私は太公望ではない!姜子牙だ!
姜子牙に迫る追手。
この新生殷国の民を巻き込まずに逃走する姜子牙は?
私は姜子牙。
私は逃走中だった。
この国の民を巻き込むわけにはいかない。
「うぬぬ」
私は何とか逃げ、奴らから離れた場所から覗き見て、息を潜ませていた。
奴らは立ち止まり、身を隠した私を確実に追ってきている?
まさか千里眼?それとも私の気を探って来ているのか?
「!!」
その時、あの妖仙(竜鬚虎)が遠く離れた私の居場所に気付き、指をさした。
「な、何故?ん?」
その時、私の衣から虫が動いたのが見え、全て納得した。
私は衣にしがみついていた虫を潰すと、その場から駆け出し離れて距離を取る。
竜鬚虎はイナゴ使い。
イナゴを私の衣に忍ばせ、私の逃げる位置を察知していたのだな。
私は忌眼で身体中に残ったイナゴも見つけ、潰す。
「これで居場所は探られまい」
と、地面に着地したその時、足下が盛り上がって何者かが姿を現す。
「見ぃつけたぞ〜!」
そして油断した私に抱きついて来たが、咄嗟に躱して打神鞭を打ち込む。
激しくブチ当たる打神鞭だったが、土行孫の身体は強固な鎧と化して効かずにいた。
「無駄だ!無駄だぞ!俺の身体は肉体強化で激しく硬いぞ?」
「肉体強化?」
カミシニの肉体強化は単純に己の中を流れるカミシニの血を濃くする事。
体内で血中濃度を増す事で、身体能力を高め異常な強さ発揮させる場合もある。
単純なドーパミンと言えよう。
が、体外に出せば鎧や剣として構成させたり、更には翼にして飛行も可能。
この土行孫は単純な肉体強化を高め、強固な身体と、そして奴の拳から伸びる爪を特化させたのだろう。
「土竜叩き!」
「えっ?」
見上げて分かった。
巨大な影が落下して来たのだ。
「馬鹿なぁー!」
それは隕石の如き岩石が、市民街にも拘わらず落下し、吹き飛ばしたのだ。
「うぅぅ」
頭を抑え周りを見ると、崩れ落ちた屋敷の瓦礫から、動かぬ人の腕が見えた。
先の攻撃で巻き込まれ圧し潰されたのか?
平民であるがカミシニ、死んではいないと思うが?
「!!」
その時、気付いた。
死んでいる?まさか人間だったのか?
この新生殷国にはカミシニ民だけでなく、人間も共存していたと言うのか?
「この場にいたら、巻き込んでしまう!くそぉおお!ふざけるなよ〜」
屋根上に飛び出すと、周りを見て広場を見つけると、そっちに向かって屋根の上を渡って駆け出す。地面を見ると、盛り上がりながら追って来ているのが分かった。
「そのまま追って来いやぁ〜」
私は土行孫が追って来ている事を確認した後、広場に飛び降り着地した。
「お前の相手してやるから、余所見せずに浮気するなよ?私のみにかかって来い!」
「ウゴぉおおおお!」
地面が盛り上がり出現した土行孫は私に向かって鋭い爪を振り上げ、振り下ろす。
その斬撃は私の衣を切り裂き、そして血が滲む。
「クソぉ!打、打神鞭!」
しかし打ち込む打神鞭は土行孫の身体に直撃しても傷一つ付かないでいた。
「俺の身体には傷一つ付かないんだぞ〜?無駄だと言っているのが分からないのかぁ!」
振り回した裏拳が私を弾き飛ばし、そして壁に直撃し、崩れる瓦礫に潰された。
「オイオイ?こんなんで死ぬなんて大した事なさ過ぎじゃないかぁ〜?それがかつて仙界大戦を裏で動かしていた軍師、いや?黒幕よ!」
な、何を言っておるのだ?
私が何だって?
黒幕とか言ったのか?
人違いじゃないのか?
私は瓦礫から抜け出すと、打神鞭を頭上で振り回して自分の周りを囲む。
「出し惜しみしている場合ではないよな?見せてやろう。忌眼・超絶解放!」
忌眼の輝きが全身を覆い、そして漲る力と同時に身体が震える。
そして頭の中に霧が覆うような感じになる。
「じ、自分を保て!うぉおおお!」
そして繰り出した打神鞭が大地を削りながら土行孫に向かって行く。
「無駄だと言うてるだろ!」
が、離れた場所から
「躱せぇ!土行孫!」
「なぁー!?」
寸前で身体を反らした土行孫の腕が、私の打神鞭で両断されて落下したのだ。
「お、俺の〜?俺の腕ぇえええ!」
するとそこに高継能、竜鬚虎が追いつき現れる。
「奴の切り札か?突然、力が跳ね上がったようだぞ?」
「奴の忌眼の力は侮れないからな」
そして、他の連中も追い付いて来た。
「追いついたぞ〜ん?土行孫の奴が腕を落とされていやがるぞ?」
「油断するなと言っていたのに、馬鹿な奴だ」
「だから第四仙血のままなんだ」
そして土行孫も頭を冷静にして、謝罪する。
そして失われた腕に血を凝縮させて新たな腕を再生させた。
「一網打尽にしてやろう。なにせ私はお前らカミシニを終わらすために生まれた執行者だからな」
するとリーダー格のカミシニが答える。
「そうだろうな。かつて君はそうやって仙界大戦で数多くの仙人を手にかけた執行者だったからな」
その言葉を聞いて、私は戸惑う。
「ならば僕はお前を殺すために甦って来た執行者・申公豹だよ!なぁ〜?太公望!」
また太公望?
何故、私が太公望と呼ばれる?
また人違いじゃないか?
私は太公望なんかではないぞ!!!!
次回予告
姜子牙に迫る申公豹率いる武人達。
その力量は、皆強敵だった。
法子「他人の空似で恨まれるなんて災難ね~」




