真の王の覚醒!?
覇王討伐の策は全て失敗に終わった。
しかも覇王の持ちし剣は、あの?
私は法子。
私達が覇王と命懸けの戦いをしていた頃、遠く離れた西の地にて崖の上から地上全土を眺めている者がいた。その手には羅針盤を乗せ何かを見定めていたの。
「また世界が揺れた。この地上界に現れた蛇神達。現当主の覇王と覇王候補の手下、そして始祖の蛇神。その者達全てに世界を手に入れる王たる力があった。しかしそれも蛇神をも凌駕し倒して来た強き力を持つ金色の戦士達の存在」
ブツブツと状況を読んでいるのは白澤だった。
「金色の戦士は救世主の証。しかしそれが地上に九人も現れたとはな」
それは孫悟空、阿修羅、八怪、沙悟浄、紅孩児君に鉄扇ちゃん。
それに捲簾さんの力を引き継いだ二郎真君さんに六大妖魔王の百獣王さん。
その皆から同じく奇跡の魔眼が見て取れたの。
すると白澤の背後から人影が声をかける。
「お前の主は見つかりそうか?」
それはもう一人の金色の魔眼を持つ金禅子。
「貴方か?確かに私は貴方にも主人たる資質は見たが、まだ決定は出来ないでいる。もう少し時の流れを見させて欲しい。それに現覇王を超える者は現れるかは分からぬから」
「そうか。なら好きにするが良い」
白澤の視線の先には覇王が映っていた。
その手に持つ神々しい剣が出現した時、白澤の胸が騒いだの。
「真の王は既に現れているのかも知れぬ。それが世界を救世する者とは限らないのかもしれない。もしそうだとしたら私は取るべき行動は・・・」
意味深な言葉を呟いた後、
「ん?あれは私の対なる者か?そうか。真王の出現にいてもたってもいられないのだな?ならばお前が求める真王を私に教えておくれ」
それは誰の事を言っているの?
場所は再び私達の戦場へ。
「嘘よね?反則過ぎない?アレってば?」
私は完全に戦意を失いかけていた。
だっ、だって!
あれ見てよ?見たら分かるわよね?
覇王が出現させた剣を手にした時、この場の空気が完全に変わったの。
鬼に金棒?
違うわ!
覇王に剣よ!
しかも私は勿論、ナタクも鉄扇ちゃんも動けなくなるほどの強い力を持った新たな覇王の剣。
「どうした?臆したか?」
覇王は新たに現れた剣を天に向けると、その覇気が高まり始める。
覇王の身体の傷は完全に再生し、漲る力が大地を震わせたの。
それは振動なんかではなく、この地上が覇王の存在に怯えて震えているように思えた。
ちょっとこれヤバイんじゃないの?
八怪〜沙悟浄まだ〜??
