蜂地獄?追い迫る高継能!
打神鞭を武器にカミシニを倒した姜子牙
しかしこの澠池城には他にもカミシニがいる。
私は姜子牙だ。
と、自己紹介している場合ではなかった。
私の目の前に現れたカミシニは間違いなく第三仙血に違いない。
本能的に振り返ると、全速力で逃げ出していたのだ。
「わかる。まだ無理のようだ。私の危険察知能力が逃げろと騒いでおる」
一目散で逃げながら背後を見た時、私は一瞬安堵した。
何故なら奴の姿が見えなかったから。
どうやらまいたよう・・・
「ぬぅー!?」
直後、私は反対方向の飛び出した人影によって蹴り飛ばされたのだ。
まさかいつの間に?
恐らく肋骨折れたぞ〜??
壁に直撃したかに思えた時、壁の襖が開き、私は部屋に閉じ込められたのだ。
「此処は?」
すると開いた襖から例のカミシニが入って来ると同時に襖が閉まった。
まさか閉じ込められたのか?
目の前のカミシニは俺をジロジロ見るなり質問してきた。
「お前は何者だ?人間か?カミシニか?正体を教えろ」
「どうやらご執心のようだな?仕方ないから教えてやろう。こう見えても私は、お前らカミシニを狩る執行者だよ!」
「執行者だと?面白い奴だ。その執行者がどれ程の者か、この高継能に見せてみろ」
高継能と名乗ったカミシニは剣を抜くと、二度三度振り払った。
「うぉっと!」
剣圧が床を切断しながら迫り、咄嗟に転げながら躱した。
「危ないだろ!お前、私でなくこの妓楼の主が目的だろ?道草食っている暇あるのかよ!」
「案ずるな。お前の首を落とせば直ぐに終わるよ」
再び斬撃が繰り出された時、その軌道が何かに弾かれて塞がれたのだ。
「ふふふ。お前、やはり只者ではなかったようだな?」
「簡単に死にたくないのでな」
私は斬撃を打神鞭で弾き防いだのだ。
「お前は鞭使いか?」
「鞭使いと言われる程ではないが、さっき初めて使った素人だよ!」
繰り出される鞭の攻撃は正確に高継能の間合いを破り、その身に迫る。
「ぬっ!」
後方に飛び退き鞭を躱す高継能は私に向かって血の球を投げつける。
「せいりゃあ!」
私は鞭を巧みに扱い血球を弾いて防ぐ。
「何が素人だ?洗練された鞭使いではないか?この私の油断を誘ったつもりか?」
「・・・」
正直、この私も困惑していた。
この打神鞭って武器を手にした時から不思議と扱い方から癖まで分かるのだ。
まるで長年使い込み馴染んだ武器のようだった。
「どうやら油断していれば、先程の男と同じように狩られるかもな。正直、この妓楼の主以外に私も奥の手を見せてやる事になるとは思わなかったぞ」
すると高継能は片手を振り上げると結晶のような何かが広がるように部屋中を覆っていき、私に向かって四方八方から向かって来たのだ。
「させるものか!」
私は打神鞭を振り回して四方に一メートル範囲で防御しつつ、小粒の何かを打ち落としていく。
「何と?」
その時、私は冷や汗が頬を流れた。
何かが床で動いている?
それは手足と羽根がある昆虫。
私が打ち落としたのは虫か?
その時、私に迫る攻撃が軌道を変えて鞭を躱して、徐々に私の防御陣をすり抜け始めたのだ。
「ぐふっ!」
脇腹に何かが刺さった感触がした?
咄嗟に抜いて間近で見ると、その昆虫は蜂であった。
「ゾクッ!」
すると今度は私の振り回す鞭の攻撃を蜂達は意思があるかのように飛び回り躱すと、私の死角から襲って来る。
「ふはははは!俺の可愛い蜂達はどうだ?こいつらに一刺しされれば、その猛毒でお前は終わりだよ。直ぐに終わる。だから抗う必要はないぞ?最初にチクッとするだけだ!」
「御免こうむる!」
私は打神鞭に忌眼の力を注ぐ。
恐らくまともに戦えば勝機はない。
無数に飛び回る蜂を全て打ち落として、高継能をしとめるなんて芸当は不可能だ。だったら一か八かだ!
「自分、死んじゃわないか不安だなぁ」
覚悟と同時に恐怖が交じる。
私は首を二度三度左右に振り迷いを捨てる。
「無駄死にするくらいなら、一矢報いてやるからな!」
私は打神鞭の防御を止めたと同時に、
その一撃を高継能に向けて突き出したのだ。
「愚かな!諦めたか?私の蜂達よ!その者を始末しろ!」
蜂達が命令に従い私に向かって軌道を変えた時、この戦いに差が出た。
命じられてから動くより先に、自主的に動いた私の動きの方が速かった。
「うっ、うごぉおおおお!」
突き出した打神鞭は、まるで槍のように一直線に高継能の身体を貫く。
つまり高継能の操る蜂達は命じられてから次の動作に移る僅かな遅れの間を狙い、防御を捨てた一撃必殺の攻撃をしたのだ。
か、勝ったか!
