世界を導く者を導く?須菩提祖師の与えられし運命
須菩提祖師と美猴王の一騎討ち
しかし何故、須菩提祖師が現れたのか?
儂様は須菩提祖師 ( すぼだいそし )
儂様には与えられた役目がある。
それは儂様の生きる道を決めた。
それはまだ儂様が強さを求めて修行をしていた若僧だった時の話じゃ。
「どうじゃ!儂様に敵う奴はいないのかよ!かかってこいや」
あの頃は手の付けられない程の暴れん坊で、力ある者の名を聞けば出向いて力試しと己の力を奮っていた。この時代、仙術がブームになっており、自然の力を体内に込めて爆発的な力を引き出す不可思議な能力を持つ者達が地上を支配していた。
「炎を操るか?じゃが儂様の拳は止められねぇーぜ!」
儂様は仙術に手を染めずに己の鍛え上げた肉体のみを信じていた。
炎を操る仙術使いを相手に喧嘩を売ったのだ。
儂様は仙術使いをぶっ倒して、己こそが最強だと自負していた。
そんな無鉄砲な儂様の所に奴が現れた。
「数日前から儂様をつけている者!いい加減に出て来い!気配を消しているつもりだろうが俺様には無駄だ!」
恐らく刺客かと思い、現れた所を返り討ちにするつもりだったが、一向に現れる兆しがないのでイライラしておったのだ。すると、ソイツは仕方なく飄々と姿を現す。
「流石ですね。私の気配を察知出来るとは驚きです。空間の歪みの中に身を潜めていたはずなのに?不思議ですよ」
「視線を向けられたら気付くだろ?こう見えても儂様は目立ちたがり屋さんだから人の目には直ぐに気付くのさ。いや?人の目ではなく、お前は魔物か?」
すると儂様は飛び出して拳を奮っていた。
こういったよく分からない類いは油断すれば奇妙な術で動けなくさせられるからな。
「ぬっ!?」
が、儂様の拳は霧を切るように擦り抜けていた。
「待て待て!私はお前をスカウトに来たのだよ!話を聞け!暴力反対!」
「何だと?お前は誰だ?」
その者は白旗を振って名乗ったのだ。
「私の名は太白金星。神仙だよ」
「神仙だと?」
仙術を使う者は人間の他に魔物がある。
その魔物も人間が仙術で魂が穢れて魔物に転じたと言う話も聞いていた。
しかしコイツは神仙だと?
神だと吐かすのか?
「面白い。儂様の強さが神に通じるか試してみたかったのだ。相手になれ!」
「どうやら話しをしたくとも黙らせなきゃ無理ぽいようですね?多少手荒くはなるが死なないでな?」
「やってみやがれぇー!」
どれくらい経っただろうか?
二週間ほど戦っていた記憶はあるが、その後の記憶がない。
気付くと儂様は身体中を縛られて身動き出来なくされていたのだ。
「力を入れても無駄だよ。その縄はお前の力を吸収して余計にキツくなるぞ?」
「儂様を殺すつもりか?」
「言ったであろう?お前をスカウトに来たとな。お前には仙術を会得して力を持って貰いたい。この先の未来のために」
「はぁ〜?意味分からん。それに儂様は既に強い。仙術など無用だ!」
「仙術を学び、仙人になれば寿命も延びるのだぞ?」
「我が生涯に恐らく悔いはない!寿命尽きるまで最強であればな!がははは」
「今、私に敗北して捕まってるではないか?最強終わったぞ?」
「儂様は負けてはおらん!フンヌゥオオオオオオ!」
「無理だよ。その縄は力では、ヌッ?」
「うりゃあああ!」
儂様は有りったけの力で縄を引き裂いたのだ。
そして拳を鳴らす。
「第二戦いくか?」
その儂様の出鱈目な力を見て太白金星は予想以上だと驚いていた。
驚け~驚け!
「既に気のコントロールを見につけているのか?しかも我流で?」
「知らねぇよ!」
確かに我流と言うか、感情が高まると身体の内から漲る力を感じてはいた。
「お前ならあの方が喜びそうだ」
「儂様は誰かを喜ばすつもりはねぇ!」
すると太白金星は儂様に告げた。
「人の身の限界、神の力の無限の可能性を身を持って味わうが良い。だから死ぬでないぞ?」
「へっ?」
太白金星が片手を天に向けて上げると、昼間だと言うのに上空が暗くなった。
見上げると満天の星空が見えたのだ。
「う、嘘だろ?」
それは幻術?