その時、八怪と沙悟浄も苦戦していたの。
八怪の前には白蛇の巫女、そして沙悟浄の前には牛帝覇蛇が道を塞いでいたのだから。
「オメェ・・・見覚えがあるら。まさか!!」
八怪は白蛇の巫女を前にして転生前に遭遇した女蛇神の事が頭を過ぎらした。
「うふふふ。あの時の天界にいた魔神の坊やか?まさかこのようなタイミングで再び合間見える事になるとは奇遇な運命よ」
かつて遮那だった時に天界を追われた理由。
武神候補の若い子供達を引き連れ討伐の模擬試験をしていた時、この女の蛇神に運命を壊された。
若い子供達は皆殺しにされ、その罪を遮那は負わされた。
八怪の忘れられない過去のトラウマ。
「此処で会ったがオメェの最期ら!」
飛びかかる八怪の拳は白蛇の巫女の身体を透けるように通り過ぎると、強い呪縛で地面に叩き付けられる。立ち上がろうとしても、更に重圧がのしかかり地面に陥没していく。
「あっけないわ。そのまま虫けらのように潰れてしまいなさい」
が、八怪がそんな簡単に負けるわけなかったの。
のしかかる重圧を力任せに立ち上がり、振り払うように気合いで呪縛を撥ね退けたの。
「なんぴたりともオラを止める事は出来ねぇら!」
「!!」
そして別の場所でも沙悟浄が牛帝覇蛇に襲われていたの。
居合いの如き斬撃が沙悟浄を襲う。
「牛角魔王さーん!止めてくださーい!私は貴方と戦いたくはありませーん!」
「それは俺と戦えば倒す事が出来ると思っているのか?」
すると牛帝覇蛇が飛び出し沙悟浄の張った結界を破壊して間合いに入り、
抜き出した剣が沙悟浄の眼前に迫る。
「!!」
沙悟浄は咄嗟に掌を叩き術を放つ。
「河童の川流れぇー!」
掌から噴き出す濁流が迫る牛帝覇蛇を押し返す。
「フン!」
それでも斬り伏せる牛帝覇蛇の斬撃は濁流を一瞬で蒸発させて消し去った。
しかしそこには沙悟浄の姿は消えて、いつの間にか
上空へ移動して見下ろしていたの。
「私は戻らないといけないのです。それを邪魔するのであれば私も戦わないといけません」
「子供騙しで俺は討てんぞ?」
「分かっています!」
八怪も沙悟浄も私達の救援は無理そうなのね。
再び戦場は私達に戻すわね?
私は如意神向を構える。
正直、勝てる見込みも策も無かった。
ナタクは二度の神速で力を使い果たし限界、鉄扇ちゃんは覇王に倒されまだ意識を失い起き上がれないみたい。この場で立っているのは私だけなの。
「やるだけやるしかないわ」
と、意気込むけれど足が震えて動かない。
確かに覇王相手に気力を振り絞って今の今まで戦ってきたけれど、弱肉強食の本能が遂に限界を超えて私の闘志を怯ませ拘束させてる。
それにしても?
覇王・那我羅が手にしているあの剣は一体何なのよ?
まるで剣自体が強い意思を持った化け物に思えるくらいに・・・
その威力は九曲黄河陣の中でも健在で、内側から結界を破壊したのよ。
「この俺を拒んでいた割りには馴染んで来たようだな。この俺の力を引き出しているようだ」
その剣の名は聖魔神剣!
龍神族の三種の宝具であり、世界を支配する真王の持ちし剣。
すると覇王は剣を天に向けて振り上げたの。
「!!」
その斬撃は大地を斬り裂きながら上昇して空を割るように雲を巻き上げたの。
「なぁ?何なのよぉ〜??」
もう出鱈目だった。
私達が相手している倒すべき敵の脅威が度を超えすぎていて手が負えないと今となって怖気づく。
「どうやらこの地上には俺を満足させられる強者は残ってはいなかったようだ。俺はこの地上を消し去った後、あの天を討つ」
すると残された私達を見て、
「遠かれ早かれ消されるのであれば、この俺を多少なりとも楽しませた礼に、この手で始末してやろう」
余計なお世話よ!
てか、お礼に殺すって何??
そこに立ち上がったナタクと、目覚めた鉄扇ちゃんが私の後ろに立つ。
例え殺されたとしても闘志としての意地が二人を奮い起こした。
「ぼちぼち寝てられないわね」
鉄扇ちゃんは傷口を押さえながら軽口を叩くいた。
正直、勝つ策もなければ力も残ってはいない。
「奴は恐らく地上を消し去る事は容易だろう。恐らく虫一匹残さずにな。それだけの力は間違いなく有るだろう」
「なら私達には何も出来る事ないの?」
「俺達に出来る事は一つだけだろう」
するとナタクの言葉を理解した鉄扇ちゃんは溜息をつく。
「私達の命と引き換えに繋ぐ事よ」
私はナタクと鉄扇ちゃんの覚悟を理解したの。
「私の仇は絶対に河童ちゃんがとってくれるわ!」
すると二人は私に呟く。
「貴方達何言ってるのよ!私だけ逃げるなんて出来ないわ!最後まで二人と戦うから!」
私を逃がすための時間稼ぎ?