しかし高継能は後退しつつ蜂達に命じた。
「ソイツを殺せぇーーー!」
「えっ?」
直後、高継能の飛び回る蜂達が私の身体に一斉に襲いかかると、私は全身に無数の針が突き刺さる痛みを感じた。
「あ、あぁぁ」
そして私はその場に倒れて動かなくなったのだ。
山のように蜂が覆いかぶさり、埋もれていく。
「くっ、悪あがきをしやがって。この俺の身体に傷を付けるとは思わなかった」
高継能は私に貫かれた傷痕を見て、流れる血を止めながら言った。恐らく第二仙血なら今の攻撃で仕留められていたと思うが、第三仙血は再生能力も優れているため、倒しきれなかったのだ。
それでも手応えはゼロではなかった。
「危なく急所を突かれる所だったぞ」
高継能は勝ち誇り、蜂に埋もれて姿が見えない私に近付き見下ろすと、
「さぁ、俺の可愛い蜂共よ!そいつの屍を見せてくれ」
蜂は命じられて覆われた私の骸から離れると、そこには!
「馬鹿な!」
そこには私の死体は無く、床に穴が開いていたのである。
私の姿は忽然と消えていたのだ。
そう、私の目的は攻撃して倒す事ではなく、攻撃をするフリをして床に穴を開けて逃走する事だったのだ。本当に賭けだった。
もし床に穴が開かなければ、蜂の攻撃から逃げられずに今頃、本当に私の躯が転がっていたに違いない。何せこの澠池城は高蘭英が作り出した建物なのだから、もしかしたら厚い層なのかと思えばそうでなかったようだな。あの瞬間、奴を倒す確率よりも床を破壊出来る方が可能性があると判断したのだ。恐らく、高蘭英は厚化粧ではなく薄い化粧なのかもしれん。
が、私の無事なわけではなかった。
鉢の毒に侵され、全身が麻痺していたのだ。
壁によりかかりながら、高継能から逃げるように私は距離を取り逃げる。
「捕まったら殺される。奴らカミシニは私の気を探れない。距離さえ取れば逃げられるはずだ」
しかし麻痺した身体が思うように動かなかった。
それは高継能とて同じ。
私の負わせた傷が多少なりとも動きを遅らせていると願いたい。
私は左右の分かれ道を見て右に進む。
だが、私は大事な事を忘れていた。
「あっ!」
私の向かう前方から、別のカミシニの背中が見えて、運の悪い事に傷付いた私に気付いて振り向いたのだ。
「おっ?お前、傷付いているな?しかも手負いか?うへへ。それなら簡単に喰えるな〜」
意識が朦朧としている中で、
「じょ、冗談じゃねぇよ!私はこんな場所で死んでたまるものかぁ!」
「いただきま〜す!」
しかし無情にも目の前のカミシニは私に向かって飛び掛かって来たのだ。
や、殺られる!?
そう思った時、そのカミシニの周りに小さな何かが引っ付いて来た。
アレは蜂か?
蜂と言えば、まさか?
私は振り返ると、足音が近づく。
「俺の獲物に手を出すなよ」
直後、無数の蜂が飛び出して来て私を摺り抜けるように後方のカミシニに向かっていく。
「うっ、うわぁあああ」
出くわしたカミシニの身体中に蜂が引っ付いて来て全身を覆い身体中に刺される痛みが至る箇所から感じると、そのまま絶叫をあげて動かなくなったのだ。
た、助かったのか?いや?
「さて、次はお前だぞ?」
「やっぱ、そうなるか」
その時、異様な障気を感じた。
我らがいる通路から湧き上がる血蒸気が噴き出して来て、高継能の操る蜂達が次々と落下して消えていく。
「毒霧か?まさか別に潜み隠れている奴がいたか!」
高継能はその血蒸気に触れる事を避けて、その場から離れるように消えていった。そして血蒸気の中から、新たに別のカミシニが姿を現したのだ。
「奴は逃げたか?後はこの転がっている男を始末するだけよ」
が、気付いた時に私の姿はその場から消えていったのだ。
「ど、何処に?何処に消えた?いつの間に?」
辺りを見回すが私の姿は消えていた。
私は朦朧とする意識の中で、何かに背負われている感覚があった。
そして降ろされると、私は意識が途切れてしまったのだ。
暫くして目覚めた私は床に一人で眠っていた事に気付いた。
そして枕元に置かれていたのは治癒の霊薬だった。
「いったい誰が私を救ったのだ?」
何者かに背負われ救われたのは間違いないが、カミシニがおる状況で救うなんて尋常じゃない。
しかも置かれた治癒の霊薬は人間の物。
間違いなく私が人間である事を知っていて、私を救ったのか?
しかし何故名乗らない?
隠れる必要があるのか?
私の味方ではないのか?
全く分からない状況で、突如私のいる澠池城が揺れだしたのだ。
「じ、地震か?」
しかしそれは、この澠池の広間にて私を置いてけぼりにした戦いが既に繰り広げられていたのだ。それは私を追い詰めた高継能と、この妓楼の主である高蘭英が対峙していたのだ。
次回予告
高継能と、この妓楼の主である高蘭英の第三仙血同士の戦いが始まろうとしていた。そして姜子牙はどうなる?
法子「ねえ?大丈夫なの?無事?」




