超えるべき壁!黄天下の限界?
現れた宿敵である張奎を相手に一人で立ち向かう黄天下。
その無謀な戦いに活路はあるのか?
俺は黄天下。
俺は姜子牙を先に向かわせ、単身で張奎を相手に残った。
正直、震えが止まらない。
心を鼓舞して、気合いで戦う。
戦わなければ俺はあの日のまま。
あの日、目の前で父上を奪われ、俺は支えを失った。
今まで姜子牙が隣にいてくれたから、俺は戦っていられた。
けれど、俺は一人になった時、もし姜子牙がいなければ、俺は立っていられるのだろうか?
俺は一人では何も出来ない。
これで真王に本当になれるのか?
父上が夢見た世界を俺が造れるのか?
俺は父上を越えられるのか?
その答えが目の前にいる。
父上と対等の戦いを繰り広げた張奎を倒せれば、俺は俺を認められる。
胸を張って姜子牙に言える。
「俺が新たな世を造る真王になると!」
俺は全身の血を廻らせ、右腕に意識を高める。
倶利伽羅の力が張奎の力に共鳴しているようだ。
放って置いても暴れだしそうで、解き放ちたい。
しかしそれでは駄目なんだ!
この俺が、この力を制御してこそ俺は父上を超えられる。
「重く、強い拳だ。しかし黄飛虎には遠く及ばぬ。あの者は俺を奮わせた」
「そうか。そうだろうな。父上は確かに凄い方だ。だが、今日、この日、俺がお前も父上も超えてみせる!高まれ!俺の血中濃度!」
俺は湧き上がる力を極限にまで高め、その力を暴走させずに制御する。
今日までの戦いは決して無駄ではない。
「俺は負けないぃーー!」
超連打の拳に対して張奎もまた全身の肌が真っ赤に染まり、倶利伽羅の力が発動する。
そして血咒の忌鎧装を纏った。
「俺の剣に我が血を捧げる。血戦高血刀!」
その力を初めて見た時、俺は恐怖に怯えてしまった。
手も足も出なかった俺が、今、立ち上がり、踏み込み、そして拳を前にと突き出していた。
「ぬっ!?」
躱した鎧が粉砕し、張奎もまた目の色が変わる。
構え直した剣を横に一閃した。
「くぅうう!」
俺は瞬時に反応して後退すると、腹部の皮膚が斬られて血が滲む。
「ハァハァハァ」
息を切らす俺に、張奎は見直したような顔で俺を見る。
「お前の父親は俺が戦った中で生涯の好敵手であった。あれ程の戦いを繰り広げられる猛者はそう現れまい。だから倅のお前を一方的になぶり殺すのには気が引けていた」
「そうか。だったら俺がお前にこれ以上ない体験をさせてやる。それがお前への手向けにしてやるよ」
「その大それた口、いつまで続けられるか楽しみだ」
その瞬間、張奎が俺の視界から消えた。
「!!」
瞬時に姿勢を下げると頭上を振り払われた剣が通過し、軌道を変えて振り下ろされると、俺は右手を差し出し炎を噴き出す威力で後方に逃れる。
「気が抜けねぇ」
集中力を極限的に高め、反射に身体が追い付ける限界を超えていた。
ギリギリの極限状態の中で俺は間違いなく強くなっている。
何とか張奎の動きについて行けてる。
何とか戦える!
「俺は間違いなく強くなっている」
すると張奎は俺に剣を向けた後に鞘へと納めたのだ。
「何のつもりだ?」
「お前はどうやら身の程知らずのようだな。お前は何も分かってはいない」
「何が分かっていないと言うのだ?」
「右腕の、黄飛虎の力に頼るが上に大事な事を見失っている。その身分不相応な力がお前を弱くしていると言う事だ!」
「俺が弱くなっているだと?」
「教えてやろう。格の違い、王の器たる真の強者がどういうものかを」
その時、俺は動けなくなった。
「これが倶利伽羅の王たる器の、真の超越者の力をな!」
全身の血管が浮き上がり、皮膚が真っ赤に染まっていく。
そして噴き出す血が鎧と化す。
更に、
「聖獣変化唯我独尊・独角烏煙獣」
その身に聖獣を取り込んだのだ。
倶利伽羅の鎧が変形し、額が割れて聖獣の特徴であった角が突き出る。
(か、身体が本能的に震える。これは恐怖なのか?)
しかし俺は気合いで叫んだ。
「ゥアアアア!」
俺は拳を向けて構えたのだ。
恐怖なんてのはもう何度も味わった。
俺はもう何度もあの力を前にして二度と敗北しているのだから。
趙公明に、聞仲。
倶利伽羅の王たる器を前に俺は一度も勝てないでいた。
そして目の前に立つ張奎もまた同格。
見上げる程、高過ぎる絶壁にみえる。
姜子牙もナタクもいない今、俺はもう逃げ場は断たれた。
自分自身で己の甘えを断ったのだから。
「なら勝って、その壁を越えるまで!それが俺の目指す王道!」
三度目の正直。
今度こそ、必ず勝つ!
「!!」
が、直ぐに俺は脳が震えるような感覚を感じたのだ。
俺は一瞬、衝撃を受けた感覚がして、その理由を目の当たりにした。
俺の胸から背中を抜け貫かれた血戦高血刀。
「えっ?ごフッ」
喉から上ってくる熱いモノが口から吐き出される。
それが自分自身の血だと気づいた時、張奎は俺の胸を貫いた剣を抜いた。
そして数度振り回して血を払い鞘に収める。
「あぁ・・・」
大量の血が胸から噴き出され、血溜まりの上に俺は倒れた。
次回予告
張奎の剣に串刺しにされた黄天下。
勝利した張奎は何を思う?




