忌眼に迫る魔の手!
蛟魔王とサクヤ龍王の戦いはサクヤ龍王に分があった。
そして蛟魔王の忌眼が発動したのだ。
お、俺は浦島だ!
俺は一角鯨龍王が最期に施した流血で造られた檻に閉じ込められていた。
「く、くそぉ!出られねぇぞ!」
俺の変化は戦いの直後に解けていた。
繰り返し変化しようとも力が出せないのは、身体への負担が大きいから。
これ以上の変化の持続は命の危機に繋がると、無意識に本能が拒否しているのだ。
「構わねぇ。乙姫さんを救うためなら俺は命を捧げられるからなぁー!」
そして拳に意識を集中させる。
残った力を拳に込める。
龍と蛇神の力を融合し、一点に!
俺の片腕が盛り上がり龍気と蛇気が混ざり合いながら融合すると、
片腕のみが蛇龍変化をしたのだ。
「これで十分だぁー!」
俺は鮮血の檻に向けて渾身の力で殴り付けたのだ。
「うがぁあああああ!!」
反発する反動が全身を襲った。
激しい衝撃と共に確かに一角鯨龍王の檻は破壊出来た。
しかし身体中を襲った衝撃に俺は全身を打ち砕かれ、立っていられなかった。
それでも、俺は這うように乙姫さんが戦っている場所へと向かった。
「い、今、行くからな、乙姫ぇー!」
それから俺は身体を引き摺らせて、ついに乙姫さんの戦場にたどり着く。
そこでは・・・
「う、嘘だろ??」
俺が見た乙姫さんは、あの力を解放していた。
あの力とは乙姫さんが宿した忌眼の暴走!
かつて龍神界から逃亡した乙姫さんは、追手をその暴走で返り討ちにした。
そして俺は昔、あの力を止めるために命を落とした事がある。
そうなのだ。
見境なく目の前に存在する全てを破壊する滅亡の魔女と化してしまうのだ。
しかも、己をも破滅する力。
「ハァ、ハァ、ハァ!」
乙姫さんは息を切らせ、その瞳が銀色に光り輝いていた。
そして全身から大量の血を流して、生命力が消えていく。
流れる血が障気となって漂う。
「!!」
その時、俺は気付いてしまったのだ。
「あの忌眼の力って似てないか?」
俺は見比べて、一角鯨龍王と戦って身を持って味わったから分かる。
「あの忌眼の力とはカミシニの能力だったんじゃないのか?」
それが正しければ、サクヤ龍王と一角鯨龍王の狙いが乙姫さんの忌眼だと言うことにも納得出来る。しかし、今の俺では力を使い果たして戦う力が残ってはいなかった。
身体に染み込んだカミシニの血が俺の再生力を止め、消耗が激しい。
「俺は何しに来たんだよ!くそぉ!」
そして、サクヤ龍王は笑みを見せながら両手の剣を手に構えて近づく。
「うふふ。その忌眼をあの方に捧げれば全てが終わるのよ。始まりも終わりも、その忌眼によって終結するのよ、乙姫」
サクヤ龍王は言い終えると同時に駆け出すと、
まだ暴走で朦朧としている乙姫さんに斬り掛かる。
「乙姫さん!危ない!」
俺が叫ぶと、乙姫さんの指先が動いて、その爪が伸びて振り払ったのだ。
「うっ!!」
その爪はサクヤ龍王の接近を阻み、そして傷を与えた。
「未来が見えなかったわ。あの忌眼が私の未来視の能力を狂わせているのですね?どうやら簡単には手に入らないようね?乙姫ぇー!」
サクヤ龍王は両手に握られた剣で襲いかかると、乙姫さんはその剣を両手で掴んで止めたのだ。
「恐ろしいこと。けれど私も簡単には殺せませんよ!」
サクヤ龍王の身体が異常に障気が籠もり、その力が飛躍する。
「逆鱗血薔薇!」
カミシニの能力と龍神の血が逆鱗によって異常に活性化したのか?
「さ〜て、乙姫?私の本気を見せてあげるわ!」
サクヤ龍王の身体は真紅に染まり、カミシニの能力が広がっていく。
しかしそれは乙姫さんも同じだった。
あの忌眼から発する障気。
「息が詰まる。この場にいる事だけで命が削られそうだ」
まるで獣のように両爪を刃に、サクヤ龍王も両刀を手に斬り掛かる。
それにしてもサクヤ龍王、本当に強い・・・
一角鯨龍王よりも上か?
あの状態の乙姫さんと互角だなんて!
乙姫さんが都度都度話してくれた龍神界が誇る最強の龍王ってのは本当だったのだな。
互いに斬りかかりながら、上昇していき天井をぶち抜く。
崩壊する天井を抜けて外へと飛び出したのだ。
「ま、待て!お、俺も!」
しかし身体の自由が効かない。
その直後、上空で凄まじい衝撃波が広がり、龍神界が揺れ動いた。
そして一瞬の静けさの後、何かが落下して来たのだ。
「あ、あれは!!」
俺は咄嗟に飛び出していた。
そして落下して来たモノを抱きしめ受け止めたのだ。
転がるように床に倒れた俺が守ったのは、お、乙姫さん。
そして上空より抜けた天井からサクヤ龍王がゆっくりと降りて来る。
「やはり忌眼体蝕者と言っても、貴女は間に合わせに過ぎなかったのね」
サクヤ龍王は着地し俺と気を失っている乙姫さんに近づくと、剣を傾ける。
「や、止めろぉー!」
そして止める俺を蹴り飛ばした後、容赦なく乙姫さんを斬ったのだ!
「頂いたわよ」
サクヤ龍王の手には血に染まった眼球が持たれていた。
あ、アレは蛟魔王さんの??
「これで仕事は終わりだけど、このまま貴女達を生かして置く必要はないわね」
そして剣を俺と乙姫さんに向け、閃光の刃を放つ。
「よ、避けきれない!」
が、そこに突如入って来た光の物体が刃の軌道を変えて弾き飛ばし、
俺と乙姫さんの前に着地したのだ。
「お二人共!ご無事でしたか?」
「お前は!!」
寸前で飛び込み、俺と乙姫さんを救ってくれたのは玉龍だった。
俺は乙姫さんの安否を確かめ頷いた。
「龍神界の結界が失われた事で入り込む事が出来ました。後は任せてください」
玉龍の登場にサクヤ龍王は弾かれた剣を手に取り、こちらに向け直す。
「貴方も龍神族?まだ幼いけど強い力を感じるわ。けれど貴方に私を止められると思う?」
すると玉龍は首を振って答えたのだ。
「残念ですが、僕には無理でしょう。けど、貴女を止める事が出来る頼れる人達がいます!」
玉龍は懐から術札を手に取り床に貼り付けると、念を込める。
アレは転移の術札か?
すると、その転移の札から二つの人影が飛び出して来たのだ。
「待ち侘びたらよ!玉龍」
「俺様が来たからには安心しろ!」
それは八怪と紅孩児だった。
しかも二人の両目は金色に光り輝く魔眼を放っていたのだ。
「あら?コレは多勢に無勢ね。目的は果たした事だし、これ以上は時間の無駄だわ」
するとサクヤ龍王の姿が血の障気に覆われ、姿が消えたのだ。
お、俺達は助かったのか?
そんな事より!
「お、乙姫さーん!」
俺は意識のない乙姫さんを抱きしめ、叫んだのだった。
次回予告
法子と沙悟浄は拉致された孫悟空を探しに別行動をとっていた。
向かった先に現れたのは?