そんなの私は嫌よ!
私達の会話は覇王には筒抜けだった。
「一人足りとも逃しはせん。お前達は此処で確実に終わらす」
覇王が剣先を向けると、全身が凍結したような恐怖に足が竦む。
そしてゆっくりと近付き、その剣を振り上げた。
「このタイミングを待っていたわ!」
同時に鉄扇ちゃんが前に飛び出して、覇王が振り下ろす剣の前に立ち塞がり両手を交差させて受け止めたの。しかも再びその瞳は金色に光り輝いて!
「うぬぅわあああ!」
両腕に金色の力を集約させ光り輝く。
その奇跡の力は覇王の剣をも受け止めたの!
互いの力の余波が二人を中心に弾けるように爆風を起こすと、その振動は天まで轟き渡る。
「ほぉ?俺の剣を受け止めたか?ならばもう人押しさせて貰うぞ!」
覇王が振り下ろした剣に力を籠めると、受け止めている鉄扇ちゃんの腕から血が垂れる。
このままじゃ腕ごと真っ二つにされちゃうわ!
しかし鉄扇ちゃんの眼はまだ諦めてはいない?
「ほんの少しでもお前の剣を止められただけで私の仕事はもう十分自分の仕事分は働かせて貰ったわ!」
えっ?
受け止めたタイミングでナタクが飛び込んでいた。
そして覇王が刀に力を籠めた一瞬を狙っていたの。
二人の目的はこの一瞬に全てを賭けていた。
もし鉄扇ちゃんが受け止められなければ全て終わっていた。
それでもナタクは鉄扇ちゃんを信じて飛び込み、このチャンスを掴んだの。
覇王は力を籠めた事で完全に動きが止まり、その手首ごとナタクの三度目の超神速の抜刀で斬り落としたの。けれど手首を斬ろうと覇王の腕は直ぐに再生していく。
違う!ナタクは覇王の手首を斬り落として、握られた剣を奪ったのよ!
滑るように転がり落ちた覇王の腕と、聖魔の剣を素早く手に取り掴んだナタク。
コレって大どんでん返しじゃないの??
そこで鉄扇ちゃんの瞳が元に戻り力尽きてその場に倒れ込んだの。
そして腕を落とされた覇王はナタクを見て笑みを見せて問う。
「その剣を使い俺を斬るか?」
覇王の手首は出血を流しているけれど異様な再生力で血が止まり傷が消えて指が生えて元に戻る。
そして再生した手を開いて閉じて確かめると、
「浅はか!」
えっ?
その剣を手にしたナタクの腕が高熱に焼かれながら膨張して吹っ飛んだの。
「うぐぁあああ!」
足下に転がる剣を見てナタクは絶望した。
それは初めて感じる感情。
完膚無きまでの敗北。
「あはははは!愚かだったな?どうやらお前はその剣に認められなかったと見える。その剣は真の王のみ持つ事が許された宝具らしくてな?この俺も使えるまでに手を焼いた曲者だ!無闇に触れれば全身が焼かれ消滅する。腕だけで済んだのは奇跡と言えよう」
そ、そんな・・・
もう完全にネタ切れだった。
ナタクも鉄扇ちゃんも戦闘不能だった。
八怪も沙悟浄もまだいないし、孫悟空も阿修羅も間に合わないみたい。
もう終わりよ・・・
私達だけじゃない。
このまま地上、天界と世界は滅びてしまうの?
「・・・・・・」
覇王は転がっている聖魔の剣を拾う為に近付いたその時、
「何のつもりだ?」
聖魔の剣の前に立ち塞がったの。
「お、お前何を?馬鹿者!」
その様子を見てナタクは驚愕していた。
何故なら覇王の前に立ち塞がったのは、
「これ以上は私が行かせないわ」
この状況で一番役に立てないでいた私だったから!
