紂王と聞仲!
趙公明との戦いは終えた。
しかしまだ趙公明をも上回る強敵がいた。
私は姜子牙だよ。
私は黄天下に事の顛末を聞いた。
私が意識を失った後に、噂の太公望が現れて、あの趙公明を討ち果たしたとか。
しかも私の忌眼を使ったとか。
「うむむ」
話を聞いて分からない事ばかりだ。
そもそも何故私は血界を張れた?
しかも特殊血界のようだ。
特殊血界とは、相手を拘束する目的で閉じ込めるのではなく、自分に優位で戦う為の血界。
持続時間は短い分、短期決戦で相手を確実に仕留める能力。
あの趙公明は猛毒の血界を使って私を拘束したが、私が使ったのは閉じ込めた相手の力を栄養として吸収するらしい。
いつ覚えた?無意識?そんな馬鹿な!
「何もかも分からない」
趙公明を倒すに至る能力なら、今後は私自身が使いこなせるようにする必要があるだろう。
「何せ今後戦う相手は趙公明を上回る聞仲が相手なのだからな」
黄天下が言うには、聞仲は間もなく私達の前に現れると言っていた。
聞仲は恐らく趙公明より強い。
勝てるのか?我らに?
するとそこに見張りをしていた黄天下が戻って来たのだ。
「そう落ち込むなよ。俺達は今まで自分達以上の相手と戦い生き抜いた。今度も間違いなく勝てるさ」
「楽天的だな?」
「覚悟を決めただけだ。遅かれ早かれ聞仲を相手するのは変わらないからな。乗り越えるべき壁だよ。奴は!」
「高過ぎる壁だな」
「お前となら乗り越えられるさ。なっ?そうだろ!」
「そうだな!共に越えよう」
そんな我らの会話を木の影に寄りかかり聞いていたナタクが笑みをみせる。
「安心しろ。今度は俺も命をかける」
ナタクも思い出していた。
血界の外にいたナタクの前に現れた聞仲が、その倶利伽羅の力で血界を破壊して中に入った。
しかし特殊血界は一度張れば、張った本人の意思なく解除出来ないにも拘らず外から破壊するなんて力を目の当たりにさせられたのだから。
恐らく聞仲も血界の破壊で力の半分以上を使ったに違いない。
あの場で倒すのが唯一の勝機だったに違いない。
「疼いた。あの聞仲からは奴と同等の力を。聞仲は俺が倒す」
ナタクは過去、味わった敗北を思い出していた。
世界を揺るがした蛇神の王・那我羅との一騎打ち。
二度と叶わぬと思った強者との戦いに武者震いをしていたのだ。
「皆さ〜ん。食事をしなきゃ戦は出来ませんよ〜。御用意しましたよ〜」
四不象は御馳走を用意してくれていたのだ。
しかも人型の姿になって。
「人型に変化出来たのにも驚きだが、食事も作れるとか万能だな?」
「お褒め頂きありがとうございます。ご主人」
「非常食じゃなかったのだな?」
「まだ言うか!黄天下さん!」
「あはははは!」
戦場で久しく笑って無かった事に気付き、これが最後の晩餐にならないようにせんと心に誓う。全て、上手く終わった後にはこの四人で再び酒を交わそう。
場所は変わる。
新生殷国の紂王城の中では、カミシニの兵士が今か今かと待機していた。
その中で聞仲は主である紂王に呼び出されていた。
「趙公明が討たれたそうだな?」
「はっ」
「それで、持ち帰ったのだろう?直ぐによこすが良い」
「お待ちください!紂王様。この趙公明の御霊は私に預からせてください。仙界の西王母が持つ転生蘇生の装置を使えば、趙公明は再び甦るのですから」
新生殷国の仙界進軍の目的は領地の拡大だけではなく、仙界にある死者を蘇生させる秘宝具を奪還する事が真の目的だったのだ。
死者蘇生の宝具により、聞仲達はカミシニとして転生した。
それにまだ過去に仙界大戦で失われた魂はまだ残っているはず。更に大戦後に手に入れた戦士の魂も保管しているのだ。その宝具さえ手に入れれば、世界は安易に手に入ると言っても過言ではないのだ。
「仙界の秘宝か。しかしお前の頼りの師である金星霊母も返り討ちにあったのではないか?」
「そ、それは。こうなればわたし自ら軍を率いて、奪還して参りましょう。この命に変えてでも」
「愚かだぞ?聞仲。今日まで幾度と戦争を仕掛け、成し遂げる事が叶わぬかったではないか。往生際が悪いぞ」
「もし失敗したのであれば、この私の魂も紂王様に捧げましょう」
その言葉に紂王は笑みを見せて問う。
「良かろう。お前の忠義がどれほどのものか見せるが良い」
「ハッ!しかしその前に、趙公明を討ちし者達の首を持ち帰ります」
「忌眼の者だったな」
「趙公明の魂の代わりではありませぬが、その者の忌眼を献上致します。それ云え、暫く私に時間をお与えください。紂王様!」
「良かろう。ならば今より聞仲に時間を与えよう。今より半時毎に鐘を鳴らすとしよう。その鐘が三度鳴り終えた時、お前の持つコレを余が使わせて貰う」
「!!」
聞仲は手にしていたはずの趙公明の魂が、紂王の手の上にあったのだ。
(いつの間に!!)
何一つ隙は無かった。
聞仲は目の前に存在する紂王に、畏怖を感じると共に畏敬を感じる。
「やはり貴方は私が真王として忠義を尽くすに価するお方だ。良いでしょう。この聞仲、必ず手に入れて見せましょう」
すると聞仲は紂王の間から退出すると、その足で出兵する。
「我ら新生殷国の精鋭達よ。この国に入り込んだ異種は大地に芽を生やし、この国を侵蝕し始めた。我らは雑草を狩らねばならぬ。この国は我らが守る最後の砦!何者にも囚われぬ人が人である為の残された聖地だ!我らは世界を創り出す開拓者である」
聞仲の目の前には新生殷国が誇る武人達が既に戦の準備をして聞仲の現れるのを待ち整列していた。当然、この者達は全員カミシニで、兵士であっても第三から第四仙血の猛者ばかりであった。
「百獣の王である獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと聞く。油断、隙、怠慢は己の恥と心得よ!いざ、進軍!」
聞仲を総大将として、総勢三千の軍兵が今、僅か三人の侵入者である姜子牙達に向けて出兵された。最終決戦の幕が開かれたのだ。
次回予告
ついに総大将・聞仲と全面対決が始まろうとしていた。
法子「ついに最終決戦ね?私もウカウカしていられないわね」




