くなる。
「ま、まさか?紂王様!我の呪縛を全てその身へと引き受けるつもりなのか?そんなことをしたら間違いなく」
すると、
「うがぁあああ!」
太公望も苦しみ始め、その眼が浮き出るように忌眼が飛び出した。
「だ、妲己、い、生きよ!そして、幸を」
その言葉が最期だった。
紂王の身体は我の目の前で木っ端微塵に消滅した。
「い、いやぁじゃあああ!紂王様ぁあああ!」
泣き叫ぶ我と、
「うぐぐ。この儂の目論見を台無しにしおった!あの野郎!
妖怪である我とは違い、太公望は失った血を辛うじて仙術の治癒法の一つ。
造血術で失った血を補い命を保ってはいたが、その力は半減し、落下していく。
そこに聖獣の四不象が滑り込むように受け止め、その場から離脱して行ったのが見えた。
放心状態の我は、その場に降りて空高くに向かって泣き続けた。
どれくらい経っただろうか?
我は紂王が最後に奪取した両目の忌眼を手に、天界からの討伐隊を幾度と幾度と払いのける。
永き時を生きて、忌眼を守った。
もう二度と使わせないために。
しかし、その身の限界を感じた時、我は判断した。
恐らくはカミシニの血を一度でも身に流した反動だろう。
天界軍から忌眼を守り逃亡するだけの力が残ってはいないのじゃ。
そして我は信頼出来、天界軍ですら手の出せぬ龍神族へと忌眼を託したのだ。
そして役目を果たした我は、
「も、もう、良いかのぉ・・・」
我は疲れたよ・・・
それが妲己の消息が途絶えた最後だった。
次回予告
紂王により語られた物語。
そして今、姜子牙(物語上の主人公の姜子牙)の決断は?