けれどそのインパクトは儂様の身体を震わせた。
天から落ちる無数の隕石が儂様目掛けて落下して来たのだ。
「仙星術・爆滅流星群!」
それは太白金星の秘奥義。
強力な磁場のあるこの地、そして重力操作。
無数の星を宇宙から移動させるほどの空間転移術。
その最高難易度の術を同時に発動させる事で可能にする最高峰の禁術。
陥没する隕石後、まだ燃え盛る大地。
完全に完敗だった。
隕石から逃げる儂様は思った。
もっと強くなりたいと。
「う、う〜ん?ここは?」
儂様は気付くと光の中にいた。
「此処は幻術の中か?」
「此処は空間の歪みの世界。時の亀裂の中にある異空間。この中では外界の何者にも話が聞かれる事はない。お前には私と共に使命が与えられるのだ」
「ハッ?そんな話を儂様にするつもりなのか?冗談じゃねぇ!儂様を巻き込むな!」
が、太白金星は首を振って言った。
「運命は変えられぬ。私とお前は世界を救済し導く者達を導く役割があるのだからな」
「はっ?」
世界を導く者を導く?
何それ?
「その為にはお前には仙術を学び、人の身を捨て仙人、いや?私と同じ境地の神仙になって貰わねばならぬ」
「か、勝手な事をベラベラと!儂様はやるとか言ってはいないぞ!」
「人の世界ではなく、神の世界でも最強を目指せば良いだろ?天を見上げればお前が知る世界など小さき器。この私よりも力のある神々は数え切れぬぞ?その世界に足を踏み入れよ」
儂様は唾を飲み込んだ。
自分の世界で自惚れ、満足していた力が太白金星には手も足も出なかった。
しかも仙術を学べばその先があると?
「面白い。なら儂様は頂点を目指してやる!そして余裕があったらお前の頼みも聞いてやる。それでどうだ?」
「構わない。そこでお前には私が仕える主の下で修行して貰う事になる」
「はっ?お前が儂様に教えるんじゃないのかよ?」
「ふふふ。お前には早く私に追いついて欲しいからな?」
「何だと!?」
と、その時!
この閉ざされた空間に何者かが入って来たのだ。
太白金星はその者に対して膝をつき、頭をさげていた。
わ、儂様は・・・
その者の姿に無意識に身体が動いていた。
同じく膝をついて、頭を上げられなかったのだ。
な?な?な?な?な?
「頭を上げなさい。今よりお前は私の弟子として太白金星と共に私直属の仕事をして貰う事になります」
儂様はその命令に対して抗うどころか、その言葉に涙を流して歓びすら感じてしまった。
それから儂様の第二の人生、いや?神生が始まった。
仙術を学び、まるで水を得た魚のように力を得ていく。
その才能は開花し仙人を通り過ぎて飛び級に神仙になったくらいだ。
太白金星とはたまに茶を飲む間柄になっていた。
そして儂様が己を磨いている最中、我が主より極秘の任務が与えられたのだ。
それは地上に現れる猿の妖怪を育て導く事らしい。
「妖怪を育てる?しかも猿の?」
最初は理解出来ないでいたが、地上に降りて、説明されていた岩の中より現れた子猿の赤子を見て直感的に気付いた。
「面倒くさそ〜」
が、その直後!
赤子の臭いを嗅ぎつけて来た魔物が儂の手から赤子猿を奪い取って逃げたのだ。
「や、やばっ!」
そして赤子猿を飲み込もうとした魔物を見て、儂様は顔を覆ってしまった。
完全にドジった。
怒られる。
これ、バッドエンドじゃん?
が、その時儂様は儂様に与えられた使命の重さを知る事になった。
突如、赤子猿が光り輝き魔物を消滅させ、宙に浮いたまま止まっていたのだ。
何がなんだか分からないまま恐る恐る赤子猿を抱きとめると、
「こ、これは!?」
赤子猿の瞳は金色に光り輝いていた。
これはまさか伝説の救世の魔眼?
この赤子猿が選ばれし使徒なのか?
「どうやら儂様に与えられた使命は本当に世界の命運を左右するようじゃ」
そして儂様は赤子猿に美猴王と名付けて育てた。
本当に言う事きかないし、暴れて悪さして、困ったもんだ。
世の母親の育児がどれだけ大変か身に沁みて分かった気分。
儂様はこの悪ガキに思いの外、昔の自分を照らし合わせていた。
気付けば愛着がわいていたのだ。
困ったもんじゃ。
次回予告
須菩提祖師と美猴王の師弟対決。
その結末は?




