全力疾走!託す力!最後の希望!
孫悟空と覇王エデンの戦いは孫悟空が勝利したはず?
しかし・・・何が?
俺様は孫悟空だ。
何が起きている?
確か俺様は覇王エデンを倒したはずだった。
そして法子の待つ場所に向かおうとした直後、視界を覆う程の何かに叩きつけられて地面に衝突した。
「頭痛え〜」
俺様はふらつく頭を押さえながら、今起きている現状に固まってしまった。
「う、嘘だろ?何だ?こりゃ?」
俺様は地上から順に上空を見上げる。
そこには到底信じられない天を貫く程の巨大なナニかが聳え立っていたのだ。
あれはいったい?
と、そこに俺様を探し回っていた八怪と沙悟浄が合流して来たのだ。
「猿ぅー!」
「孫悟空兄貴!」
「お、お前たち?今、何が起きているんだ?あれは一体?」
すると沙悟浄が俺様が気を失っている間の事を説明してくれた。
俺様を叩きつけたのは巨大な尾。
それは突然現れたのだ。
いや?まだ存在していたのだ。
覇王エデン!
確かに本体のエデンは消滅した。
しかしエデンの魂は世界中に棲息する蛇神の魂の中に細胞レベルで残っていた。
そして本体が消滅したと同時に蛇神達の魂が活性化して、その中に潜むエデンの意思が目覚めたのだ。
生き残っていた蛇神達は己の意思が失われて傍にいる者と絡まり融合し始める。
徐々にその数は増えて次第に巨大化しながら気付けば天にまで昇っていく。
しかもその下半身は大地としっかり繋がった数えきれないほどの蛇が絡み合った巨大な大蛇として蘇ったのだ。
「あんなのどうやって倒すんだ?やはり俺様が変化するしかないぜ!」
だが、足に力が入らずによろめくと、八怪が腕を掴んで抱える。
「無理するなや?猿はよく戦ったら。後はオラ達が戦うら!」
「でもどうやって?」
沙悟浄は俺様に今起きている戦況を伝える。
現在、ナタクと蛟魔王を中心に一端退かせて体制を整えていたのだ。
既に体力は底をついており、無駄に戦えば死に急ぐだけだと誰もが知っていたから。
しかしそれも現状を見ると正解だったかは分からない。
何故なら蛇神は今も尚、大地のエネルギーを吸収して増殖を止めずに巨大化していたから。
「くそぉ!俺様がもう少し戦えていたら!俺様のせいだ!詰めが甘すぎた!」
その言葉に八怪は俺様の胸ぐらを掴み言ったのだ。
「誰のせいでもないら!やれるならオラがやっていたら!らがな?お前しか戦えなかったんらよ!あの覇王相手に戦えのはな?」
「は、八怪・・・」
が、その時俺様は頭を過ぎる。
の、法子?
八怪と沙悟浄は気付いているのか?
法子が、法子が・・・
すると沙悟浄が言った。
「私達で必ず倒しましょう!そして早く法子様と鉄扇ちゃんを迎えに行きましょう!きっと心配していると思いますから」
「そうらな。弱気になっていたら法子はんに怒られちまうらな」
そうか、二人は法子の事に気付いていないのだな?
もしここで俺様が法子の事を告げたなら、きっと二人は心が折れて戦えなくなるに違いない。
俺様も、この痛みに今にも心が砕けそうなのだから。
今は、今だけは話せねぇ・・・
すまねぇ、お前たち。
そして沙悟浄は蛟魔王から伝えられた事を俺様に説明する。
あの無数の蛇が絡み合ったような巨大な蛇神の中心に、緑色の髪をした人型の姿がみえると言う。
それがあの巨大なエデンの本体、心臓部に違いないと言う。
だが、そこにたどり着く事は困難。
近付く全てがその中心を守る数億数百億と数えられぬ大蛇に阻まれるのだ。
既に一度飛び込んだ無鉄砲な百獣王はその大蛇の総攻撃を受けて、生死の境にいると言うのだ。
「あの頑丈な百獣王がか?そんな馬鹿な?無事なのか?」
「はい。けれど戦闘に出る事はしばらく無理だと思います」
だが、放っていれば究極体のエデンはさらに地上のエネルギーを吸い上げ強大になっていく。
いずれ大地は枯れ果て、二度と再生はしない。
そして世界は再びエデンと化すのだ。
「そんな事はさせねぇー!」
すると沙悟浄が俺様に小瓶を手渡す。
「これは?鉄扇が飲んだ霊薬か?」
「はい。一時的ですが戦えます。けど、本当に僅かな時間だけです」
「構わねぇよ!」
俺様は小瓶を手に取り飲み干した。
確かに力が漲る。
何とか動けそうだ。
だが、力の解放は一度が限界のようだ。
そこに俺様達のもとに仲間達が集まって来たのだ。
蛟魔王、牛角魔王に紅孩児、二郎真君だった。
それから離れた場所にいるのは鵬魔王か?
どうやら俺様が気を失っている間に八怪と沙悟浄といざこざがあったが、蛟魔王と牛角魔王に止められたらしい。
「今は争っている場合ではない。私恨はあのフザケた蛇神を倒した後にしろ!」
「!!」
そして蛟魔王が皆に策を与える。
簡単な策だが、簡単には出来ないな。
全員で突撃して、あの中心にいるエデンの本体を叩くだけの策。
あの無数の大蛇の中を掻い潜りながら。
「やるしかねぇな」
すると紅孩児が俺様に拳を向けると、俺様も拳を重ね合わせて答える。
「絶対に生き抜こうな?」
「当然だ!」
そして俺様達は互いに顔を見合わせた後、覚悟を決めたのだ。
「行くぜぇーーーーーー!!」
俺様の合図で全員で飛び出した。
飛行雲に乗って武器を手に突進する。
既に雲を貫き天にも届くほどの巨大化したエデン。
俺様達は飛行雲に乗り天に向かって上昇していく。
俺様達の接近を勘付いたのか?
