黄飛虎と黄天下!親子の死闘!?
黄天下を倒して先を急ぐ張奎であったが、
その動きは止められた。
俺は張奎。
俺は黄天下を始末し、先に向かった姜子牙を追う為にその足を向けた。
「!!」
だが、俺は足を止める。
背後から発せられる俺に対しての殺気にそれ以上動けなかったから。
「死んだふりをしていれば良かったのにな。わざわざ立ち上がって来ると言うことは命を棒に振ったな」
俺は振り向くと、血だらけの状態で黄天下が立ち上がって来ていたのだ。
「死に損ないが」
俺は早急にトドメを刺そうと剣を手に黄天下の間合いに入り、剣を振り切る。
首を落とせば二度と動きはしまい。
「!!」
が、俺の剣は黄天下に掴まれ止められたのだ。
「まさか俺の剣を止めただと?」
すると黄天下の身体が高熱を発して、掴む俺の剣が熔解していく。
俺は剣を手離すと、新たな剣を作り出して構え直した。
「どうやらお前は間違いなく黄飛虎の倅だったわけか。父親同様俺に牙を剥くか?」
黄天下は無言だった。
ただ無言で右腕を向けると、倶利伽羅の紋様が広がっていく。
「グゥオオオオオオオ!」
雄叫びをあげる黄天下は倶利伽羅の力で燃え上がる拳を貫かれた自分の心臓に向けて突出すと、血管が浮き上がりながら全身に広がり、同時に倶利伽羅の力が侵蝕していく。
「俺は二度死んだ。だが三度目は俺は俺で無くなる。もう甘えは捨てる!俺は父上の願いを叶える為に王になるのではない。今や俺自身の野望だ!」
筋肉が悲鳴をあげているようだ。
そして黄天下は遂に右腕だけでなく、全身に倶利伽羅の紋様が浮かび上がる。
「まさか!倶利伽羅の器だと?お前も倶利伽羅の力を自分のモノとしたのか!」
黄天下は俺の問いに、
「俺はもう父上の遺産である右腕に恥ない心技体を既に持っていた。父上に頼るのではなく、この右腕はもう俺の一部。俺の力の一端に過ぎない」
黄天下は黄飛虎から譲り受けた余りある力に幾度と助けられながらも、枷になっていたのだ。
それはいつになっても偉大なる父親の影に縛られ、己の不甲斐なさに劣等感を抱き続ける事で自分自身の限界を決めてしまっていた。
それが死の境に陥った時、夢を見た。
「ここは?俺は確か・・・」
黄天下は張奎により胸を貫かれた事を思い出し、そして青褪めながら自分自身の胸を見る。
「ゆ、夢だったのか?全て?何処から何処までが?」
「夢ではないぞ!黄天下よ」
「!!」
その時、黄天下は信じられない者を目の当たりにして涙する。
自分の名を呼ぶその者は、見間違う事なく黄天下の父、黄飛虎であった。
感情が湧き上がり泣き出す黄天下は黄飛虎に抱き着いていた。
「父上ぇえ!」
「ははは!泣くな!泣くな!」
「父上、父上」
黄飛虎は黄天下を引き離すと、その目を見て笑みを見せて言った。
「本当に逞しくなった。見違えたぞ?本当に強くなった」
「そ、そんな。俺なんか全然」
すると黄飛虎は背負う剣を片腕で抜くと、黄天下に向けたのだ。
「父上?何を?」
「今より俺はお前を斬る。そしてお前の代わりに現世に甦る。お前の身体を手に入れてな」
「何だって!?」
信じられない言葉だった。
「今のお前の身体なら、俺が甦るに耐えられるだろう。よくぞ成長した。我が息子、黄天下!その器を俺に差し出せ!」
斬りかかる黄飛虎に黄天下は躱しながら訴える。
「お止めください!父上!」
しかし黄飛虎の剣には殺気がこもり、手加減無しに本当に斬られていた。
「くっ!お、お止めください」
「どうした?抵抗せぬか?黄天下!それとも諦めたか?そうだよな!お前が目覚めたところで張奎には勝てまい。その後に控える聞仲には到底及ばんだろう。だが俺ならどうだ?俺なら奴らをこの力で斬り伏せられよう」
「!!」
(確かにそうだ。俺が目覚めた所で何が出来る?しかし父上なら)
黄飛虎の言葉に動揺し、黄天下は肩を斬られて後退し、狼狽える。
(もしこのまま本当に父上に敗れ、そして父上が生き返れば戦況が変わるのでは?そして父上が紂王に代わり、真王として君臨すれば世界は変わる・・・)
黄天下は瞼を綴じて防御の手をゆっくりと下ろしたのだ。
振り下ろされる黄飛虎の大剣が振り下ろされ、覚黄天下は覚悟した。
「諦めたのではないのか?」
「えっ?」
黄天下は瞼を開けると、振り下ろされた黄飛虎の大剣を右腕で受け止めていたのだ。
それは無意識に動いた本能だった。
「俺は諦めたのではないのか?何故、今更、生に執着した?」
黄飛虎は剣を引くと、
「この父に抗うか!」
数度と振り払われる大剣に、黄天下は無意識に?本能的に躱していた。
「身体が勝手に動く?動くのだ?」
同時に違和感に気付く。
(父上の剣筋が分かる?父上の動きが見えている?)
黄飛虎は拉致があかないと、
「良いだろう。今よりこの俺の最大限の攻撃でお前を討つ。受けてみるが良い!黄天下よ!」
黄飛虎の身体に倶利伽羅の紋様が浮かび上がり、本気だと分かる。
「倶利伽羅の斬剣!」
大地が震え天が割れる。
振り下ろされた閃光が黄天下の頭上に振り下ろされた時、黄天下は過ぎる。
それは姜子牙と誓いあった約束。
(まだ死ねない)
すると黄天下の身体にも倶利伽羅の紋様が浮かび上がり、斬撃に向かって拳に倶利伽羅の力を集約させて迎え撃った。
「倶利伽羅の烈火拳」
衝突する剣と拳。
凄まじい衝撃の波紋が広がった。
「ぬぅおおおおおお!」
「うぉおおおおおお!」
互いの渾身の一撃。
「俺は気付いたんだ。父上!父上から託された夢は、もう俺自身の夢になっていた。否、俺と友の夢に!」
衝撃の塊が押し負けた方に流れ込む。
負けたのは黄飛虎の方だった。
そして黄飛虎は消滅していく中で、最期に答えたのだ。
「俺はキッカケに過ぎぬ。
お前はもう俺を超えたのだ。
自信を持て!
お前は俺の自慢の息子だ!」
黄飛虎は、黄天下に最後に父として教えたのだ。
「己の道は己の手で掴め!」と・・・
「ち、父上ぇえええ!」
その時、黄天下は悟った。
憧れていた父親を超える事に無意識に拒否していたのだ。
だが、その枷が外れた今、黄天下は覚醒した。
リアルに戻った時、貫かれた胸が凝固する血で塞がり、血管が異常な動きを見せて血液を濃縮していく。
「倶利伽羅高潔濃度解放!」
黄天下は再び甦った。
しかも完全なる倶利伽羅の王として。
「俺はもう迷わない」
今、倶利伽羅の王同士の戦いが繰り広げられる。
次回予告
覚醒した黄天下と、張奎との一騎打ち。
最後に立っていられるのは、どっちだ?