けれど私は動かないわけにはいかない。
だって嫌だもん!
まだ世界を終わらせたくないから。
私は如意神向を構えて叫ぶ!
「止まれぇーーー!」
が、その時、私の正面でスローモーションのように如意神向が真横に両断されて足下に看板が落ちた。
「お前は強者を呼び寄せる餌に過ぎない。だがもう用済みだ。身分不相応に俺に逆らうとするのであれば、思い通り始末してやろう」
覇王の再生した腕が私の眼前に迫って来る。
「あ、あ・・・」
このまま顔面を握り潰すつもりなのね。
けれど私に恐怖は無かった。
やるだけのことをしたから。
諦めなかった!
逃げなかった!
後悔する事はない!
ただ、思う事は一つ・・・
唯一後悔する事は元の世界に戻れなかった事。
きっと私が死んだらお父さんも勇斗も悲しむかな?
葉子ともちゃんとお別れしてなかったわ。
それにそれにまだ話し足りなかったわね。
今まで生きて来て後悔しないようにしていたつもりだけど、まだまだ生き足りないと感じちゃう。
撮り溜めてたアニメやドラマも中途半端だし、
まだ行ってなかったカフェや遊園地、
それに冷蔵庫の中のアイス!
そういえば愛音さんに次顔出しに行った時は料理教わるんだったわ。
紅孩児君は目覚めるのかしら?
お父さんの事が理由で精神的に目覚められないって言ってたけど心配だわ。
それに孫悟空、阿修羅、八怪に沙悟浄、玉龍くん。
もっと一緒に旅をしたかったよ。
短い間だったけど本当に楽しかった。
何だろう?
こんな状況で今での記憶が走馬灯のように浮かんで来てるわ。
これ?あはは。
私の人生もここまでか〜
皆、悲しむかなぁ・・・
「ち、ちがう!」
その時、私は今頃気付く。
私が死んだら、目の前にいる蛇神は皆を殺す!
今まで出会って来た全員を殺す!
それは必ず絶対に!
いえ?それだけじゃないわ。
もし今私がいるこの世界が過去の世界なら?
この過去を失った元いた未来はどうなっちゃうの?
全て消えてしまう?
その時、私の知る皆が覇王によって殺されていく姿が頭の中を廻る。
そして私は小さく呟いたの。
「させるかぁ」
それでもその言葉は重く強く発せられた。
直後、覇王の手が私の顔を掴む間際にまで迫っていたの。
もう間に合わない!
ナタクは私が殺されると覚悟したその時、ナタクは目の前で起きた信じられないものを見たの。
突如、覇王の身体が浮き上がると地面に向けて転がる?
いえ、叩きつけられていたの。
それは投げ技?
しかも覇王を投げたのは間違いなく、
「お、お前がやったのか?」
覇王は足下に転ばされた事に驚愕していた。
まるで魔法?
しかもその相手が私である事に信じられないでいた。
その一部始終を見ていたナタクも信じられなかった。
でも、他にいなかったの。
そして無言だった私が立ち上がろうとする覇王に向かって叫ぶ。
「奪われてたまるかぁ!お前なんかに!私が大切にしているものを奪われてたまるかぁ!」
私から放たれた信じられないほどの強い覇気が覇王の身体に打ち当てられ一瞬だけど怯ませる。
「!!」
その時、覇王もまた気付いたの。
私の瞳が金色に光り輝いている事に!
「私が絶対に許さない!」
その金色の波動は遠く離れている場所にいる白澤も感じ取った。
全身を奮えさす存在の覚醒に居ても立っても居られなくなる。
「今、何かが・・・目覚めた」
この私の本当の救世主としての戦いが始まる。
そんなこんな。
次回予告
法子の覚醒!
しかし覇王を相手にして何が出来るのか?