エデンと繋がった無数の大蛇が動き出して上空から襲い掛かって来たのだ。
大蛇の攻撃はまるで隕石の落下を躱すような感じだった。
もし攻撃をモロに受けてしまえば、百獣王のように戦闘不能になる事は承知。
これらの攻撃を全て躱してエデンの本体を叩くのだ!
まさに特攻だった。
しかし時間が無いのである。
時間が経てば経つほど取り返しのつかない化け物となっているから。
「つぉおおおおお!」
誰も余裕なんて無い。
体力なんて残ってはいない。
限界なんてとっくに切れている。
それでも戦う。
これ以上失わないために。
二度と失わないために。
真っ向から迫って来る大蛇を躱し、すり抜けながらエデンに突進する。
「ぐわぁああ!」
紅孩児が大蛇に囲まれて逃げ場を失ったのだ。
一斉に襲い掛かる大蛇の群れの中に飛び込んだのは牛角魔王だった。
「生きろぉー!紅孩児!」
「ち、父上ぇええ!」
掴んだ紅孩児を放り投げ、牛角魔王が代わりに大蛇の中に消えていく。
「父上が死ぬものか!俺様が終わらせてやるから待っていてくれ!」
紅孩児は振り向かずに再びエデンのいる中心へと向かっていく。
すると今度は俺様は四方から囲まれ道を塞がれたのだ。
「孫悟空!お前に託すぞ!!」
後方から二郎真君が三尖両刃刀から連撃を放ち、俺様の道を塞ぐ大蛇を消滅させたのだ。
だが、足を止めた二郎真君は左右から突っ込んで来た大蛇の攻撃を受け止めながら落下して行った。
「スマねぇ・・・この仮は返すからな」
すると八怪と沙悟浄が俺様に接近して来て、守るように一緒に突っ込む。
「行きましょう!」
「なんぴたりともオラを止めさせねぇーら!」
二人は清浄な光と漆黒の気を放ちながら道を開いていく。
「やはり若い連中に託すしかないね」
すると今度は蛟魔王が龍気を極限にまで高めて奥義を放ったのだ。
「逆鱗・万龍波!」
蛟魔王から龍の闘気が放たれると、前方から迫る無数の大蛇を消滅させ道を切り開いてくれたのだ。
だが、そこで全ての力を使い果たし蛟魔王も力尽き落下していく。
同時に俺様達の視界にエデンの姿が見えたのだ。
しかし再び大蛇がエデンとの間の道を塞ごうと覆い隠そうとした時、
「鵬魔・炎火の華道!」
鵬魔王が業火を放ち道を開く。
礼は言わねぇよ・・・
お前とも全ての決着が終わった後にしてやるから、待っていやがれ!
俺様と八怪、沙悟浄が突っ込む。
すると目の前に蛇気の障気が壁となって行く手を阻んだのだ。
「止まらないで!私に任せてくださーい!」
沙悟浄の放った浄化の光が障気の壁を浄化させたのだ。
そこにエデンを隠すために飛び出して来た大蛇に八怪が俺様を追い越して釘鈀を振るう。
「猿、行くらぁーーー!」
今度は八怪を追い越した俺様は拳に全ての力を込めたのだ。
生憎、エデンは動いていない。
このまま終わらせてやるからな!
「これで全て終わりだぁー!」
俺様の拳がエデンに向けて放たれる。
「魂神の華王石拳」
が、俺様の拳はエデンに触れる寸前で止まってしまったのだ。
俺様の拳が割れて血が噴き出す。
するとエデンの身体が起き上がり、その顔を俺様に向けたのだ。
「二度もワタシを殺すつもりか?下等な蛆虫が。だが、蘇ったワタシの前ではお前はもう無力だ」
突如、エデンの瞳から閃光が放たれ俺様の胸を貫いたのだ。
まさか、もう甦ったと言うのか?
「グ、ハッ!」
吐血して後方に倒れる俺様の口元は笑みを見せたのだ。
これは強がりでも、やりきった感でもない。
全て作戦通りだったからだ。
「行けぇーーー!」
「おーーーーう!」
飛び出したのは紅孩児だった。
しかもその瞳は金色に光り輝く魔眼が発動していたのだ。
そう、俺様、八怪、沙悟浄、二郎真君は振り絞って魔眼の力を紅孩児に集めていたのだ。
この一撃を託すために!
「太陽の魔眼・全力失葬!」
紅孩児の拳はエデンに届いた。
燃え盛る金色の炎がエデンの身体を焼き始めたのだ。
「う、うがぁああああ!」
苦しみもがくエデン。
「ぉおぉおおおのぉれぇえええ!」
だが、エデンは巨大な身体を捻るように暴れると、俺様と紅孩児はその勢いで弾き飛ばされたのだ。
まさか?
今ので決着が付かなかったのか?
落下していく俺様と紅孩児は完全に力は残ってはいなかった。
もう、これで終わりなのか?
すると落下する紅孩児の姿が消えたのだ?
同時に落下する俺様の身体も抱きかかえられて何者かに助けられた。
だ、誰だ?
見上げた俺様はソイツの顔を見て脱力したかのように安堵してしまった。
託せる、繋げられる頼もしい奴がいた。
「阿修羅ぁああ!」
俺様を救ったのは時の修行を終えて戻って来た阿修羅だった。
後は頼んだぜ?
阿修羅
次回予告
ついに戦場に到着したのは阿修羅
今度こそ決着がつくのか?




